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私は、大型教材企画の責任者を20年にわたって担当してきました。
例えば、20年前の「進研ゼミ小学校講座」の教材企画です。教材「チャレンジ」は、各教科書対応で月に2回発行、1学年で24冊となり、6学年で144冊の教材でした。教科書会社別ですから、1年間で500冊近くになります。基礎・基本もあれば、発展教材もあり、学習ゲーム、学習パズルもある、最先端の教材企画でした。
20年前にして、国語教材は「分析批評」でした。附属小学校の先生方を中心に、100名ほどの若く優秀な教師を、ライターとして私が選抜しました。
このライターの先生方は、著名な実践家に成長し、大半の人は本を世に出しました。
教材会議の時、単に「良いものを選ぶ」という教材の作り方はせず、最初に私が「基本計画」を、明確に打ち出しました。例えば、「国語読解は『分析批評』を基本として、駿台予備校、藤田修一先生の記号論のような組み立てをとり入れてよい。自分1人で学習して、公立高校に入学できる学力を保証するのがねらい。したがって『テストの解き方』は、きちんと指導する」というようにです。
そうです。そして、その基本方針に沿って、見本原稿を書いてもらい「論文審査」をし、すべての「原稿」の良・否をはっきりさせ、「書き直し」の方向を示しました。選抜された人々であるだけに優秀でしたが、最初から合格するのは1人か2人で、ほとんどの人が書き直しとなりました。こうしてできあがった「向山プロデュース」の教材は、ほとんど日本一になりました。
今回の全集は、もともとはセシール通信教育教材として開発したものです。
10年以上前に、セシールが「幼児通信教育」を開始した時、初代開発責任者は私でした。幼児、母親から圧倒的な支持をうけ、年齢別6コースで、23万人の会員がいました。わずか1年で、進研ゼミを抜いて、幼児教材では日本一になったのです。
その後、セシールは、経済状況の変動もあり「本業にもどる」ことを決定しました。その時すでに、私は「小学校教材・中学校教材」の開発に着手し、ほぼ完成していましたので、通信教育からは撤退するセシールから、版権を引き継いだのです。セシールもせっかくの日本教育界の財産を埋れさせるのは、国家的損失であると考えたのでしょう。
そして、江部・樋口編集長の強いすすめで、向山全集の1つとして出版することになりました。
企画会議は、高松の国際ホテルで、全国から百数十名のライターを集めて行われましたが、他の教材同様、まずは、私が基本方針を示し、原稿を審査し、書き直しを指示しました。「できない子への配慮」、「できる子への配慮」、そして「子どものやる気を引き出す配慮」が綿密になされるよう工夫された本シリーズが、二度、三度の執筆者会議を経てできあがったのです。
江部編集長は、「今見てもすばらしい教材だ。これだけの教材は現在でもない」と高い評価を与えてくれました。
この教材を与えれば、必ず、子どもたちは熱中して学習に取り組むでしょう。また、新しい教育界の動きの中で、新しい教材として「帯の時間」「朝学」「発展学習」「自宅学習」用として活用されることと思います。
保護者に、児童・生徒の家庭用教材として、全国書店で購入されるようすすめていただけるとありがたいです。もともとは通信教育用として作った教材なので、自宅用として十分に活用いただけると思います。しかも通信教育に比べれば、はるかに安く入手できるのです。
教育界の財産が世に出ることができ、感激の心でいっぱいです。