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街に流れるクリスマスソング、ちょっと早い大雪、流行語大賞、今年もあと少しで終わりになります。そんな師走の候、いかがお過ごしでしょうか。3学期制を取っている学校では、学期末PTA(授業参観、学級懇談)、2学期の成績処理、通知表の所見欄作成、さらに子どもへの年賀状書きなど、文字通り、「師(本来はお坊さんですが広い意味で先生も師なので)、走る12月」となっているのではないでしょうか?
さて今回は、学級集団づくりの新たな提案、「多段階信託変更リーダー選出システム」による学期の締め方について、お知らせしたいと思います。
システム定着で子どもたちがリーダーシップを発揮
1学期、手作業による集計でリーダーを決めていたこの仕組みも、この仕組みの元となった「アースリーダーズクラブ」のWeb上のサイトで、学級担任が集計できるページをつくっていただき、ずいぶん取り組みやすくなりました。
アースリーダーズクラブホームページ
http://www.earth-leaders.com/
「集計システム」の活用方法(本連載第5回)
http://www.meijitosho.co.jp/eduzine/earthleaders/?id=20141020
「考えるより、やってみた方が早い!」という、本連載をご覧になっている先生方により、各地でこのシステムを活用した取り組みが試されているようです。
最近、私のクラスで、11、12月の誕生会とクリスマスお楽しみ会を兼ねた会をしたいという子どもからの申し出がありました。私が一言「じゃあ、リーダーお任せします」と言うと、リーダーが司会をし、リーダーに指名された子が、それぞれ黒板書記とノートの記録書記になり、素早く学級会が始まり、あっという間に、いつ、どこで、何を、どういう風にするかが決まりました。そして、「先生、お楽しみ会でケーキを作りたいのですが、ケーキのスポンジと、生クリーム、トッピングのチョコレートなど、先生がまとめて買ってきてもらっていいですか?」と相談をもちかけられる顛末となりました。ちなみに小学校3年生の事例です。
先生がコントロールする部分は当然ありますが、子どもの自治的・自主的な集団活動が意欲的に取り組める状態で進められ、成果を上げています。
リーダーは中間管理職ではない!
このシステムで選ばれたリーダーの役割を、クラスの約半数の子どもが経験しています。これまでのように、学期に1人か2人という学級委員長の仕組みでは、ここまで多くの子どもたちがリーダー体験をすることができません。ましてや、この仕組みの大事な点は、判断や決定権を、担任が子どもに委ねる割合が大きいことです。席替えをはじめ、クラスで何かする時の決定権をリーダーの子どもに委ねているため、これまでのリーダーにありがちな、地位と責任は与えているけど権力は与えていない、中間管理職的な役ではなく、責任もある代わりに、できる権限も与えています。
そんなリーダーになった子どもたちは、リーダーになることのステイタスを感じ、他の子がリーダーになった時には、純粋に「いいな」とか「すごいな」と思えるようで、これまでの仕組みで選ばれたリーダーと違い、尊敬されるという経験をしたようです。
この、他の子から尊敬されたり、一目置かれるという経験は、子ども時代に必要なことだと感じました。人から尊敬された経験をもつ子どもは、他の子どもをも尊敬できるようになるからです。愛された経験が、人を愛することにつながるのと同じように、クラスのリーダー選出という仕組みで「自尊感情」が身についていきます。
「いつでも変更可能」の魅力
◆一人の変化がクラスの変化に
私のクラスでは、このWeb集計のおかげで「いつでも変更可能」という仕組みがフルに生かされ、新しくリーダーになった子どもが自分のわがままでリーダーシップをちょっとでも取ったら、その日のうちにリーダー交代となることが当たり前になっています。
そうすると、リーダーになった子どもは、選ばれたうれしさとともに、身を引き締めてみんなの役に立ちたいという考えをもつようになってきました。
これは、個人が個人としてよくなりたいということはもちろん、集団が集団としてよくなっていこうとする大きな力を生みます。これがこの仕組みの最も素晴らしいところだと実感しています。
◆「影のリーダー」でチャンス到来
ある期間リーダーを経験した子が、自分が表に立ってリーダーをするより、自分と同じ考え、気が合う子をリーダーにさせて、自分は表には出ずに、影になっててクラスをまとめようとしたことがありました。票をたくさん集めていれば、その子が選んだ子にすべてその票が上乗せされるので、選ばれた子がリーダーになる可能性が高くなります。
こうすることのメリットは、リーダーをこれまでしたことがなかった子、やりたくてもやれなかった子にそのチャンスが回ってくることです。結果、その子が素晴らしいリーダーシップを発揮した場合、こんな才能と、リーダーシップがこの子にあったんだというみんなの驚きがあります。
反対に、リーダーをやってもらったけど、まだその器ではなかったかなと確認できることもあります。
さらに、多くの票を集めているその影のリーダーのそのやり方が嫌になったら、信託先を他の子に変えると、その影のリーダーも票を失い、効力を発揮できなくなります。
「信託する」ことは対等な関係
誰かを信託する、誰かに任せるということは、上下関係のように思われますが、実はフラットな関係なのです。任せた(託した)子、任された(託された)子は、いつでも力関係として対等で、お互い本音が言い合えるという人間関係がそこには存在します。
結果、本音がぶつかり合うことで、集団として、リーダーとして何を大事にしていくかという価値観が、磨かれていくことになります。
当然、少人数の幸せより、多くの人が心地よく思える環境を提案できる子が、自ずとリーダーになっていきます。
しかも、その集団にとっての理想のリーダー像を、リーダーが交替しながら実験的に試していけるので、多くの失敗経験をみんなで共有できるし、それを集団としての財産にしていけます。
子どもが成長していく課程で、他の集団に属した時、その集団の集団としての力が未熟だった場合、この経験はその集団をよくしていく力になっていくことと、確信しています。これまでにない、そんな力を養っていけるこの仕組みのポテンシャルはまだまだあると思います。
学期末の「リーダー会議」で集団がバージョンアップ!
学期の終わりに際して、これまでリーダーを長期間経験した子による、「リーダー会議」をもつと、クラスの自主性、自律性がますます強固になります。
一度リーダーを経験した子は、その責任と、みんなからの要望をどう形にしていくかというプレッシャーを同じように経験しているので、質の高い共有体験があります。
単独のリーダーだと、自分個人の考えや好み・偏りが出てくるのを、複数のリーダーが集団として修正していけると、さらに個々の思いが形になりやすい集団ができます。
2学期の締めと、3学期に向けての学級集団づくりの提案を、この「リーダー集団」に担任が託すことができると、子どもはさらに進化、深化していくことと思います。
その際、担任の心得として大事なものは、「この子たちなら絶対にできる! 絶対にいい集団づくりをしていける」と信じ切って、その思いを言葉や態度で表していくことです。大人の本気な信頼、尊敬を感じた子どもが期待に応えないはずはありません。
個としてのリーダーから、リーダー集団が誕生すると、学級経営なんて楽なものになります。すべて、リーダーに「任せた、頼む、信用している」という思いを伝えるだけで、すべての子どもが生き生きと過ごしていける人間関係、集団づくりができていきます。
その入り口としての、この「多段階信託変更リーダー選出システム」、ぜひあなたのクラスでお試しください。うまくいかなかった時の相談も承ります。
では、よい2学期の締めくくりと、年の瀬をお過ごしください。
- 本連載で紹介の「多段階信託変更リーダー選出システム」の集計サイト「アースリーダーズクラブ」
http://www.earth-leaders.com/