- 著者インタビュー
- 指導方法・授業研究
プロの教師とは、授業をする上で必要な学習する空間を作る事ができる力が必要です。そのためには小手先のネタで子どもを面白がらせるノウハウではなく、子どもとの信頼関係を構築するための行動と習慣が重要です。今回の書籍では科目に関する内容は一切なく、授業を行なう上で共通する土台になる考え方や実践を紹介しています。そして、ネタを寄せ集めて体裁だけを整える授業をするのではなくいかにして子どもに物事を伝えるか、という基本をしっかり見つめ、学習する空間作りの重要性に対する意識が高まる事を期待します。
学力向上とは点数が取れたり、高い偏差値が取れたりすることではない、と考えています。しかしながら、言葉は悪いですが点数すら取らせることのできない授業にもやはり疑問を感じています。今回の書籍では、いかにして子どもに物事を伝えるか、という事がテーマの一つになっています。それは我々が100の事柄を準備しても30しか伝わらない授業であれば、やはり学力を向上させる事はできないと考えるからです。これまで伝え方で損をして学力を思うように伸ばせなかった先生方に対する一つのヒントになると思います。
進学塾は子どもを志望校に合格させるという「受験」という勉強に特化した範囲での指導で良い、という点が一般でも知られている違いと言えるかも知れません。そして、最大の違いは成果を求められていることでしょう。アンケート評価はもちろんですが、子どもの成績が伸びなければ、子どもは辞めていきますし、任される授業も無くなっていきます。ですから、いかに子どもへ準備した内容を最大限に伝えるのかという部分がとても重要になってくるのです。学習する空間作りというテーマはそういった背景から生まれたのです。
率直に申し上げて、どっちが悪い、という議論をしている段階では結局、前に進まない気がしてなりません。塾と学校は役割が異なります。ですが、結局のところ子どものために何かを伝えようという想いは共通のものがあり、そこで磨かれてきた財産があるのです。それらの中から学校教育で活かせる部分を取り入れ、より良い教育を学校で実践できるようになったなら、次第に塾は学校に取り込まれていくことでしょう。今は塾と学校がお互いの持てる力を出し合って共に子どもの教育に対して真剣に取り組む事が建設的ではないかと思います。
各地で学校の先生方に研修や講演をする度に多くの先生方から塾の先生も我々学校の教師と同じ想いで子どもと接しているのだと思ったという感想を頂きます。点を取らせるだけ、と言われますが、点を取らせるためにも学習空間を作る必要があり、そのために礼儀を教え、ケジメを教え「わかる」を「できる」に変えるためにも家庭学習が大切ですから時間の使い方、生活習慣、保護者に対する子どもとの接し方の指導に至るまでケアをするのです。お互いの世界が見えなかった事による誤解が少しでも変わっていけば嬉しいです。