- 「学習ゲーム」アイデア
- 社会
シリーズ「学習ゲーム」創刊のころ
2003年夏、シミュレーション&ゲーミングの国際学会が千葉県で開催されました。わたしも「学習ゲーム研究会」の仲間と共にこの国際学会に参加し、「教室の中のシミュレーション&ゲーミング」というテーマで日本の現状をスピーチしました。
最後に課題を2つ指摘しました。「リフレクション」と「ファシリテーション」です。すると助言者の先生から「世界の現状も全く同じです」とコメントをいただきました。帰りのバスの中で仲間の先生たちと「ついに我々の研究も世界と同期しちゃったね」と盛り上がったのを覚えています。
この時のスピーチ内容は、国際学会の学会誌にも英文で掲載されています。
なぜこの時わたしがスピーチすることになったのか。それは仲間の先生たちと作った「シリーズ・学習ゲーム」(国語・算数・理科・社会)がきっかけです。当時このシリーズと共に約10冊の学習ゲーム本を上梓しました。当時は「飛ぶ鳥を落とす」勢いでした。
社会科学習ゲーム「クエスチョンゲーム」
その「シリーズ・学習ゲーム」の1冊、『楽しみながら思考力を鍛える小学校社会科の学習ゲーム集』(2001)に、山形大学教育学部の江間史明氏が「社会科の学習ゲームにおける思考」という原稿を書いています。その原稿では「クエスチョン(質問)ゲーム」「ランキングゲーム」「ディベート」という3つの学習活動が検討されています。ここではその中から「クエスチョンゲーム」を紹介します。
事例は「都道府県名3クエスチョンゲーム」(佐藤正寿)です。
- メンバーはそれぞれ地図帳を用意する。
- 出題者(教師)がある都道府県名を選び、隠す。
- 参加者(子どもたち)は3つ質問し、その都道府県名を当てる。
- 正誤を発表する。
この質問ゲームにおける学習者の思考の特徴を、江間氏は3点指摘しています。
- 都道府県の特色を分類しながら探っていく。
- 質問を3つに限定したことによって、参加者が質問内容と順番を自発的に吟味し始める。たとえば、2番目の質問で特産品を特定して聞いてしまうと正答率が下がる。
- ゲームの中で、都道府県に関する知識が要求される。
学びのしかけとして重要なのは、質問を「ゲーム」(勝ち負けのある遊び)にすることで「自発的吟味」が促されるということです。
この「自発的吟味」を促すことが、思考訓練では重要なポイントになります。
「自発的吟味」が思考力を鍛える
なぜゲームなのか。教師が子どもたちに「質問の仕方」を教え、その通りに質問させるようにすれば、わざわざ授業をゲームの形に組む必要はなさそうです。しかし思考力で重要なのは「『自発的』吟味」であり、この自発の有無が死命を制します。
遊びの勝ち負けをめぐって「問題解決をはかろうとする作業」が、問題の「吟味過程」と重なります。この「吟味過程」を教師の匙加減でするのが、従来の講義式・発問式の授業でした。それに対して、「(ゲームの)透明なルール」でその「吟味過程」を促そうとするのが、学習ゲームです。まさにその「透明さ」が学習者の自発を促します。
このポイントに気がつくと、「なぜ学習ゲームなのか」が理解できます。