- はじめに
- 第1章 3歳児って何?
- 1 3歳児教育には幼児教育の原点がある
- 2 3歳児の発達と特徴
- 3 あなたは子ども一人ひとりにとってどんな先生でしょうか?
- 4 しあわせな出会いを幼稚園で
- 第2章 3歳児の子どもたち
- 〜3歳児の特徴から見た事例〜
- 1 やりたがりやの3歳児
- 2 自己中心の3歳児
- 3 何でもあそびの3歳児
- 4 頼れる(心の)基地ほしい3歳児
- 5 おしゃべり大好き3歳児
- 6 先生! 先生!の3歳児
- 7 まねっこ大好き3歳児
- 8 友達の中で育つ3歳児
- 9 自信をもってる3歳児
- 第3章 3歳児担任の先生がんばれ!
- 1 子どもの気持ちによりそおう
- 2 子どもは一人ひとりみんな違う
- 3 先生は子どもの「モデル」
- 4 子どものやる気を大切に
- 5 子どもたちとあそぼう
- 6 その時を大切に
- 7 子どもの気持ちを分かっていますか?
- 第4章 お母さんと一緒に子育てを
- 1 いろいろな子,いろいろな保護者
- 2 信頼感を深めるためには
- 第5章 私たちの園の3歳児保育
- ・ いすって面白いね(佐藤幼稚園)
- ・ はじめての粘土(あすなろ幼稚園)
- ・ 楽しい3歳児保育(中沢幼稚園)
- ・ オペレッタは楽しいね(双葉幼稚園)
はじめに
今,幼稚園をとりまいている中で,3歳児教育に熱い視線や,期待が寄せられています。どうして今,3歳児教育に深い関心が寄せられているのでしょうか? それには大きく分けて2つの理由があると思います。そのひとつは,母親を含む女性の社会への進出の高まりという「社会的要因」です。もうひとつは「幼稚園側からの要因」です。
ひと昔前までは,子育ては母親にとって最も大切な尊い仕事と考えられ,子どもがある年齢に達するまでは,母親は家庭の中で子育てに専念するのが当たり前と考えられていました。しかし,女性の社会への進出が増え,社会的にも女性の人材の確保が必要になってきた昨今,子どもがまだ幼い時代から保育園や幼稚園に預けて,仕事を続けよう,仕事をしようという女性が増えてきました。国でもエンゼルプランや公立幼稚園での3歳児保育を進める等,母親が仕事をもちながらも子育てをしやすくなるような社会的環境作りを積極的に推し進めています。そして,幼稚園サイドからみても少子化が進み,子どもの数が少なくなってきているので,幼稚園としても,3歳児の就園に積極的に取り組む必要が出てきました。
しかし,3歳児は発達の面からみても,4・5歳児とは全く異なった面をもっており,4・5歳児と同じように保育をすることには無理があります。3歳児は生後まだそんなに年月が経っていないわけですので,生まれた月日によっても当然,発達の違いは著しいですし,入園までの成育歴も異なっています。ですから,3歳児の場合,子どもの見方,捉え方にしても,保育の進め方や生活にしても,4・5歳児とは違った位置付けが必要です。
そのような背景の中から,3歳児教育に関心の目が向けられています。しかし,実際には,3歳児に関しては子どもの実態についても,幼稚園での保育についても深く研究されていないというのが実態だと思います。そんな中で,私たち浜松の私立幼稚園では,幼稚園の創立当初から3歳児保育を実施している幼稚園が沢山あります。ですから,私たちも幼稚園において,3歳児保育があるのが当然と考えていました。幼児教育界はもちろん,社会的視野からも3歳児教育の重要性が叫ばれている現在,今まで実践してきた3歳児保育の在り方を見つめ直すにはいい機会だと思い,3歳児教育を勉強し直す会を作りました。難しいことを研究するのではなく,日ごろの子どもたちの姿や子どもたちと接している保育者のありのままの姿や悩みや気持ちをもちより研修を進めてきました。
今回研修をしていく中では,3歳児の子どもの見方や捉え方及び3歳児保育の在り方等,保育現場のことを中心に勉強し合ってきましたが,話し合いの折々に,純粋に教育サイドの問題だけではなく,幼稚園においての,長時間預かり保育や,2歳児の受入れ問題等,色々な問題も考えさせられました。今回は純粋に3歳児の教育についてだけをまとめたものになりますが,子どもたちの真の幸せを考える時,この問題も避けて通れません。この点につきまして,私たちとしては,3歳児は「私とあなた」という,1対1の関係が大切な時代なので,2歳児入園や長時間預かり保育は,子どもの健全な成長発達には問題があると考えています。
この本を読んでくださった方が,「うん,3歳児ってそうだね」と,うなずいてくださったり,「違うんじゃないかしらね」等と考えてくださり,3歳児教育を見つめ直す材料のひとつになってくれれば幸いです。
1998年1月 著 者
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- 明治図書