『岩�ｱ淳国語教育論集3 授業改善をめざす』の詳細情報

　勤務校で担当した教育実習生、各種の研究会でお会いした若手の先生方、講師として出講した大学で教えた学生など、若い方々は大いに悩んでいた。まじめな方ほど悩む。それはわるいことではない。迷いも悩みもないところでは、人は成長しない。

　原稿の依頼のあるたびに、わたくしは若い人たちを応援するつもりで文章を書いている。もとより高所に立っての物言いではない。ともに歩む者の一人としての提案である。

　折にふれて書いてきた拙稿の中から、授業論に関するものを選び、加筆・修正してまとめて一書とした。通して読むと重複している部分もあるのだが、どこからお読みいただいてもいいように、あえてそのままにしているところもある。本書は大きく七つの部分から構成されている。

　第一章は、国語教育の課題とあり方とについて記述している。誰もが授業の充実を願っているはずなのに、改善はなかなか実現しない。理想を語るのは簡単だが、現実の問題を解決するのは容易なことではない。

　第二章は、教師としての力量を高めるための心がまえと授業改善のための方策について記述している。指導者が自分の授業を振り返り、反省するのは大切なことであるが、改善のための手がかりがなければ、時間を空費するばかりである。

　第三章は、授業を組み立てるうえでの基本について記述している。授業づくりのいろはであるが、人に言われるまで気のつかないこともある。知っていれば簡単であるのに、知らないといつまでもノイズの除去ができないということは多い。

　第四章は、板書のしかたやノート指導、発問作成などについて記述している。こうした指導に熟達していくことが教師としての成長であり、授業を改善していく具体的な手立てなのである。

　第五章は、発展的学習のあり方や言葉の指導の事例などについて記述している。学習者が自分の学びを決定するのを重視する考え方がある。それには良いところもあるのだが、それだけでは教育は成立しない。学習者の世界の外にあることは、教員が適切に教え導いていかなければならない。

　第六章は、評価の改善について記述している。「何を教えるのか」「どのように教えるのか」ということをつきつめていくと、最終的には評価の問題につながっていく。評価することを必要悪のように考え、できるだけ考えないようにしている人もいるという。学習評価は、学習者のためにも、指導者のためにも、必要不可欠な行為である。難しい問題も多いが、工夫していかなくては進歩することもない。

　第七章は、第一節で学習院言語技術の会の編集した教科書について記述した。第二節でフランス・ドイツの国語教科書と日本の国語教科書とを比較し、その特徴について記述した。毎日使っているのにもかかわらず、教科書にあまり興味をもたない方もいる。しかし、教科書について考えることは、授業のあり方を考えることなのである。

　授業改善への道はいくつもある。そのときそのときによって、選ぶ道も進む速度も異なるだろう。大切なのは改善の意志を持ち続けることである。改善を志す方々が手にとってくだされば幸いである。

　　二〇一〇年一月　　　／岩�ｱ　淳