- 「学習ゲーム」アイデア
- 算数・数学
学習ゲーム研究の帝王が切り拓いたもの
1988年に「法則化・学習ゲーム研究会」が立ち上がります。
確かに部分的には活用されていたものの授業研究の表舞台にはほとんど登場することのなかった学習ゲームをイッキにメジャーにしたのは、同研究会代表の横山験也氏です。
当時、巷では横山氏を「学習ゲームの帝王」と呼んでいました。
その成果は『教室ですぐ役立つ学習ゲーム』(明治図書)に集約されています。多くの学習ゲーム教材を作っていますが、横山氏の主張はここに集約されています。
第1章「教科書問題を学習ゲーム化する」での主張は次の通りです。
- 算数などの教科書問題を積極的に学習ゲーム化すべし。
- 学習ゲーム化のよさは「子どもたちの学習への意欲が旺盛になる」「子どもたちの頭が学習内容の方向に向く」という2点。
- 学習ゲーム化は子どもは問題の内側に立つから熱中を引き起こす。
シンプルな提案ですが、当時としては画期的な提案でした。
学習ゲームアイデア「指計算」
算数ゲームの定番あそびの一つに「指計算」ゲームがあります。
計算する数字を「指」で示すだけの単純なゲームですが、子どもたちは計算に熱中します。教師が示す「指問題」を見逃さないよう「目」で必死に追いかけます。
- 出題する式を決める。(例:3+5)
- 無言で最初の数(3)を示し、指を隠してから大きな声で「たす(+)!」。
- 同様に次の数字(5)を示し、指を隠してから大きな声で「は(=)!!」。
- 正解の数(8)を言えた子を大いにほめる。
- 次の問題を続ける。
始業のチャイムが鳴っても、おしゃべりに夢中になっている子がいます。そんな子どもでもこの「指計算」を始めると、視線を教師の方に集中させます。
低学年の子どもたちが喜ぶゲームです。指を使うため、10までの計算に制限されるものの、「足し算」だけでなく「引き算」「かけ算」の学習にも活用できます。
中学年の場合は「割り算」。たとえば、「9÷3」のような計算。「7÷2」のような余りのある計算でも可能です。高学年は「最小公倍数」「最大公約数」で使えます。「2と3の最小公倍数は」や「8と12の最大公約数は」のような2桁数字も可能です。
見かけは単純ですが、応用範囲は案外大きなゲームと言えます。
「指計算」ゲームの学びのしかけ
このゲームの面白さは「指による出題がさっと消える」ところにあります。
指を隠す場合はさっと引っ込めるというパフォーマンスができるといいです。たとえば、ちょっと似たゲームにフラッシュカードという幼児向けの学習ゲームがあります。
フラッシュカードは閃光のように一瞬だけ見せるカードのことを言います。
カードをめくりながら単語を読み上げていきます。たとえば、いぬ→うさぎ→うし→うま→さる→ねこ→きりん、という具合です。幼児にはその速さが面白いようです。
こうすることで、右脳が活性化し、絵と言葉が直感的に結びつき、一目見たものをイメージでとらえ、苦労することなく物の名前や言葉を覚えるようになると言います。
ただし留意点として「カードを速くめくる技術」が必要とされています。
このフラッシュカードを補助線として「指計算」ゲームを考えると、教師がゆっくりていねいに説明をする学習と違って、脳の直感的な部分を刺激するところに妙味があるのではないかと推測されます。「学びの多様性」という点で、これまでの学校教育の定番的な学習スタイルと異なっていることが、特に低学年児童を興奮させると考えます。
アメリカなどの教育学では最近、学びの多様性を、どう担保するか、ということの重要性が言われています。学習ゲームの記事中で言うのもおかしいのですが、大きな「学びのしかけ」として考えると、学習ゲーム一辺倒にならないバランス感覚が大事です。