- はじめに
- T 幼児にも「いのち」の教育を
- U 幼児がじっと聞き入る「いのち」の絵本リスト
- 1 おめでとう! 「いのち」 の誕生
- ◎赤ちゃんの誕生!
- 1 『わたしのあかちゃん』
- 2 『おかあさんがおかあさんになった日』
- 関連本:『おとうさんがおとうさんになった日』/『いのちは見えるよ』/『かみさまからのおくりもの』/『あかちゃんはどこから?』
- ◎ぼく・私が生まれたときのこと
- 3 『ぼくがあかちゃんだったとき』
- 4 『あかちゃんてね』
- 関連本:『みんなあかちゃんだった』/『まおちゃんのうまれたひ』
- ◎家族で迎える赤ちゃんの誕生
- 5 『あかちゃんのゆりかご』
- 6 『うちにあかちゃんがうまれるの』
- 2 家族っていいな!
- ◎「いのち」のつながり
- 7 『おじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃん』
- 8 『いのちのまつり』
- 関連本:『ソリちゃんのチュソク』/『とうさん かあさん』
- ◎新しい家族
- 9 『ピーターのいす』
- 関連本:『ぼくがおっぱいをきらいなわけ』/『マンヒのいえ』/『ねぇねぇ,もういちどききたいな わたしがうまれたよるのこと』/『パパのカノジョは』
- ◎大好きなパパとママ
- 10 『いつまでもすきでいてくれる?』
- 11 『かあさんのいす』
- 12 『あそぼう あそぼう おとうさん』
- 13 『おとうさんはウルトラマン』
- 関連本:『かあさん,わたしのことすき?』/『おかあさんだいすき』/『ママがおうちにかえってくる!』/『こまるなあ おとうさん』/『パパはジョニーっていうんだ』/『ねえ とうさん』/『まめうしのおとうさん』
- こらむ 「読んであげたい絵本が手に入らないときは?」
- ◎やさしいおじいちゃん・おばあちゃん
- 14 『おじいさんならできる』
- 15 『おじいちゃんのまち』
- 16 『だってだってのおばあさん』
- 17 『おばあちゃんすごい!』
- 関連本:『だいじょうぶ だいじょうぶ』/『みててね,おじいちゃん』/『おじいちゃんのごくらくごくらく』/『エマおばあちゃん』/『もったいないばあさん』
- 3 からだのこと知りたいな
- ◎からだのしくみ
- 18 『からだっていいな』
- 関連本:『ほね』/『ちのはなし』/『からだの みなさん』/『はなのあなのはなし』
- ◎男の子と女の子?!
- 19 『おっぱいのひみつ』
- 20 『おちんちんのえほん』
- 関連本:『おんなのこってなあに? おとこのこってなあに?』/『おっぱい』
- ◎うんちについて
- 21 『みんなうんち』
- 22 『うんぴ・うんにょ・うんち・うんご』
- 関連本: 『うんこ日記』/『ひとりでうんちできるかな』
- ◎病気について
- 23 『さるのせんせいとへびのかんごふさん』
- 24 『たぬきせんせいのびょうきのほんカユイカユイ』
- 関連本:『たぬきせんせいのびょうきのほん ゲーとピー』/『ぼくのいのち』/『ドアがあいて』/『よるのびょういん』
- ◎兄弟姉妹が病気になったとき
- 25 『いもうとのにゅういん』
- 26 『あたしもびょうきになりたいな!』
- ◎友だちが病気になったとき
- 27 『チャーリー・ブラウンなぜなんだい?』
- 28 『レアの星―友だちの死―』
- ◎虫歯について
- 29 『わにさんどきっ はいしゃさんどきっ』
- 30 『はははのはなし』
- 4 自分でささえる「いのち」
- ◎みんなで食べよう!
- 31 『おてだまのたね』
- 32 『よもぎだんご』
- 関連本:『ばばばあちゃんのおもちつき』/『ばばばあちゃんのやきいもたいかい』/『14ひきのあさごはん』/『おだんごスープ』
- ◎作って食べよう!
- 33 『ぼくのぱん わたしのぱん』
- 関連本:『ひもほうちょうもつかわない平野レミのおりょうりブック』他/『サンドイッチつくろう』/『しょうたとなっとう』/『しろくまちゃんのほっとけーき』
- ◎魚も野菜も大好き
- 34 『さかなだ さかなだ』
- 関連本:『ひものでございっ!』/『やさしいやさいのオイシンピック』/『たべられるしょくぶつ』/『やさいのおなか』他
- ◎自分で守ろう大切な「いのち」
- 35 『あぶないよ!』
- 36 『とにかくさけんでにげるんだ』
- 関連本:『ちびまる子ちゃんのあんぜんえほん』(全4巻)
- 5 みんなおなじ「いのち」
- ◎違いがあるからおもしろい
- 37 『ぼくだけのこと』
- 関連本:『いいこってどんなこ?』/『まっくろネリノ』/『さっちゃんとなっちゃん』
- こらむ 「同じタイトルの本で,迷ったときは?」
- ◎みんな一緒に生きている
- 38 『さっちゃんのまほうのて』
- 39 『ペカンの木のぼったよ』
- 関連本:『ぼくのおにいちゃん』他/『たっちゃんぼくが きらいなの』/『わたしのおとうと,へん…かなあ』/『どんなかんじかなあ』/『イルカにあいたい』
- 6 「いのち」との別れ
- ◎心の中の贈り物
- 40 『わすれられないおくりもの』
- 関連本:『ぶたばあちゃん』/『さよなら エルマおばあさん』/『おじいちゃん わすれないよ』/『パパにはともだちがたくさんいた』
- ◎あってはならない別れ(さけられる別れ;戦争・災害・事故)
- 41 『ゆずちゃん』
- 関連本:『まちんと』/『トビウオのぼうやはびょうきです』/『小さな小さな おとうと だったけど。』
- 7 動物・植物の「いのち」
- ◎犬も猫も友だち
- 42 『こいぬがうまれるよ』
- 43 『トンちゃんてそういうネコ』
- 関連本:『いぬのマーサがしゃべったら』/『ゆうたはともだち』/『ずーっと ずっと だいすきだよ』/『きみにあえてよかった』
- ◎動物園へ行こう
- 44 『どうぶつえんガイド』
- 45 『う・ん・ち』
- 関連本:『どうぶつえんのおいしゃさん』/『しっぽのはたらき』
- ◎みつけたよ! 虫
- 46 『ダンゴムシみつけたよ』
- 47 『だれだかわかるかい?』
- 関連本:『昆虫―ちいさな なかまたち―』/『かまきりっこ』
- ◎みんな一緒に生きている
- 48 『こいぬのうんち』
- 49 『しまふくろうのみずうみ』
- 50 『とんとんとんのこもりうた』
- 関連本:『それは すごいな りっぱだね!』/『このあかちゃんだあれ』/『くも』他/『ちびゴリラのちびちび』/『このはな だれの?』
- ◎「いのち」のささえあい
- 51 『のにっき』
- 関連本:『つちらんど』/『たべたのはだれ?』
- ◎木のすばらしさ
- 52 『ふゆめがっしょうだん』
- 53 『どんぐりかいぎ』
- 関連本:『どんぐりノート』/『森はオペラ』/『じいじのさくら山』/『木の本』
- ◎植物のふしぎ
- 54 『たんぽぽ』
- 55 『すみれとあり』
- 関連本:『たねが とぶ』/『のはらのずかん』
はじめに
「いのち」は,とても大切なもの。かけがえのないもの。すばらしいもの。
大人なら誰もが共通にもっている認識ですが,幼い子どもたちの心に刻みこまれるように伝えるのは案外難しいものです。
幸い,近年は幼い子どもたちにも,わかりやすく「いのち」を伝える絵本がたくさん出版されています。
この本は,幼稚園や保育園に備えて,折にふれ子どもたちに読んであげて,活用してほしい「いのち」の絵本を紹介しています。もちろん家庭でも,親と子のふれあいの場でぜひ読み聞かせてほしい絵本ばかりを取り上げました。
私は,1997年から全国の小・中・高校,200校以上を訪ねて,「いのち」を考える本を紹介しながら「いのちの授業」を続けています。保育園・幼稚園では,園児対象ではなく,先生方やお父さん,お母さん方向けに「いのちの教育」や「いのちの絵本」の話をさせていただいています。
直接のきっかけは,私自身のがん体験です。1994年のことですが,進行性胃がんで胃を全摘し,5年生存率20%を告げられ,しばらく茫然自失の日々を送りました。なんとか立ち直るきっかけを与えてくれたのは,図書館で出会った多くの本でした。大人向けの専門書だけでなく,日ごろ,子どもたちに読み聞かせしていた絵本のなかにも,生きる力を与えてくれるものがたくさんあるのに気がつきました。本は一度出版され,どこかに存在すれば,いつでも,どこでも,誰にでも,励ましや勇気を与えてくれます。
とくに絵本は美しい絵と選び抜かれた短い言葉で,くじけそうになる心をやさしく癒してくれるだけでなく,多くのメッセージを伝えてくれます。私の「いのちの授業」では,中学生や高校生を対象にしたときでさえ,絵本が大活躍しています。日常的に絵本にふれる機会がほとんどない中高校生でも,「いのちを扱った絵本がこんなにあるとは知らなかった」「幼いころ,親や幼稚園(保育園)の先生が読んでくれる絵本が大好きだったが,大きくなった今でもたくさんのことを伝えてくれそうな気がする」「絵本を眺めていると,楽しかった幼いころを思い出して,なつかしく,心が洗われていくような気がする」と感想を記してくれます。
私の出前授業で出会うほとんどの子どもたちとは,その日限りのおつきあいです。しかし,「いのち」の重みは,一度きりの授業ではとうてい伝えきれるものではありません。様々な機会に繰り返し,大人と子どもが一緒に本をひもとき,感じとり,考えてほしいと願っています。
私が授業を始めた1997年は,神戸の14歳の少年による連続児童殺傷事件が起きた年です。その後も,長崎や佐世保の事件など,子どもが子どもの「いのち」を奪う事件が起こっています。こころない大人の手で子どもたちの「いのち」の根源が脅かされ,「いのち」を危うくする事件も残念ながらあいついでいます。
幼い子どもたちに「知らない人についていってはいけない」と言い聞かせたり,「知らない人と口をきいてはいけない」と教えなければならない現代の社会は悲しすぎます。しかし,これは人々の暮らしの身近な場所で自然が失われ,出産も死もすべて人目に触れにくい病院で行われるようになり,「いのち」の営みのすばらしさが伝わりにくくなったことにも原因があります。
そのため「いのちはかけがえのないもの」「人は一人で生きているのではない」「一人ひとり違った考え方・感じ方があること」「自分のいのちを大切にすることは他の人のいのちも大切にすること」というあたりまえの認識が失われがちになっています。
せめて,幼い子どもたちには,園で機会をとらえて「いのち」の絵本の読み聞かせをしていただきたいのです。そしてその絵本を家庭にも紹介したり,貸し出ししてほしいのです。保育者や親が,子どもとともに「いのち」の絵本の世界を共有し,分かち合うことで,大人にも子どもにも「いのちの重さ・尊さ」「生きていることのすばらしさ」がしっかり伝わるはずです。そうすれば,将来誰もが自分の「いのち」の主人公として,生き生きと安心して生きていける時代が約束されるでしょう。その手助けをこの本が果たしてくれたら幸いです。
2007年2月 /種村 エイ子
-
- 明治図書