- はじめに
- T 「作文」の視点で国語と算数を考える
- 1.「分析批評」(国語)との出会い
- 2.評論文はできた…
- 3.評論文は何のために書かせるのか?
- 4.でも,「もう書きたくはない」
- 5.算数にも評論文は応用できるのか?
- U 国語と算数をリンクする
- 1.2年生でもこれだけ書ける
- 2.低学年にレポートは書けるのか?
- 3.板書がヒントになる
- 4.板書作文は目的ではない
- 5.再現したくなる授業を創る
- 6.1時間で完成する板書作文
- V 板書作文1時間目のドラマ
- 1.板書再現作文第1回目の授業(2年「ひきざん」)
- 2.「書き方」の時間に算数の板書を残す
- 3.欠席のお友だちにお手紙を書こう
- 4.驚くべき文章量
- W 成長を遂げた板書作文2時間目
- 1.板書作文2時間目の授業(2年「ひきざん」)
- 2.相手意識を持たせる
- 3.板書作文のポイント
- X 書けない子どもがこうして書けるようになった
- 1.板書作文が苦手な子ども
- 2.板書にヒントを散りばめる
- 3.書き出しを与える
- 4.友だちの板書作文ノートを見学させる
- 5.書けたことを褒める
- 6.書くことが楽しくなる
- Y 授業で再現できる板書作文例
- 1.2年「かけ算」授業で再現できる板書作文例
- 2.2年「分数」授業で再現できる板書作文例
- 3.2年「三角形と四角形」授業で再現できる板書作文例
- 4.2年「直角」授業で再現できる板書作文例
- 5.2年「直角三角形」授業で再現できる板書作文例
- 6.2年「はこの形」授業で再現できる板書作文例
- Z 板書作文の評価
- 1.板書内容を減らした板書作文で評価をする
- 2.板書の隙間を再現できるか(評価)
- 3.板書作文評価指標
- 4.不十分な板書作文は授業診断にもなる
- 5.他教科にも影響する板書作文
- おわりに
はじめに
近年,「表現力向上」があるゆる教科で叫ばれている。それは,「言語事項の重視」が指導要領に盛り込まれたことにも影響をしている。
日本の子どもたちの表現力は,欧米諸国のそれと比べると,明らかに劣っている。しかし,その差は生まれながらにあるのではない。日本の小学校低学年の子どもたちの表現力は,実に豊かである。子どもらしい言葉や文章で,自分の思いを次々と表現することができる。また,どの教科でも子どもたちの手が次々とあがる。「発表したい」「書きたい」という表現に対する意欲も豊かである。ところが,高学年になればなるほど,子どもたちは表現することを苦手とするようになる。それは,なぜなのだろうか?
よく聞かれるのは,「高学年という発達段階だから仕方がない」という言葉である。この言い訳めいた言葉は,本当であろうか?
私は,間違っていると考えている。高学年でも,生き生きと活発に発表したり,ノートに自分の考えを表現したりする子どもやクラスを,いくつも目にしたことがあるからである。これらのクラスの子どもたちは,発達がゆっくりなのであろうか? もちろん,そんなことはない。
では,表現が苦手な子どもが増えてくる要因は何か? それは,教育営為に原因があるとしか考えられない。子どもが,表現することを楽しむような授業を低学年の頃から,繰り返し繰り返し経験をしていれば,子どもたちは高学年になっても,表現することを厭わなくなる。
欧米では,小さい頃から,クラス全体でディスカッションをする授業が繰り返し行われている。人と異なる考え方を持つことや,人と異なる考えを発表することに価値があるとされている。
日本でも,低学年の頃から,あらゆる場面で表現することを楽しむ授業を日々経験することができれば,子どもたちの表現力は,今以上に向上していくはずなのである。
本書は,算数授業の板書を基に学習作文をまとめる「板書作文」という表現指導法に焦点を当てた小学校2年生における提案である。低学年の子どもでも,高学年が驚くような文章を記述していくことができる。
低学年で十分に表現力を鍛え上げれば,欧米の子どもたちに負けない表現力を身に付けた高学年が育っていくはずである。
/尾ア 正彦
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