- 著者インタビュー
- 国語
論理的思考力とは、「バラバラな考えや言葉を整理する(関係づける)力」です。「単純化する力」とも言えます。論理的に考えられるようになると、ものごとが次々と整理され、単純化されていくわけです。最もシンプルな単純化の例は、「みかん、ぶどう、りんごを食べた」、これを「果物を食べた」とすることです。これは、論理的思考力を構成する3つの型のうちの1つ「言いかえ」に当たります。
「内容重視から形式重視へ」ということです。内容重視の感覚的授業とは、物語文の読みとりを例にとれば、勇気や友情など、作者が描き出した「メッセージやテーマ(=内容)」そのものを感覚的に扱うことに主眼を置いた授業です。たとえば、勇気や友情についてクラスで話し合ったり、感想文を書いたり。でも、それらは道徳の授業で行えばよいのであって、国語で行うことではありません。国語では、それらの内容を運んでいる「言葉(=形式)」をコントロールする力の育成を重視すべきです。それこそ、国語科の役割です。
この本では「言いかえる」「くらべる」「たどる」という3つの型を身につけることを目標としています。まず「3つ」という時点でシンプルですから、低学年の子どもたちであっても、難なく理解・習得できます。また、どの問題もシンプルなスモールステップで構成されていますから、教師による説明を最小限に抑えることができます。子どもも楽、教師も楽、というわけです。
「型」という言葉を受け入れることです。多くの先生方は、この言葉に抵抗感を持っています。「型は個性を奪う」と思っているんですね。しかしそれは全くの逆。実は「型こそが個性を伸ばす」のです。子どもが、どんなに個性的なイメージやメッセージ(言いたいこと)を心の中に抱いていても、それを、他者と共有できる形式で発信することができない限り、個性の価値は失われます。この「他者と共有できる形式」こそが「型」です(むろん、受信の際にも型が不可欠)。どんなに味わい深い飲み物があっても、グラスがなければそれは単なる液体としてこぼれおち、誰の口にも届きません。飲み物の“味”という「個性」は、グラスという「型」によってこそ、生きてくるのです。
型を重視して子どもたちの論理的思考力を伸ばすという授業は、まだまだ学校教育の中に根付いていません。しかし、だからこそ、あなたに頑張っていただきたい。この本を手にしたときから、あなたは先駆者です。ぜひ、学校教育を変えるための第一歩を、力強く踏み出していただきたいと思います。