- まえがき〜あらゆる学習活動は、「書く活動」に帰結する〜
- T 論理的記述力を鍛える
- 一 基本文型と基本アウトライン
- 1 論理的な思考には書くことが必要だ
- 2 論理的記述力に必要な三つの知識・技能
- 二 「説明」と「論証」の文を書く
- 1 様々な学習で活用できる力
- 2 「説明」の文章構成
- 3 「論証」の文章構成
- 4 文章記述力は思考力を伸ばす
- U 基本文型とアウトラインで記述力を鍛える
- 一 「対比」で記述する社会科・理科……[授業メニュー01]
- 1 「対比」の基本文型
- 2 「対比」で書く社会科
- 3 「対比」で書く理科
- 二 条件を示して授業の「まとめ」を書かせる……[授業メニュー02]
- 1 五つの基本文型を使う場面
- 2 「読解」の授業を組み立てる
- 3 条件を示して「まとめ」の文を書かせる
- 4 授業で「論理的な記述力」を育成する
- 三 読解力を鍛える「授業のまとめ」を書かせる……[授業メニュー03]
- 1 「授業のまとめ」の三つのスタイル
- 2 読解力を鍛える「授業のまとめ」
- 3 「理由付け」は論理的な記述力を伸ばす
- 四 根拠の指摘と根拠の説明の指導を別にする……[授業メニュー04]
- 1 自分の考えを論理的に記述するための三つの能力
- 2 根拠の説明が難しい
- 3 「のはらうた」で説明の力をつける
- 4 活用する
- 5 本実践の指導の構想(指導案より)
- 五 絵や図の説明を書く……[授業メニュー05]
- 1 学習のまとめとして絵や図の説明を書く
- 2 六年社会「弥生時代の絵」
- 3 六年社会「鎌倉時代の武士の家の絵」
- 4 六年理科「植物の育ち方」
- 六 レポートを書く……[授業メニュー06]
- 1 レポートの三タイプ
- 2 記録型レポートの書かせ方
- 3 実験型レポートの書かせ方
- 4 調査型レポートの書かせ方
- V 発想力を鍛える
- 一 文をまねる……[授業メニュー07]
- 1 「ラジオ体操」
- 2 「ラジオ体操の朝」
- 3 文をまねる
- 二 物語の前史を書く……[授業メニュー08]
- 1 スピンオフ作文
- 2 「大造じいさんとがん」で習得した内容
- 3 活用する課題を設定する
- 4 活用力を育てる学習課題
- 三 脚本の物語化(ノベライゼイション)……[授業メニュー09]
- 1 「木竜うるし」第二場面
- 2 「変換」の授業
- 3 第二場面から始めたのは
- W 考え方を説明する
- 一 考え方の説明のしかたを教える……[授業メニュー10]
- 1 全国学習状況調査・算数B問題
- 2 考えた内容を言語化する力
- 3 平行四辺形の面積の求め方を説明する
- 4 向山型要約指導法の応用
- 5 どの考え方が一番簡単か?
- 二 文章題の解き方を説明する……[授業メニュー11]
- 1 説明する力と算数の学力
- 2 どの段階で説明するのか
- 3 文章題の解き方を説明する
- X 思考方略を教える
- 一 「考える力」の基礎は、対比だ……[授業メニュー12]
- 1 「かえるの四季」
- 2 考える力の基礎は「対比」である
- 3 「かえるの四季」(続き)
- 二 消去法を教える……[授業メニュー13]
- 1 全国学力調査問題に再挑戦
- 2 間違っている答を消去する
- 3 消去法を用いて考え方を説明する文章を書く
- 三 話者をめぐる推論……[授業メニュー14]
- 1 冒頭の一文で何を考えさせるか
- 2 「九マイルは遠すぎる」
- 3 話者の状況を考えさせる
- 4 話者の状況を検討する
- 四 クリティカル・シンキングを教える……[授業メニュー15]
- 1 クリティカル・シンキングとはどのような思考か
- 2 「東郷ビール」を探る
- あとがき〜文章を書くことは考えることだ〜
まえがき〜あらゆる学習活動は、「書く活動」に帰結する〜
「作文」ということば(用語)を学校教育で使うのは、やめようではないか。
第一に、指導要領及び指導要領解説「国語」には、「作文」ということば(用語)は一回も出てこない。指導要領で使われていないことば(用語)を学習活動で使うにはそれなりの理由が必要だ。そのような理由はあるのか。「これまで使われてきたから」というもの以外には見あたらない。
第二に、「作文」ということばには、どこか幼稚さやいかがわしさが伴う。大人の世界で「作文をする」という使い方には「本当ではないことを含めて書く」「表現だけで実質を伴わない」という否定的な意味あいを含む。学校教育の中だけで肯定的に用いられている。このようなことばを学校教育で使うのは望ましいことではない。
第三に、「作文」という学習は国語教育の中だけで用いられている。そのため、文を書く学習は国語科の役割だという過剰な意識が生まれる。他教科において文章を書くことはあまり意識されなくなるのだ。社会科や理科で「作文」と言われても、どこか違和感があるはずだ。
とりあえずは「書く活動」でも「文章表現」でもよい。とにかく「作文」ということば(用語)の使用をやめてみるのだ。すると、様々な教科で「書く活動」や「文章表現」の可能性が見えてくる。
中央教育審議会のまとめに、次のように記されている。
各教科等における言語活動の充実は、今回の学習指導要領改訂を貫く重要な視点
言語活動は、国語科だけでなく各教科等において行われる。それぞれの教科に「言語活動」に関する事項が示されている。これらの「言語活動」の中核となるのは、「書く活動」である。
なぜか。
第一に、文を書くことは考えることだからだ。考えがまずあって、それを文という形で記していくのではない。文を書くことで考えが生まれ整えられていくのである。(詳細は「あとがき」に記した。)
第二に、学習活動は「書く活動」を必ず含むからだ。ふだんの授業でも必ずノートに書かせるはずだ。発問に対する判断や理由を書かせたり、板書をノートに写させたりする。そうすることで考える力を伸ばそうとしたり、学習で扱う事柄を整理したりする。記録のために書く場合もある。
「言語活動」として示された「説明」にしろ「報告」にしろ「記録」にしろ、いずれも文として書くことが前提となる。最終的に「話す」という形態になるとしても、「書く」場面があるはずだし、必要だ。
第三に、「書く活動」がなければ教師が評価できないからだ。「読む」活動は、それだけでは評価できない。子どもが読めたかどうかは、何らかの形で表現させなければ教師は分からない。「聞く」活動も、同様である。聞けたかどうかは表現させなければ分からない。
表現には音声表現と文字表現がある。音声表現は消える。残そうとすれば、何らかの機材が必要だ。また、残した記録を再現するためにも手間がかかる。したがって、文字表現が評価の対象として簡便だし確実なものとなる。
このような理由から、「言語活動」の中核は「書く活動」なのである。
あらゆる学習活動は「書く活動」に帰結する
学習の帰結先を「書く活動」とすることで、どの教科の「言語活動」も授業として組み立てることが可能となる。このような「書く活動」に必要な力を本書では次のことばで示した。
記述力
「書く活動」を様々な教科で推進するためには、「作文」という国語科特有のことばでは間に合わない。だからこそ、「作文」ということばの使用をそろそろやめるべきなのだ。
記述力を伸ばすための基礎基本は次の三つである。
1 基本文型
2 アウトライン(基本的な文章構成)
3 思考方略(考え方)
この三つを意識して授業を組み立てることで、記述力を伸ばす授業づくりが可能となる。本書では、様々な教科で記述するための学習を「授業メニュー」という形で示した。
これからの各教科等における「言語活動」の充実にむけて本書が少しでも役立てば、筆者としてこれ以上の喜びはない。
/松野 孝雄
ぜひ,繰り返し読んでほしい。
松野氏の提案されている「記述力」は,
「記述力を伸ばすための基礎基本」
1 基本文型
2 アウトライン(基本的な文章構成)
3 思考方略(考え方)
を通して伸ばしていく。
本書にある授業メニューを追試することで,子どものノートや発言は大きく変わる。
ぜひ,松野氏の次なる単著を期待したい。