- はじめに
- 本書の使い方
- 第1章 これからの国語科の授業が目指すもの
- ――授業づくりのポイントと評価
- Ⅰ 国語科で育てる学力
- Ⅱ 国語科の授業改善の視点
- Ⅲ ICTの活用
- Ⅳ 目標と評価規準の設定
- 第2章 365日の全授業 3年
- 世界はうつくしいと(1時間)
- 続けてみよう
- 1 深まる学びへ
- 握手(4時間)
- 漢字に親しもう1
- [聞く]意見を聞き,適切さを判断する(1時間)
- 文法への扉1 「走って」いるのは誰?(1時間)
- 説得力のある構成を考えよう(3時間)
- スピーチで心を動かす
- 言葉1 相手や場に応じた言葉遣い(1時間)
- 学びて時に之を習ふ―「論語」から(2時間)
- 漢文の訓読
- 季節のしおり 春
- 2 視野を広げて
- 作られた「物語」を超えて(3時間)
- 思考のレッスン 具体化・抽象化(1時間)
- 論理の展開を意識して書こう(4時間)
- グラフを基に小論文を書く
- 漢字1 熟語の読み方/漢字に親しもう2(1時間)
- 3 言葉とともに
- 俳句の可能性(4時間)
- 俳句の創作教室
- 俳句を味わう
- 言葉の釣り糸を垂らす(2時間)
- 言葉2 和語・漢語・外来語/語彙を豊かに(1時間)
- 時代や世代による言葉の変化
- 情報×SDGs
- 実用的な文章を読もう(3時間)
- 報道文を比較して読もう
- 情報整理のレッスン 情報の信頼性
- いつも本はそばに
- 読書を楽しむ/「私の一冊」を探しにいこう(2時間)
- 羊と鋼の森
- 読書案内 本の世界を広げよう
- コラム ためになるってどんなこと?
- 季節のしおり 夏
- 4 状況の中で
- 挨拶―原爆の写真によせて(2時間)
- 故郷(5時間)
- [推敲]論理の展開を整える(2時間)
- 言葉3 慣用句・ことわざ・故事成語(1時間)
- 聞き上手になろう(1時間)
- 質問で相手の思いに迫る
- 漢字2 漢字の造語力(1時間)
- 5 自らの考えを
- 複数の意見を読んで,考えよう(3時間)
- ―正解が一つに決まらない課題と向き合う
- 考えを効果的に伝えよう(5時間)
- 多角的に分析して批評文を書く
- 漢字に親しもう3
- 文法への扉2 「ない」の違いがわからない?(1時間)
- 聴きひたる 初恋(1時間)
- 季節のしおり 秋
- 6 いにしえの心を受け継ぐ
- 和歌の世界(1時間)
- 音読を楽しむ 古今和歌集 仮名序
- 君待つと(2時間)
- ―万葉・古今・新古今
- 和歌の表現技法
- 夏草―「おくのほそ道」から(4時間)
- 俳句と俳諧
- つながる古典
- 古典名作選
- 7 価値を生み出す
- それでも,言葉を(4時間)
- 漢字3 漢字のまとめ/漢字に親しもう4(1時間)
- [話し合い(進行)]話し合いを効果的に進めよう(1時間)
- 季節のしおり 冬
- 合意形成に向けて話し合おう(4時間)
- 課題解決のために会議を開く
- いつも本はそばに
- 本は世界への扉(1時間)
- 天,共に在り
- 極夜行
- 読書案内 本の世界を広げよう
- 8 未来へ向かって
- 温かいスープ/アラスカとの出会い/律儀な桜/わたしを束ねないで(6時間)
- 三年間の歩みを振り返ろう(5時間)
- 冊子にまとめて,発表会をする
- 初日(2時間)
- 漢字に親しもう5
- 国語の力試し(3時間)
- *本書の構成は,光村図書出版株式会社の教科書を参考にしています。
はじめに
現行学習指導要領は,自ら学び自ら考えるなどの「生きる力」の育成を目指すという点や,学校教育法に示されたいわゆる学力の三要素である「基礎的な知識及び技能」「課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力その他の能力」「主体的に学習に取り組む態度」をバランスよく養うという点で21世紀を迎えて始まった教育改革の延長にあるものである。
1998年に告示された平成10年版学習指導要領は,「ゆとり教育」というキャッチコピーを文部科学省自体が付けたことにより評価は分かれてしまったが,覚える量を減らしてでも生徒が考える時間を確保し,主体的な学びを実現しようという画期的なものであった。間近に控えた21世紀に生きる子供たちを育てるという意図の明確に出た学習指導要領であった。
それに続く平成20年版学習指導要領,平成29年告示の現行学習指導要領は確実にその方針を受け継いでいる。これらの学習指導要領は,社会の変化に対応し,自らの課題に積極的に取り組み,自力で解決していく能力の育成を求めている。国語科でも論理的な思考力の育成を中心に据え,目的や場面に応じて適切に理解したり表現したりする能力を育てることに重点をおく改善がなされた。特に,生徒自身の手による課題解決を中心に据える授業を目指した。これらの改善は一定の成果を挙げることができたが,国語科においては,言語活動を目的と勘違いさせるようなメッセージが発せられたこともあり,授業改善は十分でない部分もあった。
さらに,その後の今日的課題として,Society 5.0の社会における学びの在り方,特に個別最適化への対応,GIGAスクール構想への対応,SDGs達成のための資質能力の育成など新しい課題が山積し,さらなる授業改善が求められているのである。今,学校現場では学習指導要領の趣旨を受け,新しい教育課題に対応した授業の実現のために,先生方の創意工夫に満ちた授業が展開されている。日本の教育は優秀で誠実な先生方の努力で支えられているのである。
本書は,光村図書の教科書教材を用いており,指導事項などは教科書の編集趣意に沿っているが,指導方法や生徒の言語活動には各執筆者たちの研究成果に基づく工夫が凝らされている。執筆に当たったのは21世紀国語教育研究会の会員の先生たちである。本会は東京都を中心とする中学校の管理職を含む教員による会で,発足から21年,会員数約150名の組織である。常に生徒の主体性を引き出し,国語好きを育てる授業を心掛けており,月に一度の定例会や年に一度の全国大会,執筆活動などで切磋琢磨している。本書の基本的な執筆方針は第一章に述べているのでご覧いただきたい。
本書が,中学校の国語科授業に携わる全国の先生方のお役に立てば幸いである。
編著者 東京女子体育大学名誉教授 /田中 洋一
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- 明治図書