学年と学期に応じた 話すこと・聞くことの基本の能力の育成―中学校―

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話す力・聞く力の基礎・基本となる能力を育成する授業実践の提案

話す力・聞く力の基礎・基本となる能力の育成は、「話すこと・聞くことの言語表現様式に対応する能力」「話すこと・聞くことの言語行為のプロセスに対応する能力」の二つの観点から考える必要がある。学年別への対応や各学年の学期に応じた指導内容及び方法の実践事例集。


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ISBN:
978-4-18-398510-1
ジャンル:
国語
刊行:
対象:
中学校
仕様:
B5判 128頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

序 話すこと・聞くことの基本の能力の育成
第1学年 音声言語の基本を身に付けよう
〈第1学期〉
1 話し言葉の世界を楽しむには―音声言語の特徴を知る
2 要領よくメモを取るには―目的や場面に応じてメモを使い分ける
〈第2学期〉
1 味わいのある朗読をするには―声質を変える
2 目的に応じたスピーチ原稿を書くには―分量を変えてスピーチ原稿を書く
3 討論を上手に進めるには―スムーズに司会をする
〈第3学期〉
1 相手に伝わる報告をするには―思いのこもった体験報告をする
第2学年 互いの立場や考えの違いを比べよう
〈第1学期〉
1 明確に意見を述べるには―主張が明確なスピーチをする
2 相手の考えを詳しく聞くには―深まりのあるインタビューをする
〈第2学期〉
1 感情をこめた朗読をするには―登場人物の関係を押さえてアフレコをする
2 相手に伝わる説明をするには―図や表を使い効果的な説明をする
3 話の方向をとらえて話合いをするには―効果的な話合いの方法を鼎談で考える
〈第3学期〉
1 場にふさわしいコメントをするには―的確なコメントの方法を知る
第3学年 互いに評価し合い,活用しよう
〈第1学期〉
1 聞き手の心を引き付けるには―人格文や人格語を生かす
2 情報を活用して説明するには―目的に応じて要約する
〈第2学期〉
1 転調や間を生かして話すには―聞き手の理解を意識したナレーションをする
2 解説者になるには―自分の考えを明らかにして解説する
3 レポーターになるには―内容が明確に伝わる調査報告をする
〈第3学期〉
1 主体的な討論者になるには―自分の立場を大事にした公開討論会をする
新学習指導要領小・中学校「話すこと・聞くこと」系統表

序話すこと・聞くことの基本の能力の育成

   文部科学省教科調査官 /井上 一郎


  1 話す力・聞く力の基礎・基本


 本書は,『話す力・聞く力の基礎・基本』(明治図書,2008)で述べた理論に基づいて行った授業案集である。特に,新学習指導要領で示した「話すこと・聞くこと」の領域の内容を踏まえ,中学校の国語科における学年別への対応や,各学年の学期に応じてやっておけばよい内容を構想して編集した。

 話す力・聞く力の基礎・基本となる能力の育成は,二つの観点から考える必要がある。

 A 話すこと・聞くことの各種の言語表現様式を取り上げて話したり,聞いたり,話し合ったりする「話すこと・聞くことの言語表現様式に対応する能力」

 B 言語表現様式に応じて実際の表現行為を行うことができる「話すこと・聞くことの言語行為のプロセスに対応する能力」

 新学習指導要領においても,このような考え方に立って,内容構成及び系統化を図っており,本書も,それらに基づいて,国語教師が取り組めばよいと考えられる実際の系統化を図った。以下,これらの概要について述べることにする。

 話すこと・聞くことの基礎・基本となる言語表現様式には,次のようなものが考えられる。


 (1) 【音読・朗読の様式】

  @ 音読・朗読

  A 読み聞かせ

  B ストーリーテリング

  C ナレーション,アフレコ(声優),ボイスオーバー,など

  D 劇(人形劇,ぺープサート,紙芝居,朗読劇,群読,影絵劇,総合劇,など)

 (2) 【独話の様式】

  @ 説明,解説,ポスターセッション,など

  A 紹介,案内,推薦,など

  B 連絡,伝言,アナウンス,通知,広報,など

  C 感想,意見,主張,演説,弁論,助言,説教,忠告,提案,評論,論説,コメント,批評,など

  D 報告・報道・ルポルタージュ(体験報告,観察報告,調査報告,研究報告,実況中継,など)

  E 説得,依頼,命令,など

  F 宣伝,プレゼンテーション,デモンストレーション,など

  G 放送,ラジオ,テレビ,など

  H 講義,講話,講演,など

  I 文句,苦情,言い訳,弁明,など

 (3) 【対話の言語活動】

  @ 挨拶,対談,鼎談,座談,など

  A 相談,協議,会議,審議,ブレーンストーミング,バズセッション,など

  B 討論・討議,フリートーキング,ディベート,パネルディスカッション,フォーラム,など

  C 交渉,など

  D 進行,司会,キャスター,など

 (4) 【聞く活動】

  @ 質問,質疑応答,など

  A インタビュー,聞き書き,など

  B 面接,など


 また,「話すこと・聞くことの言語行為のプロセスに対応する能力」として基本となる話すこと・聞くことの学習活動のプロセスは,次のように展開することに対応する能力である。


 【第一段階 スピーチ原稿の作成】

  1 導入(準備)  ⇒ 2 課題設定  ⇒ 3 学習計画 ⇒  4 取材(1)  ⇒ 5 主張決定  ⇒ 6 構成 ⇒  7 取材(2)  ⇒ 8 叙述  ⇒ 9 音声化(通し読み)  ⇒ 10 推敲(1)

 【第二段階 音声化】

  11 シミュレーション  ⇒ 12 推敲(2)  ⇒ 13 音声化のための記号付け ⇒  14 リハーサル  ⇒ 15 推敲(3)  ⇒ 16 発表会 ⇒  17 モニターリング  ⇒ 18 相互評価・自己評価


 「話すこと・聞くことの学習活動のプロセス」は,発表原稿を作成する段階と,実際に音声化し発表する段階の二つに分かれる。聞くことについても,聞くべき準備と,音声化して聞くことは,これらに準ずる。話し合うことは,課題設定や学習計画などは同様だが,実際に当たっては,役割担当や時間配分などを記した進行表の準備や,実際の運営の司会,発表者・討論者,参会者などの協力,計画に沿った話し合う能力が求められる。


  2 学習指導要領で求めた基礎・基本


 2008(平成20)年3月28日,新しい学習指導要領が告示された。新学習指導要領において示した基礎・基本は,次のようなものであった。

 〇 指導事項を,言語活動例を通して指導するようにすること。その際,それらの言語活動を行う能力を身に付けることができるよう継続的に指導することになっている。

 〇 指導事項は,話すこと・聞くことのプロセスに沿って,話題設定や取材を行った後に,話すこと,聞くこと,話し合うことの言語活動を行うように示している。

 (1)(指導事項)

  @ 話題設定や取材に関する指導事項

  A 話すことに関する指導事項

  B 聞くことに関する指導事項

  C 話し合うことに関する指導事項

 (2)(言語活動例)

 〇 言語活動例は,報告や紹介,対話や討論,説明や発表,意見などの話すことや,司会や提案者などの役割を果たすことを求めている。

 〇 発表を聞いての質問や助言,意見,表現への活用,などの聞く力も求めている。


  3 本書で取り上げた能力と授業


 学年別及び学期別に対応するためには,授業の指導内容及び方法が明確でないと成果が上がらない。そこで,「〜するためには」と目的を明確にして構成した。実際には,次のように構成した。内容とそれぞれの授業でのねらいとなる主な能力は,次のようである。


 第1学年 音声言語の基本を身に付けよう

 第1学期 話し言葉の世界を楽しむには要領よくメモを取るには

   ↓

 第2学期 味わいのある朗読をするには目的に応じたスピーチ原稿を書くには討論を上手に進めるには

   ↓

 第3学期 相手に伝わる報告をするには


 第2学年 互いの立場や考えの違いを比べよう

 第1学期 明確に意見を述べるには相手の考えを詳しく聞くには

   ↓

 第2学期 感情をこめた朗読をするには相手に伝わる説明をするには話の方向をとらえて話合いをするには

   ↓

 第3学期 場にふさわしいコメントをするには


 第3学年 互いに評価し合い,活用しよう

 第1学期 聞き手の心を引き付けるには情報を活用して説明するには

   ↓

 第2学期 転調や間を生かして話すには解説者になるにはレポーターになるには

   ↓

 第3学期 主体的な討論者になるには


 本書は,佐賀,熊本,福岡,などの国語教育カンファランスの研究会員によって行った実践集である。中学校の多忙さを言い訳にせず,研究会員は,毎月の例会において長きにわたって真摯に研究を重ねた。編者として,研究会員にお礼を申し上げたい。

 新しい時代や社会に対応するとともに,生徒が抱える課題に正面から取り組むために,中学校教師は,専門性に裏打ちされた高度な授業を行う能力を身に付けなければならない。本書で取り上げた内容と指導方法の工夫を生かし,生徒の知的な発見を促しながら,心に届くような授業を展開してもらいたいと思う。

 最後になったが,本書刊行に当たっては,明治図書の石塚嘉典氏,松本幸子氏にお世話になった。表現は簡潔だが,深い謝意とともにここに記しておきたい。


  2008年6月

著者紹介

井上 一郎(いのうえ いちろう)著書を検索»

文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・国立教育政策研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官・学力調査官。国語教育学者。随筆家(ペンネーム・高橋信一)。奈良教育大学助教授・神戸大学教授を経て,2001年4月から現職。現在は,自ら学ぶ主体的な学習者の育成を基軸に,教科を貫く国語力の体系化と系統化を目指す。2008(平20)年版学習指導要領作成に従事。全国的な研究会「国語教育カンファランス」及び自主公開セミナー「国語教育公開講座」を主宰。各種の作文・読書感想文コンクール中央審査委員を務める。文学・絵画の探訪や視察調査のために,イギリス,フランス,イタリア,ドイツ,スイス,オーストリア,オランダ,ベルギー,スペイン,ポルトガル,フィンランド,カナダ,アメリカ,オーストラリア,ニュージーランド,アジアなどを歴訪。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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      明治図書

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