基幹学力の授業 国語&算数21
全教科で力を発揮する“国・算の学力像”

基幹学力の授業 国語&算数21全教科で力を発揮する“国・算の学力像”

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国・算の学力が他教科でどういかされるのか―実践を紹介

国語、算数の学習を通して身に付けた学力は、他教科の学習においてどのように発揮されるのか。今号は、社会、理科から音楽、図工まで、具体的な子どもの姿を通して、それぞれの教科・領域で発揮される国・算の学力像の実態に迫りました。


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ISBN:
978-4-18-888117-0
ジャンル:
授業全般
刊行:
対象:
小学校
仕様:
B5判 72頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

もくじ

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国語
提起文 他教科で発揮される国語の学力
全教科で力を発揮する国語科の学力像 /青木 伸生
特集1 全教科で力を発揮する国語科の学力像
理科で発揮される「読解力」と「表現力」
言葉による視点の共有が科学的「読解力」を高め、事実と考察の分離が科学的「表現力」を養う /佐々木 昭弘
図工で発揮される「読解力」と「表現力」
造形的な言語によって統合される図工の学び /西村 コ行
道徳で発揮される「読解力」と「表現力」
物語資料を用いた道徳授業を支えるものは、読解力と表現力だ! /井上 幸信
特集2 全教科で力を発揮する国語力を育てる授業
論理的な機能をもった語(機能語)の習得 /俵藤 晶
学習の基礎となる力を「箇条書き」「マンダラ」で /森川 正樹
太郎くんの説明はわかりにくい?〜「絵」と「文章」を関連づけて考える力を育む /菊池 英慈
おもしろいじゃんけんをつくりだそう―聞き手と話し手が共に納得し合う説明場面をつくる― /田ア 伸一郎
まだまだあります!私のお勧めピカイチ授業
/大源 愛・大塚 有佳・宍戸 寛昌・小口 政英
「明日」の国語授業を創る
物語 この授業で「言葉の力」をつける
「他教科で活用できる言葉の力」の育成 /石橋 順子
説明文 この授業で「言葉の力」をつける
新聞記事の「見出し」づくりから説明文の要約へ /広山 隆行
書く この授業で「言葉の力」をつける
作文の書き出しで表現の楽しさを /真家 裕美
聞く・話す この授業で「言葉の力」をつける
言葉遊び〜スプーナリズム〜 /小林 圭
古典・詩・俳句 この授業で「言葉の力」をつける
明日の授業を創る教材開発! /遠藤 裕一
漢字 この授業で「言葉の力」をつける
漢字ナンクロ〜夢中になって楽しく語彙を増やす〜 /佐藤 修太郎
ミニ連載 高知からの発信G
国語と算数教師ともに生きる熱き日々 /藤田 究・田中 元康
リレー連載
二十代先生の国語授業日記 /荒川 妙子
若き国語教師への手紙 /吉川 信政
私の学級づくりと「言語活動」 /近藤 靖子
連載
にへいちゃんの国語教室通信 /二瓶 弘行
青木伸生の国語教室創造記 /青木 伸生
提言
ことばの力―俳句の評価力を例に― /植山 俊宏
グラビア
基幹学力研究会青森大会 :構成 /篠崎 進
ペープサートやミニパネルシアターでお気に入りの神話紹介 :構成 /青木 伸生
算数
提起文 他教科で発揮される算数の学力
算数の学力と他教科の学力との関連を見る /山本 良和
特集1 全教科で力を発揮する算数の学力像
社会で発揮される算数の学力像
「資料読解力と論理的思考力の育成」との関連 /臼井 忠雄
音楽で発揮される算数の学力像
頭で考えることと、心や体で感じることを行き来する /倉 弘光
体育で発揮される算数の学力像
体育で発揮される算数の学力像 /平川 譲
特集2 社会の学習内容を算数に活かす
社会科の学習を通して、必然性のある算数科の学習問題を組み立てよう /大野 桂
学区探検を長さの学習に /相馬 伸吉
2・3月教材攻略法
1年 たすのかな ひくのかな /盛山 隆雄
2年 はこの形 /中田 寿幸
3年 重さ /武末 三奈
4年 ○はいくつ? /柳田 憲子
5年 直方体と立方体 /金野 友彦
6年 比例 /中村 潤一郎
まだまだあります!私のお勧めピカイチ授業
/大畑 智裕・佐藤 綾・尾ア 正彦・関根 哲宏
コラム
子ども発見! /間島 ゆり子 /小川 幸子
基幹学力研究会青森大会報告
/熊谷 純
リレー連載
副編集長のリレー連載 /山本 良和
連載
田中博史の算数授業づくり講座123 /田中 博史
提言
構造的な学力把握を /梶田 叡一
常識の中の非常識を探せ! /細水 保宏
座談会
『基幹学力の授業』20号までを振り返って
グラビア
直方体の展開図をすべて調べ上げる :構成 /山本 良和

国語 [提起文] 他教科で発揮される国語の学力

 全教科で力を発揮する国語科の学力像
      筑波大学附属小学校 /青木 伸生(写真省略)


一 教科を越えた言語力

 学習指導要領の総則に、次の文言が示されている。


 第四 指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項

 2(1)各教科等の指導に当たっては、児童の思考力、判断力、表現力等をはぐくむ観点から、基礎的・基本的な知識及び技能の活用を図る学習活動を重視するとともに、言語に対する関心や理解を深め、言語に関する能力の育成を図る上で必要な言語環境を整え、児童の言語活動を充実すること。


 総則の中で、「言語に関する能力の育成」「言語活動の充実」を取り上げているということは、今回の学習指導要領の特徴として言われているように、「教科を越えた言語力の育成」を意図していると、とらえることができる。

 そもそも、人は言語を通して思考し表現する生き物である。言語力の育成や、言語活動の充実は、考えてみれば当たり前のことである。

 しかし、今までの教育現場では、国語は国語、算数は算数、理科は理科などと、仕切りをわざわざつくって指導していた。国語科において言語力の育成や言語活動の充実を説くのは当然であるが、例えば算数や理科においては、言語力の育成を意図しての授業というものは行われてこなかった。

 今回学習指導要領の改訂を受け、あらためて教科を越える言語力の育成について考える必要性が出てきたことは、当選のことでありながら、画期的なことでもあるといえる。


二 子どものノートが変わった

 五年生を担任していたある時、社会科を担当してくださっていた専科の先生から、子ども達のノートを褒められたことがある。「あなたのクラスの子ども達のつくるノートは、どれもすごい」と言われ、とても嬉しく思ったことを覚えている。

 その時は、国語科の授業の中で、子どものノートを個性的にしよう、一人一人が自分考えを自分の言葉、自分のレイアウトで書けるようにしようと考え、国語の授業の中でノート指導を進め、子どものノートを毎時間のように集めてはコメントを書きこんでいた。

 こちらとしては、国語科という教科の中での取り組みであった。しかし、子どもにとっては、ノートに書き込みをするのは国語科だけではないのは当然だ。国語科で身に付けたノートのまとめ方、レイアウトの仕方や色使いの工夫などは、他の教科においても活かせるものであったのだ。教師の意図を越えたところで、子どもは、自分が身に付けた力を発揮している。

 今回の学習指導要領にもとづいて、このようなノート一つを取り上げてみても、子どもの言語力をより意図的に伸ばすことができるはずである。


三 国語科でどのような力を伸ばすか

 一方で、今度は他の社会科の先生から、次のような言葉を聞いたこともある。

 「そもそも社会科は読解力を育ててきたんだよな」

 この言葉は最近聞いたものだ。PISA型読解力の中で、「非連続型テキストを読む」などと言われているが、表やグラフ、地図や写真などの画像など、様々な情報を読み取り、その意味を見いだしてきたのは社会科がしてきたことだというのだ。確かに、社会科では、そのような情報処理の能力を伸ばすような授業をしてきた。社会科でこうした非連続型テキストを読む力を身に付けさせれば、何も国語科だけであくせくすることはなくなる。同じようなことは、理科であっても、算数であっても言えるはずだ。

 こうしてみると、国語科以外のそれぞれの教科で、どのような言語力育成にかかわる言語活動を設定しているのかを見渡すことは、国語科でどのような力を伸ばしていけばよいのかを考える上で重要な視点となろう。


四 基幹学力としての言語力

 社会科や理科など、他教科の言語活動として考えられるのは、図表やグラフなど、非連続型といわれる情報を読むこと、他者にわかりやすく説明すること、自分の考えをノートに整理することなどあろう。他教科において、様々な情報を読む「読解力」は、どのように発揮され、どのように育成されていくのか。他教科において自分の考えを人にわかりやすく伝えるための「表現力」はどのように磨かれているのか。道徳を含め、他教科、領域で発揮される言語力を、子どもの姿を通して、見直していきたい。

 また、今まで国語科で育ててきた力は、他の教科でどのように発揮されていくのか。あるいは、これからの国語科の授業で、さらにどのような力を伸ばしていけば、教科領域を越えて、実際の授業場面で生かされていくのか。「基幹学力」という視点で、あらためてとらえ直していきたい。

 本号では、特集1として、国語科以外の教科・領域で発揮される国語の学力像を、具体的な子どもの姿を通して明らかにしたいと考えた。教科を越えた言語力は、ここでは便宜上「読解力」と「表現力」として示したが、執筆者の考えでさらに広く、あるいは別の視点から言語力をとらえることもあるかもしれない。その中から国語科としてこれからさらに伸ばしていかなければならない言語力が見えてくると考える。

 特集2では、国語科を含め、全教科・領域で発揮できる国語力・言語力を、国語科の授業で、どのように育てていけばよいかを述べてもらいたいと考えた。授業の具体が見えてこなければ、基幹学力としての言語力も「絵に描いたもち」にすぎない。

 基幹学力としての言語力が、教科を越えてどのように発揮されるのか、あるいは、教科を越えた言語力を、具体的な授業でどのように伸ばしていけばよいのかについて、示唆に富んだ号にしたい。

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