- まえがき
- 本書の使い方
- 第1章 子どもの絵と造形指導
- 1 知らない間に指導者の苦手意識が蓄積?
- 2 指導者として上から目線で制作を強制している?
- 3 指導に対していつも不安?
- 4 言葉かけに悩んでいませんか?
- 5 子どもが達成感を持ち自発的に活動するには?
- コラム1 キャラクター絵ばかり描く子にはどう対応する?
- 第2章 指導者の発想を転換しよう
- 1 子どもの成長に「絵」はかかせない!〜指導と言葉かけの基本〜
- (1) 子どもはなぜ絵を描くの?
- (2) 創造力を育てるということは?
- (3) 自由に絵を描くとは?
- (4) 模倣ばかりする子には?
- (5) 子どもが意欲的に生き生きと造形活動するには?
- (6) コンクールに入賞する子が多いことは果たして重要?
- (7) 大人が見てよくわかる作品がよい作品?
- 2 まずは子どもの絵の発達を知ろう!
- (1) 錯画期
- (2) 前図式期
- (3) 図式期
- (4) 初期写実の時期
- (5) 擬似写実の時期
- (6) 決定の時期
- コラム2 家庭での造形活動の指導はどのようにするの?
- 第3章 画材と準備
- 〜用具や環境のポイント〜
- 1 画材スペースをつくって活動しやすい環境を
- 2 用具を準備する際のポイント
- クレヨン
- 鉛筆
- 色鉛筆
- 水彩絵の具
- アクリル絵の具
- 粉絵の具
- 水生ペン・油性ペン
- 接着剤
- はさみ
- コラム3 家庭での造形あそびの環境づくりは?
- 第4章 指導が楽しくなる造形表現22選
- FILE1 私のお気に入りボックス
- FILE2 粘土に絵を描こう
- FILE3 木工用ボンドのステンドグラス
- FILE4 エッグアート
- FILE5 シュレッダー紙の造形あそび
- FILE6 野菜の七変化
- FILE7 どんな形が生まれるかな?
- FILE8 いろんなものを並べてみたら
- FILE9 アルミホイルで造形あそび
- FILE10 〇△□がいっぱい!
- FILE11 世界にたった一つの花
- FILE12 毛糸のお友達
- FILE13 マカロニアート
- FILE14 世界の国からこんにちは!
- FILE15 絵本の世界を表現しましょう
- FILE16 せっけんに絵を描こう
- FILE17 私の世界
- FILE18 夜空をスクラッチすると
- FILE19 Let’sスタンピング
- FILE20 想像上の生き物を作ろう
- FILE21 お弁当を作ろう
- FILE22 落ち葉を使用して
- コラム4 子どもの気持ちは絵に表れる?
- 第5章 障害児や情緒不安のある子の芸術療法
- 1 障害児の造形表現とは
- 2 導入と準備と言葉かけ
- 3 個人記録シートについて
- 4 実践を始めるにあたって
- (1) 潜在能力を引き出すために
- (2) ありのままの受容が大切
- (3) 指導者もともに楽しんで
- (4) 楽しく参加できるように配慮しよう
- (5) バックグラウンドはしっかり認識
- (6) 環境を整えることが成功への鍵
- (7) 保護者の介助は最小限に
- 5 芸術療法を意識したプログラム題材5選
- FILE1 ペンを使って描画表現しよう
- FILE2 マカロニを使用して
- FILE3 綿棒アート
- FILE4 お気に入りコラージュ
- FILE5 フィンガーペインティング
- コラム5 別のことを始めてしまう軽度発達障害の子の指導方法は?
- コラム6 「お受験」のための絵の指導は?
まえがき
「学習指導要領」が改訂されて,たとえ教師にとって指導しやすい内容のものとなったとしても,昨今の少子化,そして子どもの多様性も含め,絵の指導と造形活動というものが教師にとって実は難解な教科の一つになってしまっているのではないかと危惧しています。指導力をあまり必要とされないと思われている「造形あそび」や,美術教育の新しい流れである「鑑賞教育」に傾倒してしまっているのが今日の現場の実態ではないでしょうか。
保育所,幼稚園,小学校の先生方とお会いしてお話をお伺いすればするほどに,「現実は,子どもを取り巻く日常のさまざまな情勢の多様化に対応するのが精一杯」と本音をこぼされるのです。大学にて造形を専門に勉強されていない,もしくは苦手意識をお持ちの先生方にとって子ども達とともに造形表現を行うことには不安や苦痛が伴い,それゆえに有形無形のさまざまな制約がそこに存在していることを痛烈に実感いたしました。そして軽度発達障害のある子ども達の造形を通したセラピー的なアプローチの実践方法などが盛り込まれたものがあるとよいのではないか,という思いのたけを編集部の石塚嘉典氏が快くご快諾下さり,『保・幼・小連携!楽しく遊べる造形表現78選』に続き,この度『授業力アップ!楽しくできる絵の指導と造形活動の実践―教師のスキルアップをめざす言葉かけのポイント』が出版の運びとなりました。
造形表現は,描画や制作を通してのノンバーバルなコミュニケーションとして子ども達の魂のさけびを聞くことができる大切な教科の一つであると確信しています。指導者の言葉かけ一つで子ども達の活動にも変化が芽生えます。したがって指導者側が苦手意識や不安を持ってしまうと,子どもの創造性も育むという大切な部分が萎縮し削がれてしまいかねません。子ども達とラポール(信頼関係)を形成するための大切な教科の一つということを認識した上で,指導者側も楽しく授業を行い,また指導力がアップすることにおいて少しでもお役に立てばとの思いにて使用しやすいものになるように心がけました。
末筆になりましたが,本書の企画・編集にご尽力いただきました明治図書出版編集部の石塚嘉典氏,木村悠氏に心より感謝申し上げます。
2009年3月 梅の香が匂う奈良にて /今井 真理
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- 明治図書