- はじめに
- 第T章 感性はなぜ大切か?
- Q1 保育の中で造形や音楽は何のために行うのですか?
- Q2 「感性」とは,どのようなものですか?
- Q3 「感性」は,なぜ大切なのですか?
- Q4 「感性」と「知性」の関係は?
- Q5 保育者にとって感性は,なぜ大切なのですか?
- Q6 感性は自然に育つものですか,それとも教えられたり指導されたりするものですか?
- Q7 感性が育つ環境や働きかけとは,どのようなものですか?
- Q8 「感性」が豊かなことと「個性」とは,どのような関係がありますか?
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- 第U章 子どもは何を表現するのか?
- Q1 表現活動は子どもにとって,どのような意味をもっているのですか?
- Q2 言葉や音楽や身体といった様々な表現方法がある中で,造形表現の特質は,どのようなことでしょうか?
- Q3 子どもは絵で何を表現するのですか?
- Q4 アニメのキャラクターのような型にはまった表現しかしない子どもについて,どのように考えたらよいのでしょうか?
- Q5 子どもが「思い」をこめて描いた絵と,そうでない絵とが,できた作品としてはたいして変わらないことがありますが,それでもよいのでしょうか?
- Q6 子どもの絵には美的な価値があるのでしょうか?
- Q7 「上手な絵」と「良い絵」という言い方がありますが,どのように違うのですか?
- Q8 「子どもは生まれつきの芸術家」ですか?
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- 第V章 表現を「受けとめる」とは?
- Q1 子どもの表現活動は自然発生的に生じてくるものですか?
- Q2 子どもが表現したくなる環境とは,どのような環境ですか?
- Q3 子どもの表現にとって素材はどんな意味をもっていますか?
- Q4 子どものどのような様子や動きに注目して,表現活動に働きかけたらよいのですか?
- Q5 いつも同じようなステレオタイプの表現しかしない子どもに対して,どのように働きかけたらよいのでしょうか?
- Q6 「表現を受けとめる」とは具体的にどうすればよいのですか?
- Q7 子どもの表現に保育者が共感できない時は,どうしたらよいのですか?
- Q8 表現活動という観点から,保育の場にコンピューターによる新しいメディアを取り入れるのは良いことでしょうか?
- 【こんな本がおすすめ】3…保育者の役割について
- 第W章 見守りますか,指導しますか?
- Q1 保育における表現活動は,学校教育での「教科」としての表現活動と違うのですか?
- Q2 表現活動における自発性と文化的価値との関係は対立・矛盾しませんか?
- Q3 保育の中で一人ひとりの表現を受けとめながら,文化的な価値を伝えるためには,どうしたらよいですすか?
- Q4 美的価値というのは普遍的なものですか?
- Q5 子どもに伝えるべき美的な価値とは,どのようなものですか?
- Q6 子どもに伝えるべき美的・文化的な価値に対して,保育者個人の好みや美意識は捨てなければならないのですか?
- 【こんな本がおすすめ】4…一つのモデルとして──シュタイナー幼稚園について
- 第X章 保育の本質と表現活動
- Q1 保育という営みの中で,表現活動はどのような位置をしめるのですか?
- Q2 幼稚園教育要領や保育所保育指針の中での表現活動の位置づけを,どのように考えますか?
- Q3 表現活動を通じて養われる豊かな感性は,人間が生きる上で,どのような意味をもちますか?
- Q4 保育者にとって,もっとも大切な資質は何ですか?
- 【こんな本がおすすめ】5…「表現」と「保育」の本質を考える/ しなやかな感性のために
はじめに
この本のメッセージは二つです。
子どもの表現活動は、保育という営みにとって本質的な要素であること。
子どもの表現活動にとっては、保育者がそれを受けとめ、働きかけることが不可欠であること。
平成元年、2年に幼稚園教育要領、保育所保育指針が改訂されて以来、保育の場では子どもの自発性や主体性を尊重する流れが定着しつつあります。私たちは基本的にそれを望ましいことと思っています。けれどもその一方で、造形をはじめとした子どもの表現活動に対して保育者がどこまで、どのようにかかわったら良いのか、とまどいや誤解(たとえば、働きかけを一切しないことが子どもの主体性を尊重することである、というような)も、いまだに多く見られます。そしてそれが、子どもの育ちと保育者の力量にマイナスの影響を及ぼしているのではないかと、私たちは心配しています。
そこでこの本では、子どもの表現活動の意味と、それに対する保育者のかかわりについて、あらためて根本から問い直してみようと考えました。目の前の子どもたちと日々真剣勝負の保育者の皆さんに、根本から問い直すなどという、少々迂遠な──でも本当は不可欠な──ことをしていただくためには、どうしたら良いか。そのためにこの本では、短い時間でどこからでも読んでいただけるように、テーマを一問一答の形に分割して、それぞれについて2〜4ページで読み切りとする、また、日常的な話しことばを使った二人の著者の対話形式で叙述する、といった工夫をしてみました。
折しも幼稚園教育要領の再度の改訂が話題になっています。そこでは、子どもの主体性を尊重する現行の教育要領の良さを生かしつつ、保育者からの働きかけの大切さを見直すということがポイントとなりそうです。私たちのメッセージは、この新しい教育要領の核心を先取りするものでもある、と自負しています。
なお、この本は、貴重な実践の足跡である作品を快く提供して下さった多くの先生方と園児・児童の皆さんのご厚意によって完成しました。ここでその全てのお名前を記すことはできませんが、あらためて心より感謝いたします。また、著者二人がこれまでいただいた数えきれないほど多くのご指導、ご教示に対する謝辞も一つひとつ申し上げる紙幅がありませんが、西村が保育について学ぶ機会を与えて下さった、禿了滉先生をはじめとする仁愛女子短期大学幼児教育学科および附属幼稚園の皆様方については、特に記してそのご恩に御礼を申し上げたいと思います。最後になりましたが、著者二人の仕事の遅さやわがままに辛抱強くおつきあい下さり、この本を形にしていただいた編集部の石塚嘉典さん、細見令子さん、本当にありがとうございました。
1998年8月 著者を代表して /西村 拓生
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- 明治図書