- まえがき
- 第1章 子どもとのかかわり
- 1 子どもに接する態度
- 2 上手な叱り方
- 3 上手なほめ方
- 4 父親の子育て参加
- 5 共働き家庭の子育て
- 6 一人親家庭の子育て
- 7 祖父母同居家庭の子育て
- 8 転勤のある家庭の子育て
- 9 少子社会の子育て
- 10 子どもがつまずいた時の子育て
- 11 片づけ・手伝いのさせ方
- 12 テレビゲームのさせ方
- 13 思いやりの心を育てる
- 14 自立心を育てる
- 15 意欲を育てる
- 16 がまんする力を育てる
- 17 自己主張の力を育てる
- 18 努力する力を育てる
- 19 友だちをつくる力を育てる
- 20 友だち関係の力を育てる
- 第2章 学校との接し方
- 21 学校の先生もいろいろいます
- 22 相性のいい先生とのつきあい方
- 23 相性の悪い先生とのつきあい方
- 24 就学前の準備
- 25 学校に行くのがいやだと言った時
- 26 いじめをする子どもの心の中
- 27 いじめの実態と対処
- 28 帰国子女の場合
- 29 非行の低年齢化
- 30 授業の受け方
- 31 勉強の習慣をつけさせよう
- 32 テストの「×」を活かそう
- 33 小学5年生の時期が大切
- 34 学習塾もいろいろあります
- 35 小学生と英語
- 36 偏差値だけでは21世紀は生き抜けない
- 第3章 地域社会とのかかわり
- 37 子育て経験者との交流
- 38 近隣との交流
- 39 子ども会活動への参加
- 40 スポーツ少年団への参加
- 41 キャンプ(宿泊体験)への参加
- 42 児童館の利用
- 43 学童保育(児童クラブ)の利用
- 44 子育て支援・互助サークルヘの参加
- 45 相談機関の利用
- 46 電話相談の利用
- 第4章「生きる力」の基礎をつくる子育て
- 47 母親は人生の最初の教師
- 48 躾(しつけ)は幼少の時に
- 49 親のビンタはかまわない?
- 50 お金についての教育
- 51 「親にタメにされた」と言われないために
- 52 自然はもう一つの学校
- 53 21世紀は男も女も尊重される時代
- 54 持ち味と使い道
- 55 「生きる力」とは
まえがき
親にとって,子育ては避けて通れない課題です。しかし,子育てや子の教育について,必要以上に不安に陥ったり自責の念にかられたりすることはありません。家庭でできる範囲の子育てでよいのです。子どもは親が思っている以上に強くたくましい存在です。親の心配をよそにすくすく育っていくと思います。
子育てにパーフェクトはありません。いろいろな面で優秀と言われている親たちの子どもでも育ち方は千差万別です。子育てを終えた11人の母親に聞いてみました。「あなたの子育ては成功でしたか?」と。「成功とも失敗とも言えません。なるようになりました」という答えがほとんどでした。答えた母親たちはみな,学生時代には成績優秀でした。父親たちも社会で大層活躍しています。それでも子どもたちはいろいろに育ちました。成績では親を超えるほど優秀な子,問題を起こして補導されてしまった子,不登校になって学校へ通えなくなった子,のびのびと素直に育った子,芸術方面に才能を伸ばした子,親の金を持ち出し家出をした子,語学に優れ海外で活躍する子等々,様々なのです。
子育てや子の教育は科学ではありません。子どもは一人ひとりみな違って生まれ,違って成長していくのです。工業製品は,設計図通りにつくりさえすれば同一製品がいくらでもできます。流れ作業で大量生産することもできます。子育てや子の教育はそうはいかないのです。
21世紀初頭には,完全学校週五日制が実現します。これから家庭の教育の時間はさらに増えると思います。地域社会の教育的役割も増していくに違いありません。学校にのみ,子の教育をまかせることはそろそろ終わりにしなければなりません。何もかも学校に押しつけるのは間違いです。学徒や教師には自ずとその能力に限界があります。家庭や親でなければできない家庭の教育を学校にまかせてしまってはうまくいくはずがありません。
人間の根幹を形成する真に大切な教育は家庭の教育です。子どもが将来,社会の中でたくましく生きていけるように,「生きる力」の基礎を形成できたら申し分のない子育てです。子どもたちは,途中いろいろな困難に直面してもそれを乗り越えてそれぞれの未来を創造していくと思います。
戦後52年,日本の経済や物づくりは発展しました。しかし,心や理想や誇りといったものは少し粗末にされてきたようです。お金も物も大切です。人間の心や精神はそれ以上に大切です。21世紀が本当に成熟した社会になるか否かは,現今の子どもたちがどう育っていくかにかかっています。子育て中のお母さん,お父さんたちに本書を通して少しばかりのエールを送りたいと思います。どうぞがんばってください。
本書は,第1章「子どもとのかかわり」と第3章「地域社会とのかかわり」を浅野房雄が執筆しました。第2章「学校との接し方」と第4章「生きる力の基礎をつくる子育て」を木内知通が執筆しました。いくばくかでも子育て・子の教育についてお役に立つことができたら嬉しく思います。
1997年11月 /木内 知通 /浅野 房雄
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- 明治図書