- はじめに
- T 実験の結果を考察することで言語活動を充実させる
- 1 実験の結果をまとめたグラフから思考させる
- ――5年「ものの溶け方」――
- 1 結果を考察する学習活動の充実/ 2 個別評定でPISA型思考を育てる/ 3 PISA型思考のテスト問題例
- 2 結論を導く型を教えることで論理的思考力を伸ばす
- ――6年「水溶液」――
- 1 従来の授業に欠けていた面を補う/ 2 授業の実践例――6年「水溶液」――/ 3 結論を書く型を教える
- 3 データをグラフ化し考察させる
- ――5年「天気による1日の気温の変化」――
- 1 科学的リテラシーを向上させる1つの授業モデル/ 2 測定させるシステムを作る/ 3 2日間のデータをグラフ化する
- 4 明確な評定が伸びやかな表現力を引き出す
- ――6年「消化」の意味を実感を伴った理解に!――
- 1 自由な表現と明確な評定/ 2 消化の意味を授業する/ 3 きちんとまとめることができれば合格ハンコ!
- U ものづくりを通して「PISA型思考」を育てる
- 1 電磁石「ベルの鳴る仕組み」を思考させる
- ――電磁石を応用したものづくり――
- 1 ものづくりの意味/ 2 ベルの鳴る仕組みは回路から考える/ 3 個別評定で脳はフル回転!/ 4 手で槌を動かす子どもの工夫/ 5 PISA型思考のテスト問題例
- 2 モーターの原理を「手作りモデル」で理解させる
- 1 科学的に思考させることの大切さ/ 2 モーターの構造を理解させる/ 3 モーター作りのポイント/ 4 モーターの原理を個別評定で思考させる/ 5 手作りモデルを使って説明する/ 6 PISA型思考のテスト問題例
- 3 うまくいかなかった原因を考えさせる
- ――向山・小森実践に学ぶPISA型思考の育て方――
- 1 小森栄治実践に学べ/ 2 うまくいかなかった原因を考える/ 3 応用して6年生に出題する/ 4 ものづくりを行ううえでの違い
- V 白熱した討論で言語活動を充実させる
- 1 教材と格闘する中で知的な発問が生まれる
- ――5年「天気の予報」・4年「月」――
- 1 5年「天気の予報は外国と協力しているのか」/ 2 4年「月は地球にとって必要なものか」
- 2 「雄花より雌花の多い新品種を作れば,人類が救われるのか」
- ――5年「花から実へ」――
- 1 花の観察を行う前に問う/ 2 先生提案に賛成か反対か/ 3 3日後,授業の続きを行う
- W 図鑑をすみずみまで活用することで言語力を伸ばす
- 1 シロツメクサの名の由来を授業する
- ――1年から6年まで――
- 1 植物・昆虫さがしから授業に入る/ 2 本物を教室に持ち込む/ 3 シロツメクサの茎はどこだ?/ 4 シロツメクサの名の由来/ 5 図鑑のイラストと説明を写す
- 2 子どもたちに「虫の観察の仕方」を指導する
- ――4年「春のしぜん」観察――
- 1 「イヌ◯◯◯」の意味を扱う!/ 2 「ナガメ」ってどんな意味かな?/ 3 虫の観察の仕方を指導する/4 注意事項を語る/ 5 外に出てみると/ 6 教室での指導
- 3 「葉桜」になったサクラの観察
- ――4年「春のしぜん」観察――
- 1 索引で早引き競争/ 2 オランダミミナグサ/ 3 葉桜のサクラを観察させる
- 4 身近な草花が素敵な作品に!
- ――簡単で楽しい「ミニ生け花」――
- 1 「ミニ生け花」セットの材料/ 2 「ミニ生け花」セットの作り方/ 3 ミニ生け花を使った採集の仕方/ 4 教室に帰ってからの観察と活動レパートリー/ 5 教室の素敵な展示に(参観日の飾りにも最適)
- 5 『わくわくずかん』と雑草の実物で感動の授業を創る!
- 1 楽器遊びも楽しめるナズナ編/ 2 楽器遊びと由来を考える楽しさがあるスズメノテッポウ編/ 3 名前の由来を考える楽しさがあるスズメノヤリ編
- X ノート指導は言語活動の基盤である
- 1 黄金の3日間で1年が左右されるノート指導
- 1 荒れた子どもたちを受け持って/ 2 最初の授業が最大のポイント/ 3 ノート指導における「黄金の3日間」/ 4 授業の終わりにノートの評定!
- 2 論理的な思考力を伸ばすノート指導
- 1 簡潔にまとめる技能は論理的思考力を伸ばす/ 2 ノート作りのポイント/ 3 見開き2ページに収まるように指示をする/ 4 必ず授業の終わりにノートチェックを行う/ 5 結果と結論の違いを意識させたノート指導
- 3 子どもに思考させるためのノート指導の原理原則
- 1 問題をノートに写させ,予想を選ばせる/ 2 理由をノートに書かせるときのポイント/ 3 理由の書けない子どもへの対応/ 4 ノートで思考する大切さを繰り返し語る
- Y 感動のある理科授業で言語活動を活性化させる
- 1 ダイナミックに生活を支えている「油圧・空気圧」を授業する
- ――4年「もののかさと力」の発展学習――
- 1 授業の主張――「もののかさと力」を感動的でダイナミックな授業にする――/ 2 ソフトな空気圧を利用したバス/3 空気圧のさまざまな可能性/ 4 空気圧を利用した産業ロボット/ 5 空気圧の弱点と水の性質の可能性/ 6 油(水)圧の仕組みと生活での利用/ 7 小さな力で大きな仕事ができる仕組みを実験で確かめる/8 巨大なシールドマシンを前進させる仕組みを考える/9 使用した模型――材料と作り方――
- 2 「星座早見」の有効な使い方
- ――「1時に1事の原則」で,ポイントを絞った指導――
- 1 1回めの「星座早見」の扱い方/ 2 「星座早見」を与える前の指導/ 3 サソリ座を写し取る間に個別指導を!/ 4 隣どうしの確認を徹底する!/ 5暗幕をして星座早見を!
- 3 小学5年新単元への対応「授業化のヒント」
- 1 水田の水は微生物の宝庫である/ 2 川の上流と下流による川原の石の違い
- 4 つまらない「炭」の学習を,感動的な授業に!
- ――6年「ものの燃え方と空気」の発展学習――
- 1 最先端の技術と結びつける/ 2 炭作りの原理を応用して作られた最先端素材カーボンの授業
- おわりに
はじめに
新学習指導要領では,「ものづくり」が謳われている。
しかし,ただあれこれ「ものづくり」をして楽しかった,面白かったというレベルで終わるならば,行う意味はたいしてない。
そもそも「ものづくり」は実感を伴った理解を重視するためのものである。
そのためには,「ものづくり」を通して,理科が生活に直結しているという事実を感じたり,あるいは,「ものづくり」を通じて,さらに思考を深めたりするものでなければならない。
思考を深めることは,言語活動の充実に他ならない。
このような視点で教材研究を行うと,これまでにない新しい切り口の授業が生まれてくる手応えを感じている。
たとえば,ベルやモーターという「ものづくり」をした後,なぜ,ベルが鳴るのか,なぜ,モーターは回り続けるのか,その原理を思考させる。
すると,子どもたちは真に喜びの表情を見せる。
モーターが回って喜ぶさまとはまた異なった,充実のある知的な表情を見せる。
これこそまさに実感を伴った理解ではないだろうか。
また,新学習指導要領では,実験の結果を考察させることが強調されている。これは,いわゆるPISA型思考を念頭に置いたものである。
わが国の子どもたちには,記述式の問題等に課題があるという指摘が背景にあるのだ。
確かに,上記の視点は,これまでややおざなりにしていた部分でもある。
とはいうものの,これまで誰も思いつかなかったような実践を創り出そうと躍起になっても,無理というものだ。
できるものなら,すでに誰かが実践しているはずだからだ。
では,どうするのか。
先人に学びながら,ややおざなりにしていたと思われる部分を配慮するという視点で臨むことである。
その証拠を示せといえば,小森栄治氏の実践がある。
小森氏と埼玉大学教育学部・清水研究室が共同で,蓮田南中学校の3年生を対象にPISA2006の公開問題とアンケートを実施したところ,フィンランドをはるかに凌駕する驚異的な数値を示した(詳しくは,『楽しい理科授業』(明治図書)2008年8月号)。
ちなみに,蓮田南中の3年生は,小森栄治氏が3年間指導した生徒である。
いうならば,世界に通用する小森実践なのである。
これが,先人に学びながら……という趣旨である。
さて,本書は,向山実践や小森実践に学びながら,言語活動の充実に配慮した最新の実践を中心にして執筆したものである。
ご批評いただければ幸いである。
2009年10月 /小林 幸雄
おかげで、理科初心者の私でも、子どもが楽しみにしてくれる理科の授業ができ、本当に感謝しています。
この本には、4月当初のノート指導の方法から、子どもがわくわくと感動するだろうなという授業、更に、研究授業のテーマにもなる数多くの最新の実践が含まれていて、読んでいて、私まで楽しい気持ちになってきます。
この本の内容を、どんどん授業していき、理科が大好きな子ども達を育てていきたいと思います。
この本と出会い、「こうすればよかったのか」と明るい気持ちになれました。どのような発問をすればよいのか、指示や説明が具体的に書いてあったので、私でもやれそうな気がしました。
また、ノートの書かせ方や子どもに実験結果をどのように説明させるかなど、具体的な方法も助かりました。
何度も読み返して実践したいです。お勧めです。