- はじめに
- 1 マドリガーレ ……モンテヴェルディ
- 2 管弦楽組曲第二番 ……J.S.バッハ
- 3 《四季》より「春」 〜ヴァイオリン協奏曲集「和声と創意の試み」から〜 ……ヴィヴァルディ
- 4 おもちゃの交響曲 ……L.モーツァルト
- 5 トルコ行進曲付きソナタ ……W.A.モーツァルト
- 6 アイネ・クライネ・ナハトムジーク ……W.A.モーツァルト
- 7 フィガロの結婚 ……W.A.モーツァルト
- 8 交響曲第五番「運命」 ……ベートーヴェン
- 9 交響曲第九番「合唱付き」 ……ベートーヴェン
- 10 トルコ行進曲 ……ベートーヴェン
- 11 魔弾の射手 ……ウェーバー
- 12 舞踏への勧誘 ……ウェーバー
- 13 魔王 ……シューベルト
- 14 子守歌 ……シューベルト
- 15 軍隊行進曲 ……シューベルト
- 16 ヴァイオリン協奏曲ホ短調 ……メンデルスゾーン
- 17 練習曲 op.10より「革命」 ……ショパン
- 18 子供の情景 ……シューマン
- 19 流浪の民 ……シューマン
- 20 椿姫 ……ヴェルディ
- 21 天国と地獄 ……オッフェンバック
- 22 ハンガリー田園幻想曲 ……ドップラー
- 23 連作交響詩《わが祖国》より「ヴルタヴァ(モルダウ)」 ……スメタナ
- 24 美しく青きドナウ ……ヨハン・シュトラウス二世
- 25 交響詩 中央アジアの草原にて ……ボロディン
- 26 ハンガリー舞曲集 ……ブラームス
- 27 乙女の祈り ……バダジェフスカ
- 28 動物の謝肉祭 ……サン=サーンス
- 29 スケートをする人びと ……ワルトトイフェル
- 30 カルメン ……ビゼー
- 31 展覧会の絵 ……ムソルグスキー
- 32 はげ山の一夜 ……ムソルグスキー
- 33 くるみ割り人形 ……チャイコフスキー
- 34 交響曲第九番「新世界より」 ……ドヴォルザーク
- 35 ユーモレスク ……ドヴォルザーク
- 36 タイスの瞑想曲 ……マスネ
- 37 ノルウェー舞曲 ……グリーグ
- 38 ペール・ギュント ……グリーグ
- 39 ツィゴイネルワイゼン ……サラサーテ
- 40 熊蜂の飛行 〜歌劇「皇帝サルタンの物語」から〜 ……リムスキー=コルサコフ
- 41 ヘンゼルとグレーテル ……フンパーディンク
- 42 愛のあいさつ ……エルガー
- 43 ジムノぺディ ……サティ
- 44 惑星 ……ホルスト
- 45 ペルシャの市場にて ……ケテルビー
- 46 ピーターと狼 ……プロコフィエフ
- 47 森の歌 ……ショスタコーヴィチ
- 48 道化師 ……カバレフスキー
- 49 トランペット吹きの子守歌、トランペット吹きの休日 ……ルロイ・アンダーソン
- 50 歌曲集「四季」 ……滝 廉太郎
- おわりに
- コラム ―― /安藤 應次郎
- クラシック音楽の地位
- 長寿の作曲家
- レオポルト・モーツァルトの功績
- モーツァルトとウェーバー
- 夭逝の作曲家
- オペラの楽しみ方
- クラシック音楽を聴くにはどうすればいいの
- クラシック音楽は難しい?
- 作曲家の生計
はじめに
音楽鑑賞とは、何の予備知識もなしに、その場で作り出される音の響きに全身全霊をゆだねるのが良いとされています。もちろんそれはそのとおりなのですが、もしも毎回そのような態度で臨んだなら、あまりにもキャッチすべき情報が多くて疲れてしまうか、静かな曲では眠くなってしまうのが落ちでしょう。また、全体の構成を予め知っておけば、あとどの位で終わるのかも予測できて、何とかがんばって聞いていられる――というような場合だってありますよね。そうした意味で、これから聞こうとする曲について知識を持っておくことは、かなり重要だと言えるでしょう。
それから、曲には作者がいて、そのメッセージが込められているのが普通です。しかし絵や文学とは違い、音はその意志を具体的に、細部まで伝達するという機能を殆ど持っていません。それが音楽の良い面でもあるのですが、全く違う受けとられかたをされる場合もあるのです。詞をともなう作品の場合は、まだしも伝わり易いものですが、それとて外国語だったり、作曲者がカットしていたりする場合は困りますね。オペラなど、物語のある作品では、演出家が勝手に筋や情況を変えてしまうことさえあるのです。こうした意味からも、作者たちの生涯や性格、その曲が作られたいきさつ0000を知っておいて、損はありません。
この本は、全くその曲を聞いたことがないというかたのために書かれています。そして、どちらかと言うと、音楽に興味を持っていなかった人のためのガイドです。ですから、専門的な言葉は、いっさい使用することを控えました。実は、これまでにもレコードやCDの解説文を含めて、数多くのそうした解説書が出版されているのですが、困ったことにそうした本の多くは、楽譜が載っていて、これだけで音楽になじみのないかたは、本を閉じてしまうのです(コンピューターがダメな著者は、数字と横文字を見ただけで閉じてしまいます)。ですから、本書では言葉だけで全てを語ろうと努めました。
もうひとつ、これまでの解説書は、主として評論家――つまり学問的に音楽をとらえようとする先生がたによって書かれてきました。すると、曲の内容については最高に正確なのですが、自ら演奏面にタッチしていないかただけに、実際の演奏に当たっての問題点などが不足します。かと言って、完璧に演奏サイドの先生がたがお書きになると、技術面に片寄りすぎて専門性が強くなったり、失敗談のような読み物としての性格が強くなったりする特殊な本が出来上がるでしょう。また、音楽は同時期の文学や美術と深いつながりを持っており、文化史からの視点も欠かすことはできません。
そうした意味で、筆者は決して一流ではありませんが、作曲・指揮・ピアノ演奏・オペラ制作・司会・解説・執筆・イラスト・美術評論・教育などの分野で、すでに三十年以上活動してきました。自ら「一流ではない」と認めていますが、超一流のかたがたと常にご一緒する機会に恵まれてきたのです。十八歳というかなり早い時期から音楽の現場に関わったおかげで、明治生まれの先生がたとの協演もありましたし、音楽高校や幼児への教育も含めて、若い音楽たちと常にふれあっているのも強味だと思っています。とくにこれからその曲を演奏しようと思っている人たちに、この本は良い参考書となるでしょう。
とは言え、著者の語学力や情報収集能力の不足による誤りや不備が見られるかも知れません。とくに音楽史における事実は、日毎に刷新されているものです。今後は新しい情報に気を配り、また読者のかたからのご指摘も賜りたいと存じます。
音楽は、録音や録画で楽しむこともできますが、本来は実際の演奏を見ながら、その時間を共有するものです。また、一緒にでかけた仲間と、意見や感想を述べあう社交上の機能も持っています。どうかこの本を、そうした場所に忍ばせて持って行って、たとえばパートナーに、あたかも自分が発見したように解説なさることも、推奨します。もしかするとお相手のかたもこの本を持っていて、意気投合することがあるかも知れませんね。
音楽が、あなたさまの生活に、潤いとほんのちょっとの高尚さを加えることを願っています。
/青島 広志
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- 明治図書