- まえがき
- 1章 なぜ,いま中学校で適応指導なのか
- 1 いま,子どもたちの現状は
- 2 特別活動は期待に応えているか
- 3 なぜ、いま適応指導なのか
- 4 どのような考え方で適応指導を進めるのか
- 2章 3年学級活動適応指導のファックス資料
- ◆1 学級や学校の生活の充実と向上に関する適応題材◆
- §1 最終学年としてどう一年を過ごすか
- §2 みんなが楽しく過ごせる学級とは何か
- §3 最上級生として下級生にどう接するか
- §4 力を入れて取り組む年間活動計画を作ろう
- §5 部活動を後輩に託す準備は何か
- §6 生徒会活動を後輩に託す準備は何か
- ◆2 個人及び社会の一員としての在り方に関する適応題材◆
- §1 悩みや不安を受けとめる秘訣を語り合おう
- §2 友達の悩みや不安を解決するカウンセラーになろう
- §3 異性の言動でうれしかったことを語り合おう
- §4 男女の相互理解と相互協力とは何かを考えよう
- §5 どんな時に服装や言動が荒れるか考えよう
- §6 中学生ができる地域貢献を考えて実行しよう
- §7 学校外での交友関係で気をつけることは何か
- §8 心が傷ついた友達の一言を語り合おう
- §9 心が安らいだ友達の一言を語り合おう
- §10 ボランティア活動の組織と機会を調べよう
- ◆3 健康や安全に関する適応題材◆
- §1 中学生の健康チェック
- §2 ストレスをためない方法を語り合おう
- §3 家庭でのおやつについて考えよう
- §4 喫煙・飲酒・薬物の誘惑を受けないようにしよう
- §5 喫煙・飲酒・薬物の誘惑を受けた時の対処法
- §6 家族愛と異性愛について
- §7 登下校中に事件に巻き込まれない事前の策
- §8 登下校中に事件に巻き込まれた時の対処法
- §9 交通事故の対処法
- §10 校内事故の防止法
- §11 栄養・休息・運動のバランスチェック
- §12 心をリフレッシュする食事法
- ◆4 学業生活の充実に関する適応題材◆
- §1 自分の力を伸ばす選択教科の選択
- §2 総合的な学習で伸ばしたい自分の力
- §3 必ず実践できる定期テストの準備計画のつくり方
- §4 力を伸ばす参考書や問題集の効果的な活用法
- §5 必ず伸びるテスト勉強の方法
- §6 勉強意欲を喚起させる場の工夫
- §7 受験校の入試問題の入手方法と活用法
- §8 自分の力に合った入試勉強の計画
- §9 入試直前の勉強法
- §10 入試で心を落ち着かせる秘訣
- ◆5 将来の生き方と進路の適切な選択に関する適応題材◆
- §1 高校体験入学や説明会への参加計画を立てよう
- §2 高校見学会や説明会へ参加するときのポイント
- §3 受験校決定の条件
- §4 受験手続きチェックリストの作成
- §5 緊張と安心の受験直前生活
- §6 自分が決めた道を最良のものにしよう
- §7 中学卒業後の夢を描こう
まえがき
平成10年,学校週五日制の下,各学校がゆとりの中で特色ある教育を展開し,生徒一人一人の豊な人間性や自ら学び,自ら考える力などの「生きる力」を育成することを目指して中学校学習指導要領が改訂された。
この改訂は,詰め込み教育の反省に立って,教える内容を絞り,どの子にも基礎学力をつけさせ,学ぶ態度を身につけさせ,個性をより重視するという趣旨のもとに行われた。
しかし,こうした理念は正しくとも,その目標は達成されたのかという疑問が,学力低下への批判となって強まっている。知識の量や学びの水準を抑えて学習意欲や関心を重視するという新学力観に基づいた改革ではあったが,その意に反して学力水準だけでなく学習意欲も低下させてしまっているのではないかという声が強まっている。
特別活動においても,「好ましい人間関係の醸成」,「基本的なモラルや社会生活上のルールの習得」,「協力してよりよい生活を築こうとする自主的・実践的な態度の育成」,「ガイダンスの機能の充実」を基本方針とする新たな指導の方向性が示された。
特別活動はその意義や必要性を否定する声は少なく,むしろその必要性や意義を評価する声は強い。しかし,そうした声にもかかわらず,特別活動の中核的内容である学級活動は,その趣旨を踏まえた十分な指導が展開されていない。
これは,学級活動の目標が概念的でとらえにくいこと。内容や指導方法が多岐にわたること。週1時間のための準備や事前活動に煩雑さを感じること。また,十分な準備をしなくても,その場になればなんとかその時間の学級活動は消化することができてしまうことなどに原因がある。そのために,学級活動の時間が「総合的な学習時間」の補充に使われたり,ゲーム的な取り上げ方で「ライフスキル」が行われたりしている現状がある。「総合的な学習時間」の導入に伴って特別活動の存在感はますます薄れているといっても過言ではない。
しかし,今の子どもたちの現実を見たとき,子どもたちの豊な成長を願ったとき,特別活動の特質を正しく踏まえた学級活動の指導・援助をより充実していかなければならないということは喫緊の課題である。
そこで,実効性のある学級活動,効力性のある学級活動の実践が可能となるよう願って,適応題材に重点を置いて本書を編集した。本書では,学級活動適応指導ファックス資料集として,学校の実生活に即して起こりうる現実的な課題を取り上げ,生徒一人一人が確実に適応できる指導が可能となるようファックス資料を厳選した。
学級の生徒一人一人がもつ欲求とその生徒を取り巻く環境との間で調和が保たれるようにしなければならない。生徒一人一人が満足を感じ,情緒的に安定して学校生活を送ることができるよう学級活動で指導・援助していくことが重要である。
学級活動における適応指導は,学級の生徒たちに共通する実生活上のこうした衝突や軋轢(学級・学校生活上の諸問題)を認識され,生徒自らがその適切な解決や改善を図る取り組みと,衝突や軋轢をできるだけ生じさせないような取り組みを指導・援助していくことにねらいがある。
学級担任の先生方が本書を有効に活用いだだき,有効性のある学級活動,実効性のある学級活動を展開してくださることを心より願っている。
結びにあたり,本書の刊行の趣旨にご理解いただき,校務多忙な中にもかかわらず貴重な資料を提供していただいた諸先生方,刊行に際しご尽力を賜った明治図書出版株式会社の安藤征宏氏をはじめ編集部の皆様に心から感謝を申し上げる。
平成17年4月 編者 /桑原 憲一
-
- 明治図書