- はじめに
- 第1章 なぜクリティカル・シンキングなのか
- 1.クリティカル・シンキングについて知ろう
- ☆クリティカル・シンキングって何?
- ☆クリティカルに考えるって?
- ☆何が身につくの?
- 2.保育者にとってのクリティカル・シンキング
- ☆どうして保育者に必要なの?
- ☆冷静に判断できないときもある…
- 3.「常識」について知る
- ☆「常識」って何?
- ☆「常識」と向きあう!
- 4.考えてみよう
- ☆子どもの心を読む?!
- ☆他人の性格を知る?!
- ☆相手の立場になって考える?!
- ☆「子どもの目線に立って考える」って不可能なの?
- *子どものためにもクリティカル・シンキングを身につけよう
- 第2章 「常識」のしくみを知る
- 1.「常識」は変わっていくもの
- ☆常識がつくられるしくみ
- 2.「常識」にしばられるとは
- ☆その要因は何…?
- ☆限定された経験のなかで「常識」はつくられる?!
- ☆「常識」はモノごとを単純化(体系化)させる!
- ☆「常識」が思考に与える影響とは?
- 3.「常識」は変わる
- ☆「常識」が変わるのは難しい、でも変わる…
- ☆既存の「常識」に合わない時は?
- *経験のある保育者って?
- 第3章 人間の思考パターンを知る
- 1.人間は原因を特定(追求)したがるもの
- ☆帰属って何…?
- ☆私たちはめだつものに注目する…
- 2.原因特定を適切なものにする
- ☆原因の特定は常に間違う可能性がある!
- 3.一部分の情報(事実)からモノごとを結論づける
- ☆「常識」が情報(事実)を歪める!
- 第4章 私たちは自分に対する「常識」をもっている
- 1.自分に対する常識とは
- ☆自己常識って何?
- 2.人間は自分を守るためにいろんなことをする
- ☆自己概念とはいわゆる「アイデンティティ」…
- 3.認知的不協和による自己概念の守り方
- 4.自己ハンディキャッピングによる自己概念の守り方
- ☆自己ハンディキャッピング
- 5.私たちは自信をもちたいもの
- ☆自己効力感とは「自信」のことなのです…
- 第5章 他人に対しても自分の「常識」で判断する
- 1.他人(子ども)を知る
- ☆他人(子ども)を理解するのはむずかしい!
- 2.ステレオタイプという常識
- ☆ステレオタイプは偏見への道?
- 3.他人(子ども)の行動を観察する
- ☆「一致性」「弁別性」「一貫性」をチェックすれば「内的原因」か「外的原因」かがわかる!
- ☆基本的帰属錯誤:他人の失敗の原因を過度に本人の性質に帰属する
- ☆立場によって見方を変える!
- 読書紹介
はじめに
本書の目的は、保育者および保育者を目指す学生のみなさんに、より柔軟な思考ができるようになるためのスキル(思考技術)を紹介することにあります。
保育者は、仕事の性格から「経験(現場)主義」に陥りがちです。
保育現場での経験は、保育者の実践にとっては財産です。しかし「経験」に大きくよりかかった「保育」では、保育方法がパターン化したものになってしまいます。子どもの見方に偏りが生じる可能性が出てくるのです。結果として、子どもについての本質的な理解を妨げてしまうことになりかねません。
そこで、より柔軟な思考を習得するためのひとつの可能性として、『クリティカル・シンキング』(critical thinking)という考え方を紹介することにしました。『クリティカル・シンキング』には、「偏りのないバランスのとれた思考」という意味が含まれています。『クリティカル・シンキング』を学ぶことにより、保育者および保育者を目指す学生のみなさんが、自らの保育方法(常識)にとらわれない柔軟な思考、つまりは、ひとつの決断(決定)を下すときにいろいろな可能性を考えてみる態度、の習得を目指していただければと考えたわけです。
『クリティカル・シンキング』には、主として論理学的・心理学的アプローチがありますが、本書では、心理学的アプローチを用いることにしました。というのも、幼児教育という分野で、子どもも含めた「人間」を科学(分析)する上において、心理学の知見から学ぶことが有用であると考えたからです。
なお出版にあたり、明治図書出版株式会社(教育書編集部次長)の石塚嘉典氏にはご配慮をいただきました。厚くお礼を申しあげます。
2003年7月 /谷川 裕稔
-
- 明治図書