- まえがき
- 第1章 伝え合いのしくみと国語科
- 1 「伝え合い」のしくみと国語力
- 1−1 言葉で伝え合うとはどういうことか
- 1−2 国語の力の三つの要素
- 1−3 基盤的言語力
- 1−4 文脈的言語力
- 1−5 主体的関与
- 1−6 言語活動としての領域
- 2 国語科のあり方と学習指導要領
- 2−1 近年の「学力観の転換」とは
- 2−2 PISA型読解力
- 2−3 新学力観を支える「〜合う」
- 2−4 新学力観をめざす指導の「落とし穴」
- コラム 学習指導要領と社会の流れ
- 第2章 基盤的言語力
- 1 文字と表記の学習
- 1−1 大人は字をどう読んでいる?
- 1−2 知っているようで知らない仮名遣いのポイント
- 1−3 漢字の読み
- 1−4 漢字の形
- 1−5 漢字の成り立ち:「六書」
- 1−6 漢字と語彙の学習の現在の課題
- 2 語彙力
- 2−1 語彙(ボキャブラリー)の教育
- 2−2 「語の意味の違い」について考える
- 2−3 漢語・和語・外来語
- 2−4 イメージとの関連 ―「レモン」と聞くと?―
- 2−5 オノマトペ
- 2−6 国語辞典の利用
- 2−7 比喩とイメージ
- 2−8 直喩と隠喩。そして,比喩的なとらえ方
- 2−9 比喩とその周辺
- 3 文法力
- 3−1 なぜ「文法」?
- 3−2 接続表現
- 3−3 指示語
- 3−4 敬語の新常識―三分類と五分類
- 4 音声言語力
- 4−1 音声の特質(1)「あいうえお」ってどう発音している?
- 4−2 音声の特質(2)「あかさたな」はどう発音している?
- 4−3 間(ポーズ)
- 4−4 アクセントとイントネーション
- 4−5 速さ,大きさ
- コラム 硬筆:文字を書くことと「目」と「手」には関係がある?
- コラム 年少日本語学習者の教科学習
- 第3章 読むこと
- 1 「読むこと」全般に関わる文脈的言語力
- 1−1 表現から読み深める
- 1−2 語彙からの読み深め
- 1−3 文法からの読み深め
- 2 情報の取り出し・加工・関連づけ
- 2−1 内容面での情報の読み取り
- 2−2 パラフレーズ(言い換え)
- 2−3 図示化・描画読み・動作化読み
- 2−4 「読む」ことと文脈上の「予想」
- 3 物語文の文脈的理解
- 3−1 物語文の種類
- 3−2 時空,人物の設定
- 3−3 視点の設定
- 3−4 出来事の流れ
- 3−5 成立背景読み
- 3−6 「なぜ」
- 4 物語文の主体的読解
- 4−1 主体的な物語の読み深めとは
- 4−2 象徴読み
- 4−3 主題読み
- 4−4 「この後」読み,「もし」読み
- 4−5 音声から読み深める(音声読み)
- 5 説明文系の文章の文脈的理解
- 5−1 説明文のいろいろ
- 5−2 キーワードと要約
- 5−3 段落内部の構成―パラグラフライティング,文型,接続表現―
- 5−4 段落内部でのつなぎことば(接続詞類)の働き
- 5−5 段落構成
- 5−6 子どもの段落構成の読み取り能力
- 5−7 説明文での段落どうしの接続関係
- 5−8 情報伝達型説明文の読解の注意点(報告文,記録文,解説文)
- 5−9 意見文の読解の注意点(意見文,推薦文,鑑賞文)
- 6 説明系の文章における主体的関与
- 6−1 既にある知識の利用と「広げる読み」
- 6−2 主体的検証の読み:「批判的読み」(クリティカル・リーディング)
- 6−3 「書かれていないがわかること」
- 6−4 反応としてどう返していくか
- 7 その他の文種
- 7−1 様々なジャンル
- 7−2 俳句を例にした表現の考察:ブランク法,順序入れ替え法
- 8 主体化としての読書の広がり
- 8−1 主体的読書活動
- 8−2 スキャニング(探し読み)とスキミング(あらまし読み)
- コラム 複数の本文
- 第4章 書くこと
- 1 「書くこと」と主体的関与―「書く内容」について考えること
- 1−1 「発想」の指導のしにくさ
- 1−2 出発点としての「記憶」
- 1−3 記録とメモ
- 1−4 意見を「考える」技法―二観点法とシミュレーション法―
- 2 「書くこと」に共通する文脈的言語力
- 2−1 「書く」ことと「書き言葉」
- 2−2 段落意識
- 2−3 文脈を構成する接続表現
- 3 書くことと文種
- 3−1 観察記録文
- 3−2 意見文・説明文
- 3−3 手紙文,お知らせ文などの実用文
- 3−4 生活作文
- 3−5 文学的な文章
- 4 「書く」ことが終わってからの主体的関与
- 4−1 「推敲」の語源となった故事が示唆すること
- 4−2 子どもたちの実態
- 4−3 不整表現の傾向と対策
- コラム NIE(教育における新聞活用)でこんな力がつく
- 第5章 「話すこと」・「聞くこと」
- 1 「話すこと」・「聞くこと」と主体的関与
- 1−1 話すこと・聞くことの基盤にある「信頼感」
- 1−2 安心して話し合いができる場づくり
- 1−3 アサーション
- 1−4 しっかり聞けること
- 2 「話すこと」の文脈的言語力
- 2−1 話すタイミングの調整
- 2−2 文型
- 2−3 話型
- 2−4 公的発話(パブリック・スピーキング)
- 2−5 構成
- 2−6 話すことのノンバーバルコミュニケーション
- 3 「聞くこと」の文脈的言語力
- 3−1 聞く
- 3−2 「聞く力」として大切な「応答」
- 3−3 メモ力
- 3−4 確かめる,ただす
- 3−5 聞くことのノンバーバルコミュニケーション
- 4 主体的関与と「話し合い」
- 4−1 「対立を楽しむ会話」や「合意形成の話し合い」
- 4−2 ディベート
- 4−3 その他の話し合い活動
- 4−4 主体的な振り返り
- コラム 「話し合い」を通して学びを深める授業づくり
- 第6章 読解(理解)の授業論
- 1 「読むこと」の授業のしくみ
- 1−1 「読むこと」の授業とはどんな授業か
- 1−2 「読むこと」の授業過程
- 2 「読むこと」の授業のしかけ
- 2−1 基盤的な言語力を育てるしかけ
- 2−2 文脈的な言語力を育てるしかけ
- 2−3 主体的関与のしかけ
- 第7章 表現の授業論
- 1 「書くこと」の授業のしくみ
- 2 「書くこと」の授業のしかけ
- 2−1 発想−主体的関与のしかけ
- 2−2 構成−文脈的言語力のしかけ
- 2−3 記述−文脈的言語力のしかけと基盤的言語力
- 2−4 推敲−主体的点検としての文脈的言語力のしかけ
- 2−5 交流−再び主体的関与へのしかけ
- 3 「話すこと・聞くこと」の授業のしくみ
- 4 「話すこと・聞くこと」の授業のしかけ
- 4−1 話し手を育てるしかけ
- 4−2 聞き手を育てるしかけ
- 4−3 教室談話を共有する学びの集団へのしかけ
- コラム 日本十進分類法
- コラム 異文化コミュニケーションと身振り
- コラム 方言と共通語
- 第8章 授業展開と教師話法
- 1 教師の話すこと
- 1−1 教師の話す力
- 1−2 話すことによる「てびき」
- 2 教師の聞くこと
- 3 よりよい教師話法に向けて
- コラム 古典
- コラム 毛筆書写での漢字の字形指導―始筆の角度と左払い
- コラム 日本語を母語としない子どもにとっての「国語」
- コラム メディアリテラシー(media literacy)
- 附録 ワーク編
- T1 なにがかいてあるか,わかるかな?
- T2 ようすを あらわす ことばの いみ
- T3 どんな さかな?
- T4 くりからそうぞうしよう!
- C1 たいせつなところは?
- C2 どう読む?―音読について考えてみよう!
- C3 歌の言葉のよみとりをたのしもう!
- C4 メモを取ろう!
- K1 歌の言葉の読み取りをたのしもう!
- K2 物語の読み取り
- K3 質問はありますか?
- K4 伝統的言語文化
- 参考文献
- 資料 ヘボン式ローマ字一覧表
まえがき
「国語力」,すなわち適切な言語運用を可能とする能力は,すべての学習にとって基礎的な力です。しかし,具体的にどのような指導をすれば「国語力」をつけられるのか――これはなかなか難しい問題です。自然に習得する「母語」に関わる学習である点で,学びの道筋が見えにくいからです。
また,国語科の学力観も大きな転換点を迎えています。学習指導要領も新しくなりました。「新学力観」がある程度定着してきており,具体的な指導のあり方が問われるようになってきていること,全国学力・学習状況調査やOECDの学力調査(PISA)などで今の日本の子どもたちの課題が新たに明らかになってきたことなどもポイントとして挙げることができます。
このような「転換」の時代だからこそ,国語に関わるすべての先生が基礎知識として知っておくべきことを改めて明らかにしておくことが必要です。「教科書を教える」のではなく「教科書で教える」ことが重要だと叫ばれていますが,「何を,どう」教えるかを明確にしておく必要があるのです。
そこで,本書では,日本語や文学教育の必須の知識,「話す・聞く」「書く」「読む」力の構成,教材研究の基礎論,児童の実態とそれへの配慮,授業を構想する際の重要事項などをわかりやすくコンパクトにまとめました。国語を教えられる先生方(小学校を中心に幼稚園から中学校まで)や,教員を目指す学生や院生の皆さんにぜひ知っておいて頂きたいことです。多様なコラムも揃え,「広く,深く,わかりやすく」を目指したつもりです。研修,講習,大学や大学院でのテキストとしても使って頂けます。
本書では,第1章で「伝え合いの仕組みと国語科」として,国語科教育をとりまく全般的状況を述べます。次に,第2章「基盤的言語力」では言葉の勉強としての国語を教えるための基礎知識をまとめます。教壇に立つ場合にしっかり押さえたいことです。第3章では「読むこと」を考えます。学習指導要領では「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」の順ですが,「読むこと」は題材が言語表現として固定している点で様々な観点が出しやすいこと,学習としてこれまでにも焦点化されることが多かったこと,などを考慮して,領域の最初に扱っています。次に第4章では「書くこと」,第5章では「話すこと・聞くこと」をそれぞれ取り上げています。以上は森山が担当しています。それに続き,授業論として,実践的な観点から検討したのが第6章「読解(理解)の授業論」第7章「表現の授業論」第8章「授業展開と教室話法」です。以上は達富が担当しています。このように,本書は,教育の現場に学びつつ言葉の研究をしてきた森山と豊かな実践経験を活かして国語教育の研究を新たな観点から進めてきた達富のコラボレーションです。
また,つけるべき力を特化したワーク例を巻末に置き,拡大コピーをして使って頂けるようにもしました。姉妹編というべき実践的なワークとして,現場の先生方のお力を得て作った『基礎・基本から活用力まで 新国語力ワーク』低・中・高学年用(森山編・明治図書)もあります。ご利用下されば幸いです。
今回,原稿完成の段階で,文部科学省教科調査官,水戸部修治氏,同学力調査官,樺山敏郎氏,名古屋大学准教授,日比嘉高氏(文学読解の部分)に御一読頂き,有益なコメントと有難い励ましを頂きました。編集は明治図書及川誠氏にお世話になりました。また,平成20年度科研基盤研究(B)「小学校における文章記述力育成に関する基礎的研究」(代表者,森山卓郎)の研究援助も受けています。記して心より感謝致します(本書の誤りは著者に帰します)。
まだ至らぬ所も多いと思います。大方のご教示をお願い致します。また,本書が未来を背負う子どもたちの国語力向上に,少しでも役立ちますことを心より祈っております。
/森山 卓郎
国語教育に関する知識が細かく、とても丁寧に整理されています。
各項目について、実際の教材の扱いや具体例を入れてわかりやすく解説されているので、指導にも生かせそう。
国語を教えるものとして、是非とも読んでおきたい1冊。
おすすめします。