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2月も中旬にはいると、1年間のまとめの時期となります。これは、学習面でのまとめも然り、生活面でのまとめも然りです。3月は、6年生の卒業に向け、全校が何かとあわただしく動き始めるので、学習の進度としては、この2月中に目途を立てることが、担任の先生にとっての押さえどころとなります。
集団づくりの上では、来年度新しい学年、クラスになったとき、いい意味でも悪い意味でも、過去を引きずらないようなまとめ方をすることが大事になってきます。
3学期は、次の学年の0学期としての位置づけもあります。1年間付けた力を評価しつつ、来年期待される役割、自らの成長をちょっと意識させます。担任離れできない子どもをつくらないのが一番のポイントです。
さて今回は、前回の続き、「当番活動と係活動」の取り組みを通して、「担任離れ」できる子どもたちが育つ様子をご紹介しましょう。
「係活動」が「当番活動」にマイナーチェンジ?!
少し復習しましょう。クラスが集団としてうまくいっているかいないかを計るバロメーターとして、「係活動」と「当番活動」を見る視点がありました。
係活動……クラスのために、自分がやりたい仕事をする
当番活動…クラスのために、みんなで、平等、順番に仕事をする
当番活動は、役割とそれをする期間がはっきりしているので、やり方をきちんと指導すれば、大概うまく機能します。
しかし、係活動については、決めた当初はうまく機能していますが、時間が経つにつれ停滞期が現れる傾向があります。
その一番の原因は、当番活動と係活動の意味を押さえていない決め方です。よくあるのが、先生が係を提案し、その人数配分も最初から決めている進め方です。そうすると、自分がやりたくない係になった子にとっては、本来、自分がやりたいことをして集団に貢献するはずの係活動が、実はやりたくない仕事になってしまい、結果的には当番活動になってしまうからです。
また、最初はやる気があったけれど、時間が経ってくるとそこまで意欲が持続せず、停滞期を迎えるということもよくあります。そんなとき、このリーダー選びのシステムがあれば、その停滞期も解決できます。
係活動活性化の特効薬はリーダーの投入!
この仕組みのポイントは、リーダーにクラスの運営的なことの実権を委ねている、という点です。形だけのリーダーでなく、実際に何かを提案し、決定する権限があるということです。
責任も権利もあるリーダーが決定することは、クラスの中で絶対です。もし、みんなが納得できないような提案をした場合、そのときはそのリーダーを信託しなければいい、それだけの話です。
だから担任はひとこと、「リーダー、係活動が活発に動いていません。どうかしてください」と言えばいいのです。結果、リーダーを中心に話し合いをもち、今の活動の見直しをしたり、係と係で人をトレードしたり、新しい係をつくったりし、係活動は活性化してきます。
「当番活動」が「係活動」にバージョンアップ!
ここで、1つ理想的な集団の定義を考えてみしょう。ある集団の中で、それぞれの人の「すべきこと」と「やりたいこと」が一致している状態。これが実現できれば、それはみんなにとって一番の幸せではないでしょうか。
このことをクラスにあてはめてみると、義務であった当番活動が、自らやりたくてやる係活動に変わるという状態。これが理想の形です。
2学期、実際に私のクラスで起こった2つの出来事をご紹介しましょう。
私の勤務する学校は、昼休みの後に掃除をします。教室環境は子どもの成長にとって大事な要素であると考える私は、授業中の机間巡視のときは、常々ほうきを持って、教室の床にゴミが落ちていると掃くようにしてます。ある日、それを見ていた子どもが数人、「先生、いつも先生がゴミを掃いていますが、私たちも掃除係をつくって休み時間に掃除してもいいですか?」と言ってきました。
一方、2学期の配り係は、ある男の子1人だけの係だったため、配り物が多いときは、ちょっと時間がかかっていました。すると先ほどとは別の子が「先生、○○くんが1人で配り係をしていますが、大変そうなので、今やっている係に加えて配り係も手伝っていいですか?」と申し出てくれました。
言い出した子は、2人とも過去のリーダー経験者でした。この感覚がもっとたくさんの子どもたちに増していったとき、当番活動でさえ、自分がやりたいことの1つであるという喜びに変わる瞬間が現れると思います。
掃除係を提案したり、配り係を手伝える子どもたちは、それを実証しているのだと思います。
子どもがもっている2つの本音
子どもたちには、大人の世界のようにお金による利害関係が存在しません。大人のようにお金や利権に縛られて、嫌なことを嫌と言えないことはありません。当番活動は、ときには、「できればしたくない」「さぼりたい」という本音も出てきます。
しかし逆に、「この集団の中で、自分が何か役に立つことをして貢献したい」という本音も同時にもっています。リーダー選びシステムで、自分が本当に信託できる1人を選んでいく、そして、それが多段階で積み上がって選ばれたリーダーが、その集団の意志決定をしていく、ということは、その集団に属する子どもたちが「『すべきこと』を『やりたいこと』に変えていける力」を獲得したのだと、思います。
より多くの子どもたちから信託されるリーダーは、より多くの子の心に寄り添い、すべきこととやりたいことを融合させていく資質をもっていると思います。
リーダー選びシステムなら「自治的集団」が自然にできる!
冒頭で「3学期は、担任離れできない子どもをつくらないのがポイント」と書きました。学年が上がりクラスも新しくなったのに、何かあると旧担任のところに相談に行ったり、愚痴を言いに行ったりする子どもがいるのは、旧担任、新担任両者に問題があります。
新担任は、旧担任以上の情熱をもって子どもに接しなければなりません。先生としての学級経営の「やり方」は人それぞれで、それぞれのやり方に長所があると思います。ただ、教師としての「在り方」として、常に襟を正し、全力投球しなければ、それは子どもに伝わります。
旧担任は、状況や環境が変わっても、そこで自分らしさを発揮しながらさらに学んでいく態度をとれるだけの力を、子どもの身につけさせて送り出さなければなりません。多くの担任が、3学期に自然とそのような準備をやっています。しかし、このリーダー選びのシステムをやっておけば、日ごろから担任から離れてリーダーを中心とした自治的集団づくりができているので、自然と担任離れができています。
願わくば、このシステムでリーダー選びをする先生が増え、小学校、中学、高校とすべての学校でこの方法が浸透したなら、大人の世界も、もっと「すべきこと」が「やりたいこと」に変わる世の中になるのになと想像しています。
- 本連載で紹介の「多段階信託変更リーダー選出システム」の集計サイト「アースリーダーズクラブ」
http://www.earth-leaders.com/