著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
小学校全体で読解力の基盤となる読書活動を!
横浜国立大学教育人間学部教授府川 源一郎
2007/12/14 掲載
 今回は府川源一郎先生に、新刊『読解力UP! 小学校全体で取り組む「読書活動」プラン』について伺いました。

府川 源一郎ふかわ げんいちろう

1948(昭和23)年、東京生まれ。横浜国立大学大学院教育学研究科修了。川崎市の公立小学校で、普通学級、障害児学級(ことばの教室)を担任。横浜国立大学教育学部附属鎌倉小学校教諭を経て、現在、横浜国立大学教育人間学部教授。
〈著書〉『消えた「最後の授業」―言葉・国家・教育―』(大修館書店、1992)、『「国語」教育の可能性』(教育出版、1995)、『文学すること・教育すること―文学体験の成立をめざして―』(東洋館出版社、1995)、『「ごんぎつね」をめぐる謎―子ども・文学・教科書―』(教育出版、2000)ほか。

―読書活動に関する本はさまざまありますが、従来の本と本書の違いは何でしょうか?

 読書活動を推進するには学校全体を挙げて取り組む必要があります。横浜市ではそうした活動を積極的に行ってきました。学校全体の読書活動に関するカリキュラムを作成し、それにもとづいて読書活動を進めている先進的な学校の様子が、いくつも紹介されているところが、この本の特色でしょう。それらが、かなり具体的に示されています。

―本書は、「小学校全体で取り組む」というタイトルですが、司書教諭、学級担任、保護者とそれぞれの果たす役割というのはあるのでしょうか?

 学校における読書活動には、学校図書館を中心にして、教科の中での指導(とりわけ国語科での指導)や、日常の諸活動、あるいは保護者との連携が重要なカギを握ります。さまざまな側面からの働きかけが有機的に結びつくことによって、相乗効果をあげるのです。もちろん、それぞれの方々が、それぞれの部署における独自性を発揮することが前提になります。そうした事例も豊富に紹介されています。

―読解力の低下が問題になっていますが、読書活動は読解力向上とどのような関係があるとお考えですか?

 PISAで出題された問題に似た問題をドリルブックで練習するというような方法では「読解力」は身につきません。問題発見、問題解決の道筋を教科の授業の中で自覚的に意識させることと同時に、幅広い読書活動をその裾野にどっしりと据える必要があります。そうした基盤があってこそ、「考えること」や、「想像すること」に対する興味関心が広がるのです。

―学習指導要領改訂の議論の中でも、読書活動の充実が重要視されています。今後、どのような取り組みが必要だとお考えですか?

 まずは、この本で紹介したような事例を具体的に実践していくことが求められます。さまざまな角度から、多彩な読書活動を工夫してみることが重要です。次には、その、読書活動の「質」を深めていくことが課題になります。そこでは、それぞれの教科の特質への理解が不可欠でしょう。というのは、読書活動は、各教科の本質と深く結びついているからです。

―最後に、読書活動を推進していこうとしている先生方に一言メッセージをお願いします。

 子どもに本を読みなさいという前に、まずは自分が絵本や児童書を手に取ってみて下さい。科学絵本や歴史書などの中にも、私たち大人の心を引きつける本がたくさんあります。そうした本を見つけたら、きっとそれを子どもに伝えたくなるのではないでしょうか。原点は、そこにあります。子どもの本を読んでみましょう。新しい世界が開けます。そこから「読書活動」のことを考えましょう。

(構成:茅野)

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