- 序 年少組のわらべうた遊び
- 1.いまないた
- 2.たけんこが
- 3.カク,カク,カクレンボ
- 4.きよみずの
- 5.げたかくし
- 6.ダイドー,ダイドー(顔遊び)
- 7.いちばち
- 8.さるのこしかけ
- 9.このこ,どこのこ
- 10.ととけっこー
- 11.コメ,コメ
- 12.カッテコ,カッテコ
- 13.オフネガギッチラコ
- 14.かえるがなくから
- 15.もぐらどん
- 16.モグラモックリショ
- 17.かれっこやいて
- 18.こりゃどこの
- 19.センシュカンノンサン
- 20.ココハトウチャン
- 21.なべ,なべ,
- 22.うえから,したから
- 23.ドノコがヨイコ? (鬼きめうた)
- 24.ななくさなずな
- 25.なきむし,けむし
- 26.にぎり,ぱっちり
- 27.ドッチン,カッチン
- 28.せんべ,せんべ
- 29.ゴンメ,ゴンメ
- 30.うたおう,みんなでね
- 31.ボウズ,ボウズ
- 32.いっぴきちゅー
- 33.はち,はち,ごめんだ
- 34.こん,こん,ちき,ちき
- 35.どっち,どっち(鬼きめうた)
- 36.マニマニケムシ(顔遊び)
- 37.エエズ,ゴー,ゴー
- 38.ウッツケ,ウッツケ
- 39.いちめどー(体の部分でする遊び)
- 40.トウキョウト
- 41.ぶー,ぶー,ぶー
- 42.たこ,たこ,あがれ
- 43.コドモカゼノコ
- 44.イケノハタモーテ
- 45.コゾー,ネロ
- 46.おじいさん,おばあさん
- 47.ウチノウラノ
- 48.ももやももや
- 49.オテントサン
- 50.ハタ,ハタ,オレヨ
- [遊びの分類]
- しぐさ遊び
- A 坐ったり遊ばせ遊び的
- B 立ってみんなでする
- うただけのもの
- 歩きのついた遊び
- 役交代
- 大人がうたってあげるうた
- T 鑑賞曲
- U うたいながら遊んであげる
- その他の遊ばせ遊び
- してあげる,きかせてあげる遊びの楽譜
- 変えことば,変えうた,子どもの名前をいれる
- やり方
- 大人の耳をよくし,顔をよくするため,母語をいつくしむための十一戒
- [わらべうた・年間計画例]
- 《1期案・9月から月案の進行計画》
- 〈A案〉ふつうの年少組
- 〈B案〉2才でわらべうたをしてきた年少組
- 〈C案〉
- 〈D案〉
- 《9月以降の月案》
- 〈A案〉
- 〈B案〉
- 〈C案〉
- 〈D案〉
- 《1期の週案》 例1
- 《1期の週案》 例2
- 《9月からの計画》
- 〈A案〉
- 〈B案〉
- 〈C・D案〉
- 文学あそびによせて
- 1.くまさんのおでかけ をみる
- 2.タオルとおぶう
- 3.子どもたちの自由な遊びの中で文学あそびへの導入
- 4.アシ,アシ
- 5.文学あそびへの導入
- 6.花子さんのお料理をみる
- 7.a)保育園にお迎えにいく
- b)わからんちんが逃げこんでくる
- c)人形の家作り
- d)おやすみなさい
- 8.子どもはいませんか で遊ぶ
- 9.みんなでぐるぐる をみる
- 10.子どもはいませんか のために動物の動きの紹介
- 11.子どもたちの自由な遊びの中で作品の紹介
- 12.にわか雨だ
- 13.赤いとりことり
- 14.ねむの木
- 15.ミルクをのむと
- 16.まめのは
- 17.えんどう豆そら豆
- 18.ようたろうくんは何をみた をみる
- 19.父の日のために
- 20.ヨイサッサ
- 21.かえるとたまごととっくり をみる
- 22.詩 やさいのスープ
- 23.なぞなぞお母さん たいへん たいへん
- 24.子どもたちが道具にモチベートされて作品を楽しんでいえるようになるための方法
- 25.子どもの名前ですることば遊び
- 26.秋の伝承詩 二つ
- 27.オテントサン をみる
- 28.ぼうしのかいもの 寒い人は てぶくろ
- 29.おおさむこさむ 犬さんがしばかり たらこかずのこ おん正々々正月は
- 30.くるま をみる
- 31.文学あそびの発展として他の子にみせることができるもの
- [材料集] 本文に出てこなかったもの
- くまさんのおでかけ
- やすベーじじーは
- アシアシ アヒル
- これは森を散歩しているライオンのしっぽ
- ちいちゃな風はどうしたの
- わからんちんが逃げこんでくる
- おやすみなさい
- ミルクをのむとぼくになる
- だだっこさん
- すずめのよりあい
- からす かあかあ
- ブランコ
- ねむのき ねむのき
- あかいとり ことり
- ナカノ ナカノ
- やまとのやまとのげんくろうはん
- いぬさんがしばかり
- オヤユビボーズ川におちた
- コゾー ネロ
- この私のおやゆびがリンゴの木
- おにいちゃん おにになった
- はなちゃ はじゃないか
- たらこ かずのこ
- 舌もじり
- おじろ おじろ
- いっぷく たっぷく
- うちのちょんなべさま
- いっちょこ にぐるま
- ぐるぐる話
- やまから やまかぜふけば
- 鳥は なんといってなく
- 二つの風
- いってごらん 風にはどんな香りがあるか?
- かぜひきぐま
- ぽつ,ぽつ,ぽつ,ぽつ,こさめがふっている
- ばんけ ばんけ ふきのとう
- くるま
- 索引
序=年少組のわらべうた遊び
――どこからきて,どこへ行くのか?――
幼児の年少組(3才−4才)のする音楽的活動が,これまでの乳児のわらべうたと大きく,本質的に異なる点は,今まで,乳児では,子どもじしんはうたわない,大人のうたをきく,楽しむ,大人のまねごとで参加する,だけであったのが,これからは,自分たちじしんがうたい,動いて,鼓動を感じたり,あらわしたりすることです。
3才児たちの,みずからする,うたうわらべうたのもっともむつかしい点は,まだ,うたうことと動くことの協働,一致が容易でないので,すぐ重くなったり,疲れて力が入り,どなり声になるということです。
この欠点,難点を補うために,年少組のわらべうたは,はじめ,少人数のグループでやりましょう。後期からは,だんだん1度にやる人数をふやし,1年の終わり頃には,もう子どもたちも当然,次の年令に進んでいるわけですし,よほど人数の多いクラスでなければ,全員が加ってする水準に到達するはずです。
年少組では,大人がたくさんうたをうたってあげることも大切です。子どもたちにとって,少し長いうたをきくことは,短いお話や詩をきくのに先立って,または,それへの準備,導入としても大切です。まだ,あまりうたをおぼえていない大人は,子どもたちとわらべうたを遊んだあと,坐って,子どもたちに遊ばせ遊び(顔遊び,手遊び,ひざのせ遊びなど)をしてあげましょう。
年少組では,ことに前半,子どもたちにうたをうたってあげる時,子どもたちをただ床に坐らせて,じっとさせて聞かせることを避けたいものです。こういうお行儀の良さは,退屈以外の何ものでもないからです。人形コーナーなどに入って,しぜんに子どもだちと人形を相手に顔遊びや,ひざのせ遊びで「さるのこしかけ」,人形に向けて「なきむし」,坐ったままの人形をもって「たけんこが」,「このこ,どこのこ」など遊んだあと,大人が人形を抱きながら,ねかせながら子守りうたをうたったり,2つの抱き人形をうしろから支えてもち,動かしながら「やまかじ」「ひとりきな」,「ひとつひよこが」などをうたうことができます。
遊ばせあそびの曲ややり方は,[新訂わらべうたであそぼう]乳児編で十分紹介しましたので,その中から好きなものを選んで,期ごとに分けて計画し,すすめて行きましょう。
このように年少組の一期,ないしは前半のわらべうたは,家庭的ふんい気の中でうたうこと,遊ぶこと,きくこと,ごろあわせをいうことなどが,固いけじめをつけずに,しぜんな形で流れていくのがよいことです。
何よりもクラスの子どもたちの状態をみて。必要な時に動き,必要な時に座り,必要な時に休んでうたをきく,といった保母の判断が大きな役割を演じます。
しかし,そういった楽しみながらのわらべうたを進めていく途次,子どもたちの月令はどんどん進んでいっていることを忘れないようにしましょう。
4月の一番始めから,遊ばせ遊びと子どもにきかせる鑑賞用のうた以外,つまり,すべての子どもだちと遊ぶわらべうたは,子どもたちがうたう,子どもたちが互い同士のうたをよくききながらうたう,子どもが主人公,子どもが主体となった遊びうたなのです。
大人が先に立ってうたい,動くだけではなく,何よりも大人が先にたってうたいながらきくことを実行しなければなりません。
そして9月からは,おそくとも10月からは,立ってする遊びを中心に,毎回,きちんと1回ごとの計画(それまでは週にするものをまとめてきめておき,その中から自由に選択するのでよい),曲の順序をきめ,遊んだあと,きまって大人がうたをうたうか,遊ばせ遊びをして,きちんとしめくくりをつけるやり方に移っていきます。
遊ばせ遊びだけをすること,集団の形をくずして,楽にまわりの子どもと手をとって遊んだり,人形をもって,人形もいれて遊ぶようなことも,もちろん続けていきますが,それは,とくに声の低い子,らんぼうな遊び方のみられる子,ことばのおそい子,内向的でものをいわない子,他の子といっしょのわらべうたに入りにくい子,どなったり粗野なふるまいの目立つ子たちに,とくに働きかけるねらいをもって,たびたび,少しずつ働きかけ,笑いかけながらしんぼう強くやっていきましょう。
すべての子どもにわらべうたを! という意味は,ここにあります。子どもの情緒の安定,明るい,バランスのとれた発達,仲間や大人に親しみを感じること,愛情を形にしてあらわしたり,受けいれたりすることのために系統だて,習慣化したわらべうたとのとり組みほど効果的なものはありません。「新訂わらべうたであそぼう,乳児編」の序文で,大岡信氏のことばを拝借して,乳児期におけるわらべうたが,一生の母語への愛着を育てる登龍門であることを強調しました。
幼児におけるわらべうたの基本は,母語への結びつきをさらに多彩に,興味深く広げ,深めていくと共に,人間関係を率直に体の動きや表現にあらわしていく,つまり,普遍的な人間同士の文化的交流の形を学ぶ,練習する,くり返えしていく,ことにあると思います。
母語との結びつきを深めることは,だんだんに,独立した文学の分野の対象となっていきます。しかし,“動きのことば”と話されることば,きいて思いうかべることばとが,つねに手をとり合って進んでいくとき,自分の感情を体中のことば,表現,そぶり,動きを使ってあらわせる人間のたまごが育っていくのです。
それらすべてを仲介する役割が,幼児期から小学校の1,2年生までの間,鼓動と集団で遊ぶわらべうたの隊型の規律の中に見出されます。耳から広がる心の世界,鼓動を耳でうけとめる音楽的聴覚の自立した発達ほど,私たちの心の中を外に向けてひろげてくれるものはありません。
目で規律を追える保育者,教師,親はたくさんいます。
「ほら,こっちむいて」,「○○ちゃん,どこみてんの?」 「まっすぐ並んで」「くっついちゃだめよ」……等々。でも,耳で要求する規律は,これよりはるかに高級で,文化的なものです。
大人が子どもに耳を傾ける時,子どもの心はすべて大人に向かいます。(どんなふうに? ちょっとやってみましょう!)
わらべうたをいっしょにうたい,動くという時の“いっしょに”は,オダイモクでも,子どもへの束縛でもありません。私たち大人の耳の質,聴感という人間的能力への限りない向上心,あこがれの実在なのです。
いっしょに,ほんとうにいっしょに,ちょっとのすき間もないようにいっしょに,わらべうたをし,鼓動をききましょう。こんなうるさい世界が魔法のように静かになり,たちまち私たちの心の中に世界が,空間が,歴史が,仲間が広がるのです。子どもたちは,この私たちのいきいきとした心の静けさの中にとびこんでくるのです!
1985年7月 /羽仁 協子
ながく使い続けられた作品には、先人の思いが深くしみこんでいるのでしょう。
どんな時も、どんな子どもたちにもこころにとどく作品が多く掲載されている本です。