- まえがき
- T 保育の内容のとらえ方
- 1 子どもが保育所において安定した生活と充実した活動ができるように【第1章 2−(1)】
- 愛,子ども,家庭,そして園生活
- 緑の園庭,すてきな園舎
- 広やかな心と,あこがれのセンスと
- 2 子どもが身に付けることが望まれる事項【第1章 2−(1)】
- うれしい生活
- 面白い遊び・面白いおもちゃ
- 自然と仲よし
- 日本の文化,そして外国の文化
- 三つ児の魂
- U 保育の環境のととのえ方
- 1 子どもが自発的,意欲的に関われるような環境の構成【第1章 1−(2)−エ】
- 園庭を遊びの宝庫に
- 思う存分,遊びに浸ることのできる空間
- 遊びを選べるうれしさ
- 育てる楽しみ,実りのうれしさ
- 2 屋外遊戯場【第1章 1−(3)】
- 四季おりおりに美しい園庭
- 好奇心や探究心のわく遊び場
- 低年齢の子どもたちが,安心してあそべるように
- テラスの魅力
- オアシスとしての園庭
- 3 採光,換気,保温,清潔など環境保健の向上【第1章 1−(3)】
- 居心地のよい部屋は,窓辺のセンスアップから
- トイレの改良に力を入れる
- アット・ホームな雰囲気と安全性
- 子どものリズムに合った食事と昼寝ができるように
- 蚊取り線香の効用
- V 乳児保育のすすめ方
- 1 一人一人の子どもの甘えなどの依存意欲を満たし,情緒の安定を図る【第4章 3−(3)】
- たっぷりと抱っこをしてあげて
- たっぷりと甘えさせて
- だだをこねることの意味
- 友だちとの世界へ
- 2 楽しい雰囲気の中で,昼食や間食が食べられるように【第5章 4−(5)】
- 授乳や離乳は,ゆったりと
- 食器類は,ハイセンスな感覚で選んで
- 「ジブンデ!」と,ほどよくおつき合いをしながら
- 食事は,友だちといっしょがうれしい
- 3 好きな玩具や遊具,自然物に自分から関わり,十分に遊ぶ【第5章 4−(15)】
- 好きな玩具は,子どもにとっての宝物
- じゃまをされない,ひとり遊び
- 玩具は,子どもの目の高さに置いて
- お外が大好き
- 4 保育士を仲立ちとして,生活や遊びの中で言葉のやりとりを楽しむ【第6章 3−(9)】
- ほほえみ合いが,うれしくて
- おしゃべりするのが,うれしくて
- いいこといっぱいが,うれしくて
- リズムに乗るのが,うれしくて
- W 年齢と発育のとらえ方
- 1 他の子どもとの関係が子どもの生活,特に遊びにとって重要なものとなってくる【第7章 1】
- コーナーから聞こえてくる,子どもたちの会話
- ひとりでの遊びから,ふたり,三人での遊びへ
- 2 目にはみえない心のあることを実感し,身近な人の気持ちが分かるようになり【第8章 1】
- すてきな心を,子どもたちからいただく
- 四季の自然の息づかいを感じ取りながら
- 赤ちゃんは,かわいらしい
- 3 社会性がめざましく育つことに留意しながら,子どもの生活を援助していくこと【第9章 2】
- 自分の成長についてのアイデンティティー
- 友だちを思いやる心
- 男の子としての,女の子としてのアイデンティティー
- 4 外国の人など自分とは異なる文化を持った様々な人々に関心を持つ【第9章 4−「人間関係」−(11)】
- インタナショナルな時代へ
- 月に1度は“世界のランチ”
- いろいろな国のメロディーや衣装
- 人形は,かわいらしい力を発揮する
- X 保育の計画のつくり方
- 1 地域の実態,子どもの発達,家庭状況や保護者の意向,保育時間などを考慮して【第11章 1】
- コミュニティーを取り込んでの保育計画
- 子ども一人ひとり,それぞれの育ちようを考えて
- それぞれの家庭のニーズを研究すること
- 柔軟な「デイリー・プログラム」へ
- 2 保育所全体の職員が協力体制を作り,適切な役割分担をして保育に取り組めるように【第11章 6】
- 役割分担を工夫する
- 個性を発揮できる面白さ
- 役に立つ,さわやかなミーティング
- 3 長時間にわたる保育については,子どもの年齢,生活のリズムや心身の状態に十分配慮して【第11章 10】
- 「モーニンググループ」と「夕焼けグループ」
- 生活の味がする,うれしい時間帯
- 保育園での朝食
- お迎えの方への心配り
- 4 異年齢で編成される組やグループで保育を行う場合【第11章 5】
- “きょうだいグループ”は,本来の生活スタイルの再現
- “きょうだいグループ”は,アイデンティティーを培う
- “きょうだいグループ”は,園生活を楽しいものにする
- “きょうだいグループ”は,保育者の子ども観を深めていく
- Y 健康・安全への気のくばり方
- 1 食事を与えるときには,その子どもの食欲に応じて,無理強いしないように【第12章 1−(3)−キ】
- 食事の時間
- 食事の場所
- 食器の選び方
- あたたかな食事
- 2 子どもの疲労に注意して,適切な休養がとれるように【第12章 1−(5)−ウ】
- 子どもたちの疲労は,プログラムに沿うわけではない
- 時間がおだやかに流れていくように
- いつでも,気軽に,横になって休めるスペース
- 3 子どもの発達に合わせた安全指導の必要性【第12章 6−(2)】
- 入ってみたくなる部屋,さわってみたくなる玩具や家具類
- 安心してあそべる玩具
- 低年齢児専用のミニ・ガーデン
- 安全教育の工夫
- 避難訓練,交通安全も楽しく
- 「おさんぽマップ」を「安全マップ」へ
- 4 虐待の疑いのある子どもの早期発見【第12章 7】
- 保育者は,虐待に気づくことができる立場にいる
- 子どもの表情や体の変化に注意して
- Z 子育て支援への取り組み方
- 1 保護者の子育て負担や不安・孤立感など,養育機能の変化に伴う子育て支援【第13章 前文】
- ホッとできる,いこいの場
- 園舎や園庭を,子育てをする人のサロンへ
- 親子で肌を触れ合って
- 2 障害のある子どもの保育【第13章 1−(1)】
- まずは,母と子がともに園に通うようにして
- 子どもたちに広がる新しい人間関係
- 保護者とは,二人三脚で
- 専門の機関を紹介する
- いろいろな子どもが,ともに過ごすことの意味
- 生活の中で向き合えるもの
- 3 保育時間の延長,夜間に及ぶ保育【第13章 1−(2)】
- ホッとする,夕べの明かり
- ダイニング・ルームでの1杯のお茶
- ひとりで子育てをする親の苦労を思って
- 4 地域に開かれた児童福祉施設として【第13章 2−(2)】
- 子育ての経験を吸収する
- 地域の“キンダー・ガルテン”となるように
- 将来,親となる人たちへ
- [ 研修のすすめ方
- 1 派遣研修【第13章 3】
- 他の園と,自分の園のチャーム・ポイントを発見する
- 講演スタイルの研修
- ゼミナール・スタイルの研修
- 見学スタイルの研修
- 実技スタイルの研修
- 食事についての研修
- 2 所内研修【第13章 3】
- ミーティングとゼミナール
- 保育をめぐる情報について
- 生活文化について
- 遊びの文化について
- “ロール・プレイング”を取り入れて/ 保護者や地域の方々を講師にして
- あとがき
まえがき
*時代は大きく動いている
たしかに,時代は大きく動いています。具体的な形として見えるものも,雰囲気やセンスのようなものも,大きく変わりつつあるらしいことが肌に感じられます。
それらが,21世紀への幕開きと重なり合っているのですから,とてもドラマチックです。だれもが,多少の興奮を感じているはずです。
保育の世界も例外ではなさそうです。単調に繰り返されてきた発想や方法や内容や環境論では,どうにも満たされないものがあることが,少しずつはっきりとしてきました。いったい,どの辺にその原因があるのか,研究してみようという気になってきました。
*より自然体であるように
生活のいろいろな面で,本物指向が進んでいます。居住空間にあっては,木の香りのする本物の素材が愛されるようになってきたことなどは,その象徴と言ってよいでしょう。
乳幼児保育は,人間の本源的な営みそのものを仕事の内容としているのですから,本物指向,すなわち自然体へ向かうようになるのは,いわば当然のことでしょう。
「保育所保育指針」の内容についても,このような視線で,その改良点を見いだし,そして,より深く検討していきたいと思います。つまり,子育てという人間本来の自然体としての行為に,どれだけ照準を近づけることができてきたかという視点です。
*よりヒューマンな姿勢へ
どんな仕事でも,人間同士が尊重し合う姿勢,すなわちヒューマニズムとも言うべき姿勢が,仕事を本物に近づける道だと考えます。
相手を尊重し,相手に喜ばれ,そして自分自身の存在意義を確かめ,社会的に意味のある仕事をしているという認識のもとに力を入れること。保育の仕事にあっては,この姿勢を真正面から考えていきたいと思います。乳幼児保育のバックボーンは,常にこのことを確かめながら,より心強いものにしていきたいのです。
このように考えると,保育の仕事に携わっていることに,より張りが出てきます。そして,より味わいのある研究テーマや,工夫すべき課題が生まれてきます。
*保育の仕事を楽しもう
与えられた指示に従って,ただ義務としてする仕事ほど,味わいのないものはありません。
働きがいが感じられ,何かと工夫していくことを楽しみ,そして,子どもや保護者に喜ばれる。保育の仕事は,このようでありたいと思います。
私たちは,「保育所保育指針」を味わい深く活用することを,いろいろと工夫してみました。このような工夫を重ねて,園を“明るい子育てサロン”にしていくことを,読者のみなさまに提案したいのです。
2000年 夏 執筆者代表 /荒井 洌
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- 明治図書