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夏休みも終わり、学校生活が始まりました。3学期制を取っている学校では、2学期の始まり、2学期制を取っている学校では1学期のまとめに入る時期ですね。
私の住む大分県では、9月から10月にかけて運動会をするところも多く、9月は夏休みモードから、運動会モードへと一気にシフトチェンジしていく時期でもあります。
1学期に築き上げてきた学級の規律や人間関係も、この夏休み明け9月のスタートで若干の変化があり、仕切り直しをするにはよいタイミングです。
今回は、前回の最後にお知らせした、「リーダーになりたいのになれない子」への対応とその行動の変容を、実践編、理論編で解説したいと思います。
リーダーになりたいのになれない!
夏休み前に定着してきたこの「多段階信託変更リーダー選出システム」ですが、リーダーを経験した子や、上位者で名前が発表された子は自信をもち、どこか安定感が出てきます。
それに比べ、ちょっと怪訝な顔をしていたり、また自信をなくしているのが「リーダーになりたいのになれない子」層の子たちです。
これらの子どもたちは今、どんな心境でしょうか。
リーダーになりたいのになれない子たちの心境
毎回、自分の名前を書けども書けども、リーダーになれない。それどころか、上位者にさえ名前が出てこない。自分では、自分のことをやる気があっていいと思っているのに、だれも自分を選んで(信託して)くれていない。どうしてだろうか?
“勢い”ではリーダーになれない?!
これまでのリーダー選びは、次のような流れがオーソドックスなところではないでしょうか?
これまでのリーダー選びの流れ
- まず、やりたい子が立候補
- さらに、この子にやってもらいたいという子を誰かが推薦
- そこで名前が挙がった子が、「もし、自分が学級委員長になったらこうしたい、こんなクラスにしたい」などの思いを発表
- うつぶせになって挙手か、紙に名前を書いて選挙
もっと強引な決め方だと、先生が指名、なんてのも聞いたことがあります。
このような仕組みの場合、やる気をアピールできたり、ちょっと面白いキャラクターだったりすると、勢いや雰囲気で、その子がリーダーに決定されることが多いのが特徴です。
結果、クラス全体を見渡す力や、リーダーシップがなくてもリーダーになれていました。実は、リーダーになれず不満をもつ子たちというのは、これまで、こういった「勢いでリーダーになってきた層」の子たちなのです。
助言のタイミングを見極めよう!
「先生、この仕組みでリーダーを決めるのは不満があります」と自分がリーダーに選ばれないことを直訴してくる子もいますが、はじめは、「何で? これほどみんなの思いが形になるリーダー選びの仕組みはないやん」と言って、あしらいます。
この時点では、本人は自らを振り返らず、まだ外に原因を求めているので、仮に助言をしても、この子の心の中に言葉がすっと入っていきません。
タイミングは、「先生、どうしたらいいでしょうか?」と聞いてきた時です。こう聞いてきた子どもたちは、注意や忠告を受け入れて自らをよくしていこうと思っています。他の場面での指導でも同じですが、この時が助言をするタイミングだと思います。
つまり、今の自分の姿や在り方に疑問をもった時、自らの姿を他人の姿に映すことや、客観的に自分を見るようにできた時が、一番のタイミングです。
子どもたちの心に届く“魔法の言葉”
それではさっそく、子どもたちの心に届く魔法の言葉をご紹介しましょう。
まずは、今のリーダーのほめ言葉から入ります。そして、それに比べて自分は具体的にどうすればいいか、という二段構えになります。
いいかい、一番大事なことをまず言うよ。この仕組みでは実はだれもがリーダーになれるんです。だから、絶対にあなたもリーダーになれます。
しかも都合のよいことに、改めて新しいことを考えて挑戦するのでなく、うまくいっている人の真似をするだけでリーダーになれるんです。つまり、今リーダーで選ばれている○○さんの真似をすればいいだけです。
○○さんは、いつも人に優しいし、人と話をする時ていねいな言葉を使うし、人がいやがることを言わないでしょ。それに時間を守るし、忘れ物もしない、係りや当番の仕事は真面目に取り組む、授業中は人の話をよく聞いているし、時々発表もする。そして休み時間に一人の人がいたら「一緒に遊ぼう」と誘っているしね。そうそう、いつも笑顔が絶えないのもリーダーにとって大事かもよ。
そう考えると、今の自分やこれまでリーダーになれないからこの仕組みが嫌だと言っていたあなたはどうだろう? 人に親切だったか? 優しい言葉を掛けていたか? 時間を守っていたか? 忘れ物をしなかったか? 係りや当番の仕事を一生懸命にしたか? 授業中人の話をよく聞いているか? 発表もしているか? 休み時間、一人の子を見つけ誘っているか?
この中に当てはまることがいくつかあれば、まずそこを直していけば、きっとあなたもリーダーに選ばれるよ。
子どもが劇的に変化する!
ここに気づけば、あとは子どもは劇的に変わっていきます。これまで、周りに目がいっていなかった子が、周りに目を向け、何か困っている子に優しく声を掛けるようになったり、一生懸命当番活動に取り組んだり、明るく笑う雰囲気をつくったりと、だんだんリーダーにふさわしい言動を取れるようになってきます。
すると、次第に上位者にも名前が出てくるようになり、リーダーに選ばれるようになります。これは、先生が注意して心を入れ直すという、他律的動機ではなく、自らが自分を振り返り、自らを変えていこうとする自律的動機に基づいて行動しているので、変化も大きいし、持続して変化していけます。
“やりたい理由”を見ればリーダーの資質が一目瞭然!
信託者を記入する時に、その理由も書かせるようにしています。そうすると、その子がどういった思いで、その信託をしているかがよく分かります。
その中で、自分で自分の名前を書いている子の理由を見れば、その子がリーダーにふさわしいか、そうでないかが一目瞭然です。
まず、リーダーになる子は、「みんなの役に立ちたいから」「みんなで楽しく過ごしたいから」「やさしく注意ができるから」と、周りのことを考えたコメントが書かれています。
それに対して、リーダーになれない子は「席替えをしたいから」「やってみたいから」「リーダーになったことがないから」と、自分がどうしたいという欲求レベルのコメントが書かれています。
自分のことよりみんなの幸せ!
子どもはまず、「自分が〜」というところから思考がスタートするのですが、こういったリーダー選出システムでリーダーを決めていると、周りを見る視点が拡がってきます。
個人の欲求から、班や小集団がよりよくなることが自らの幸福にもつながる、それがさらに大きくなると、クラスのみんながいかにして楽しく、豊かな時間を過ごせるかというところまで、考えることができるようになります。
これは、リーダーとして一番大事な視点で、より多くの人が幸せになれるかということを常に考え行動できることがリーダーの資質であり、個人の欲よりも、集団全体がよりよくなることを欲する方が上回っています。
自らと、自分の周りの幸せだけを考えているリーダーは、実はリーダーとしてふさわしくないのです。
集団全体の幸せが自分の幸せにつながる、という感覚をもった子どもたちが世の中に出ていった時に、大きな価値観の変化が起こるのではと、期待しています。
さて次回は、今回のことをさらに深めた、リーダーの資質について言及していきたいと思います。
- 本連載で紹介の「多段階信託変更リーダー選出システム」の集計サイト「アースリーダーズクラブ」
http://www.earth-leaders.com/