- 本書を読まれる皆さんへ
- 第T章 子どもの「遊び」をとらえる
- 1 子どもの悩み・保育者の悩み
- 〜遊びに対するイメージのズレ〜
- 2 現代っ子と遊び
- ・立花隆氏の視点から
- ・深谷昌志氏の視点から
- 第U章 子どもの遊びが生き生きするとき
- 1 子どもの遊びが生き生きするとは
- ・生き生き=夢中ということ
- ・落ち着かない子どもの遊びの原因
- 2 子どもの遊びのリズムをつかむ
- 〜遊びの山谷について〜
- ・遊びの山,谷をつかむ
- ・遊びの山谷の表について
- 第V章 子どもの遊びが生き生きする法(物的環境編)
- 1 遊び空間と遊具の創造
- ・6つの原空間
- ・保育の遊びスペースについて
- 2 物的環境についての考え方
- ・「もの」からの語りかけに耳をすますということ
- ・何でもない,しかし何にもなれる
- ・子どもが遊びたくなるような環境をつくる
- 3 子どもの遊びが生き生きする法(事例編)
- ものに対する見立てを柔軟にし,偶然を生かすことで遊びが発展した例(2歳児)/ もののもつ特徴を知り,その見立てを豊かにすることで遊びが展開した例(2歳児)/ 園庭の環境を変化させ,子どもの見立てによりそうことで遊びか発展した例(2歳児)/ 身近な環境を生かし,遊びを例示することで遊びが展開した例(3歳児)/ 子どもの好きな活動を組み合わせることで遊びが展開した例(2歳児)/ 遊びのイメージを明確にすることで遊びが展開した例(3歳児)/ 環境に修正を加えることで遊びが展開した例(4歳児)/ 遊び時間,遊び場の十分な保障によって遊びが展開した例(1歳児)/ 遊びの環境を変化させることによって遊び方こ発展・展開した例(1・2歳児)/ 遊びの環境を変化させることで遊びが展開した例(2歳児)/ 遊びの環境を変化させることで遊びが展開した例(2歳児)/ 「もの」そのものの魅力から遊びが展開した例(5歳児)
- 第W章 子どもの遊びが生き生きする法(人的環境編)
- 1 プロ保育者として必要な2つの目
- ・子どもと一緒に遊んでみよう
- ・若手保育者の陥りやすいワナ
- ・ベテラン保育者の陥りやすいワナ
- ・遊びに関わるプロ保育者の2つの目
- 2 子どもの遊びが生き生きする法(理論編)
- ・子どもの遊びが生き生きするために
- ・主に言葉がけに関すること
- ・主に行動面に関すること
- 3 子どもの遊びが生き生きする法(事例編)
- (1) 主に言葉がけに関するもの
- 励まし(3歳児)/ 手助け,評価(1歳児)/ 評価,認める(5歳児)/ 評価,認める(5歳児)/ 勧誘(3歳児)/ 禁止(3歳児)/ イメージの拡大,代弁(物的環境の準備を含む)(1歳児)/ イメージの拡大(子どもの活動から学ぶ)(2歳児)/ イメージの拡大(4歳児)/ イメージの拡大(2歳児)/ イメージの明確化(2歳児)/ 代弁(5歳障害児)/ 代弁,例示,イメージの明確化(3歳児)/ 見守り(3歳児)/ 共感,例示(1歳児)/ ゆさぶり(4,5歳児)/ 伝達(5歳児)/ 仲裁(5歳児)
- (2) 主に行動に関するもの
- 例示(1歳児)/ 例示(2歳児)/ 例示(3歳児)/ 例示,イメージの拡大(4歳児)/ 例示(2歳児)/ 例示,手助け(5歳児)/ 手助け(2歳児)/ 勧誘,手助け(5歳児)/ 仲立ち,依頼(3歳児)/ 例示,勧誘(3〜5歳児)/ 例示,仲立ち,イメージの明確化(1歳児)/ 仲立ち(3歳児)/ 代理(2歳児)/ よりそい,共感(2歳児)/ 代理(遊びへの参加)(3歳児)/ 偶然を生かす,共感(3〜5歳児)/ 共感,認める(1歳児)/ 偶然を生かす(3,5歳児)/ 偶然を生かす,共感(4,5歳児)
- 第X章 子どもの遊びをもっと深く理解するために
- 〜子どもの土遊びから見えてくること〜
- 1 土遊びの深まり
- 〜尼崎市立竹谷保育所の2年間の記録をもとに〜
- ・土遊びの3つの楽しみ
- ・尼崎市立竹谷保育所の2年間の記録から
- ・「おだんご大会」をしよう
- ・楽しかった「おだんご大会」を通して変わる子どもたち
- 2 年齢からみた土遊びの特徴
- 3 土遊びから見えてくること
- ・2つの事例
- すべり台からすべり落ちる泥に興味をもったA児(4歳児)の事例/ 無目的な造形遊びからケーキづくりの遊びに発展したB児(4歳児)の事例
- ・土遊びの援助の観点〜土遊びは遊びの中でこそ深まる〜
- 終章 今後の取り組みと課題
- ・一人一人の遊びのプロセスに即した援助を
- ・日常性にひそむ「遊びの芽」を育てるということ
- ・2つの目をもって子どもの遊びに関わるということ
- ・個別の保育環境の調査を積み上げるということ
- ・豊かな遊びの文化を掘り起こし,伝達するということ
- ふろく 保育tips集T
本書を読まれる皆さんへ
本書は主に幼児教育における保育者の方々に対して,幼児の自由な遊びの援助を進める際のヒントをできるだけ具体的に示そうとするものです。もちろん,このテーマを論じるには幼児の遊びそのものをどのようにとらえるのか,その定義がなくてはならないのは当然のことですが,現状の遊び論にはこれといった具体的な実践の指針が見えてくるような明解なものが少ないのも事実です。しかし,現実に子どもは私たちの目の前で「生き」,そして「遊んで」います。そして,私たちはそれを援助しようとしています。
それゆえ,ここでは遊びを「『それ』をすることで,我を忘れたように熱中し,生き生きしているように見える」状態といった程の意味にとらえ,むしろ,そのような子どもの状態を生み出すための後助のあり方を考えることに重点をおきたいと思います。そのことで逆に私たちが考えている子どもの遊びのイメージも浮かび上がってくるのではないかと思います。
もちろん,ここで指摘されたことが子どもたちの自由な遊びに対する援助のすべてでは決してありません。しかし,とりあげた事例の中に日常の保育活動に何か参考になる多くの点がかくされているのも事実ではないかと思います。本書をお読みくださった読者の方々が,遊びの援助に関して少しでも具体的な見通しをもっていただければこれにかわる喜びはありません。
なお,本書の中にとりあげた事例のほとんどは,尼崎市立保育所(19所)において1995年から1997年にかけて取り組まれた実践をもとにしています。この実践記録の積み上げがなければ本書は成り立たなかったといえます。また,尼崎市保育内容研究会,富山大学附属幼稚園の研究にも多くを学びました。それぞれお名前をあげることはできませんが,このような豊富な事例を提供していただきました先生方,園児の皆さん,そして事例の引用を快諾していただきました尼崎市保育職員課の皆様に改めてお礼申し上げます。
著者を代表して /竹井 史
-
- 明治図書