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「遊ぶ授業」の先駆者
朝日新聞2013年3月24日の連載記事「教育あしたへ−先生の挑戦7」で、「遊びながら学ぶ授業」という学習ゲームを授業が記事として掲載されました。そこに登場するのは北海道砂川市立砂川中学校の平山雅一さん。それに私立聖学院小学校の田村一秋さん。もう一人、京都橘大准教授の池田修さんです。いずれも「学習ゲーム研究会」(代表・上條晴夫)で活躍してくれた現場実践家メンバーの先生たちです。
その中の一人、池田さんは次のように紹介されています。
「池田は『遊ぶ授業』の先駆者だ。教師になったのは1987年。人気ゲーム『ドラゴンクエスト3』が翌年に発売された。『ドラクエは僕のライバル』。手間がかかって面倒くさいのに、子どもは目を輝かせてやる。悔しかった。『俺の授業も「早く受けたい」って言わせたい』」。ドラクエ、ファイナルファンタジー、グランツーリスモなどのゲームを自分でも試した。過去に考え出した学習ゲームは30種を超す」
なかなか格好いい紹介になってます。
辞書ゲーム「たほいや」
池田さんが得意ネタの一つにしているのが「たほいや」です。大元はイギリスの古典的家庭ゲーム(dictionary)でした。それがイギリスのテレビ番組で有名になり、日本の深夜番組でも「たほいや」という名前で評判をとりました。このテレビを見た中学校教師になったばかり池田さんが「(へ〜、こんな遊びがあるんだ)と仲間と遊んでいたが、(ん? これ辞書の使い方の授業になるんじゃない?)と思い、即実践」したのが始まり。
辞書を使ったゲームのやり方(骨格)はおよそ以下の通りです。
- 数名ずつのグループを作ります。
- 一人が出題者になり、国語辞典からある言葉を選び紹介します。
- 他のメンバーは回答者となり、その言葉の意味を予想し紙に書いて出題者に渡します。
- 出題者は集まった回答者の予想と自分の用意した本当の意味を混ぜて発表します。
- 回答者はその中のどれが本当かを当てます。
詳しく知りたい方は『たほいや』(フジテレビ出版・1993)がAmazonで売っています。池田さんはこの「たほいや」ゲームの中学校実践を、わたしが編集代表を務めていた『授業づくりネットワーク』(学事出版)1997年2月号に発表します。
おそらくこれが学校教育に「辞書ゲーム」を導入した最初の報告だろうと思います。このゲームは大変に評判がよく、何名もの方が追試実践を発表しています。実践者によって目的が「作文」「論理的思考」「言語感覚」などと変化するのが面白いです。その度に実践の形もちょこっとずつ変わっています。拙著『論理的な表現力を育てる学習ゲーム』(学事出版)にも収録されていて、追試数は相当数になるだろうと考えています。
先駆者の「学びのしかけ」論
池田さんは自身のブログで何度か「たほいや」に言及しています。その池田さんの教師から見た「学びのしかけ」論が、文字通り大当たりです。長いですが、全文引用します。
「体験を主体とした学習の指導案づくりは、実は矛盾した指導案になる。とっても練り込んで何処からでもかかってこい、という綿密な指導案づくりが一方で必要でありながら、ざくっと枠だけつくってあとはその場で対応というものでもある。どちらも必要だ。なぜならば、子どもたちがどのように動くのか、その先を予測して対応を考えておく必要があるからであり、考えても無駄なほど子どもたちは豊かに行動するからである」
「だが、ここに『ゲーム』という枠を入れると、ある一定のルールに縛られることで、子どもたちが自由に動くことができるようになる。そしてその枠の中で教師は目的をもって指導することができるようになる」