著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
算数授業は筋書きのない45分間のドラマだ!
熊本市立五福小学校教頭宮本 博規
2011/6/27 掲載
 今回は宮本博規先生に、新刊『スペシャリスト直伝!算数科授業成功の極意』について伺いました。

宮本 博規みやもと ひろき

昭和33年熊本県生まれ。熊本市立五福小学校教頭(2011年3月現在)。日本数学教育学会編集部幹事、全国算数授業研究会理事のほか、NHK教育番組『わかる算数』、『わくわく授業〜わたしの教え方』などにも出演。著書に、『能動型・算数授業で確かな力を育てる』、『学校を元気にする33の熟議』(以上東洋館出版社)などがある。

―本書の表紙には「算数授業は筋書きのない45分間のドラマだ!」と書かれています。子どもの予想外の反応で授業が盛り上がるのは算数の醍醐味であると言えますが、一方で指導に当たる先生にとっては不安な部分でもあると思われます。このように、授業が予期せぬ展開をみせたとき、先生はどのように対処すればよいのでしょうか?

 どんな授業にも明確なねらいがあります。どのような授業展開になろうとも、そのねらいだけははずしてはいけません。算数授業では、本時の数理(ねらい)に結び付けられることが大切なのです。問題や課題に対する子どもの反応予想を基に、授業の前に展開を組み立てておくことは大事ですが、それに縛られていてはドラマは生まれません。ときには予想外の子どもの反応にとことん付き合ってみるのもよいでしょう。予期せぬ展開のときこそ、教師は焦らず子どもたちの中に入って共に板書を眺めてみる。教師が子どもの反応を大切にする気持ちをもっている限り、子どもがどこかで教師を助けてくれるものです。 

―本書を手にとられた先生の中には、多忙なご校務と教材研究の両立に苦労されている方が大勢いらっしゃると思います。そこで、短時間で、しかも継続的にできる算数の教材研究のコツを教えてください。

 一番効率的な教材研究は、教科書比較です。子どもたちが使っている教科書以外に2〜3社の教科書を比較研究してみるのです。使っている数値が同じだったり、素材が似通っていたりと、共通点などがみえてくるはずです。もちろん使っている教科書が中心ですが、他の教科書のよさも取り入れながら、数値や素材を変えたり、具体物を提示したりと、教科書をちょっとアレンジしてみるのもよいでしょう。それだけでも子どもの学習意欲は違ってくるはずです。

―本書でも触れられている通り、プロジェクタや電子黒板、デジタル教材の充実などにより、算数の授業でICTを活用できるシーンは増えつつあります。そこで、はじめての先生でも無理なくできるICTの活用法を教えてください。

 無理なくICTを活用をすることを考えるなら、授業全体ではなく、授業の一部分だけ、ここぞというときに使ってみることです。まずは、導入の問題提示場面での活用が考えられます。本時の数理(ねらい)を説明するとき、子どもを納得させる教具として使うこともあります。既習の整理で使うことや練習問題で使うこともできるでしょう。今は自由に使えるデジタル教材がたくさん手に入りますから、最初から自分で開発する必要はありません。どんなデジタル教材があるのかを頭にインプットしておき、いつでも使えるように準備しておくことが大事です。

―本書には、多くの研究授業を経験してこられた宮本先生ならではの授業づくりの工夫がたくさん紹介されています。そこで最後に、これからはじめての研究授業に挑戦する若い先生に、アドバイスをお願いします。

 せっかく研究授業をするなら、課題が多い教材に取り組みたいものです。まずは、今やろうとする授業のモデルとなるような先行の指導案や授業展開例を探し、分析を行います。その分析を基に、挑戦する研究授業で課題となること、指導の際に難しいと言われていることなどを整理してみましょう。その上に立って、自分なりの手だてや工夫、アイデアを探し出します。この過程が研究授業の苦しみであり、楽しみでもあります。自分が目いっぱい考えた工夫やアイデアが本時の課題解決につながるかどうか、授業者としてだけでなく、授業分析者としての目ももちながら、前向きに研究授業に取り組んでみてください。

(構成:矢口)
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