- 学級リーダー
- 学級経営
教育界では、年度当初の3日間を「黄金の3日間」と言ったり、2学期はじめの3日間を「シルバーの3日間」と言うことがあります。その後の学級運営を決定づけるのがこの期間だからですが、これは多くの先生が実感していることではないでしょうか?
さて11月、この月にも目立たないけれど重要な山場が隠されています。というのは、この11月の学級経営がうまくいけば、残りの三分の一、3月までクラスは落ち着き、充実した状態を維持できるからです。しかし、逆に11月がうまくいかないと、ここでクラスを持ち崩してしまうことがあります。
勝負の11月―安定か崩壊かの分かれ道?!
11月の重要性を経験的に分かっている先生方は、クラスが一つになれるような仕掛けをこの時期にもってきて、この隠れた山場を乗り切り、年度末に向かって充実した時間を加速させていきます。これをあまり意識していないと、なんだかクラスに締まりがなくなり、コントロールが難しい後半戦になってしまいます。今回は、クラスの安定を維持できるかを左右する2学期後半のリーダー選びにスポットをあててみましょう。
この時期にくると、子どもたちもリーダー選びの仕組みに慣れ、リーダーとそのリーダーを支える周りの子も育ってきて、担任としてはとてもやりやすい状況になってきます。
1学期始まってすぐ、この仕組みが動き始めたころは、クラスの半数くらいの子が入れ替わり立ち替わりリーダーを経験し、いろんなタイプのリーダーをみんなが経験しました。そのうち2学期になると、実際にリーダーとして資質のある子何人かが、交代でリーダーに選ばれるようになってきます。さらにその後は、安定したリーダーが、ずっとかわらずリーダーを務めるようになります。
リーダー交代劇の舞台裏
この仕組みのよいところは、自分が信託した(選んだ)リーダーが調子に乗って、リーダーらしからぬ言動を取った時、すぐに信託する子を変更することができるところです。ただし、自分一人の変更でリーダーが交代するかは分かりません。
2学期に入ってから、数か月でリーダーが3回も交代したことがありました。この時のリーダー交代の模様を、背後にある子どもたちの心理とともに読み解いてみます。
【女子が一致団結してリーダー交代!】
2学期に入ってから、A男が安定して票を集め、長い間リーダーになっていました。ところが、ある日の給食時間のことです。私が電話のため職員室に行っている間、給食を食べ終えたA男が、教室の後ろで他の食べ終わった子と暴れていたそうです。食事中にほこりは立つし、うるさくてお昼の放送が聞こえない状況だったと、女子から報告を受けました。そこで、みんなの前で、「リーダー、先生がいない間、教室で騒いでいたらしいけれど、それはリーダーとしてもだけれど、よくないよ」と注意しました。
ところが別の日、今度はプリントの印刷のため、給食時間に私がちょっと席を外したすきに、またしてもA男が同じような行動を取ったのです。「慢心」でしょうか? みんなから安定して選ばれているから、ちょっと好き勝手やっても大丈夫だろうと思ったのでしょうか?
これを不満に思った女子が、リーダーを交代させるため、知恵を出し合ったのです。女子はリーダーになりたい子が多く、女子の中で票が割れていました。A男は男子の票を主に集めていたので、それに対抗するため、今の時点で一番票を集めているB子に、女子全員が信託先を変更したのです(アースリーダーズクラブの集計結果を、信託先の部分だけ隠して常に教室に貼ってあるので、どの子の票数が多いかはクラスの誰もが確認することができます)。すると、集計の結果、B子がリーダーに選ばれました。
【女子の意見が割れてリーダー返り咲き】
B子は初めてリーダーになったので、張り切ってクラスのことを考え、いろんな案を実行していきました。しかし、B子も、自分に都合のよい席替えをしたり、人に注意する割に授業中の私語が多かったり、忘れ物があったりしました。
すると女子の間で、B子もリーダーとしては不適格だなという思いが出てきたようで、ある時、数名の女子が「今度はC子に信託先を変更します」と私に言ってきました。そこで集計システムで結果を出してみると、やはり女子の票が割れ、再びA男がリーダーに返り咲いたのでした。
【わずか1日のリーダー】
ここで落ち着くかなと思ったのですが、女子は、A男がリーダーをするのがよほど嫌だったのでしょう、直前までリーダーをしていたB子も、その日のうちに新たな対抗馬、C子に信託先を変更したので、今度はC子がリーダーになりました。結果、A男はわずか1日でリーダーを交代することになったのです。
【リーダーを支える役割に】
それから、A男の言動が変わってきたのです。人から信頼されていたことを裏切った代償は大きかったと実感したのでしょう。前にも増して友達に優しくなり、新リーダーのC子を支える役割をするようになりました。
マインドマップで見るリーダーの資質
子どもたちは、どのような視点でリーダーを選んでいるのでしょうか。それを視覚化できる方法があります。「マインドマップ」という言葉をご存知でしょうか。マインドマップは、脳で考えることをアウトプットし、まとめ整理するスキルがあります。これを使って小学3年生の子どもたちに、「リーダーとは?」というお題で書いてもらった結果、以下のような項目が出てきました。
子どもたちが書いた項目を、下記にまとめてみます。
リーダーとしてふさわしいのは?
やさしい/注意ができる/けんかをとめる/いじわるしない/友達を助ける/言葉づかいがいい/なかよし/頭がいい/たくましい/強い/うそをつかない/がんばる/みんなのことを考えている/かしこい/ちゃんとしている/時間を守る/ルールを決める/正直者/すごい/信頼されている/しっかりしている/頼りにされている/好き嫌いしない/かっこいい/意見をまとめる/話し合いを進められる/みんなのためにがんばる/できなかったことを生かせる/人がやらないことを引き受ける
リーダーとしてふさわしくないのは?
いじわる/こわい/暴力をふるう/ひとりじめする/いやな言葉を言う/うそをつく/傷つく言葉を言う/嫌われている
3年生なりにとてもよく考えてリーダーを選んでいると思います。また、リーダーとしての振るまい、在り方についてもみんなで考えており、みんながよくなろうとする力が働くと、クラスが本当によくなります。
リーダーの資質……これは大人の世界にも当てはまるな〜と思い、自省しつつ今回は終了したいと思います。
- 本連載で紹介の「多段階信託変更リーダー選出システム」の集計サイト「アースリーダーズクラブ」
http://www.earth-leaders.com/