- 著者インタビュー
- 理科
理科学習において、観察、実験を中心としながら、その前後の指導を適切に行うことはとても大切なことです。観察、実験の前とは、子どもが見いだした問題に対する予想や仮説をもつ場面であり、観察、実験の後とは、その結果を表やグラフなどに整理して示し、そこから何が言えるのか考察し、表現する場面です。このような一連の流れは、問題解決のプロセスにおいて実現されます。こうした問題解決のプロセスを支えるのに、学習シートは重要な役目を果たします。学習シートを充実することによって、子どもの科学的な思考・表現力などの問題解決力を育成することにつながると考えます。
理科は、本来自然の事物・現象に親しみ、観察、実験などの体験を重視した教科です。具体的な体験を通して子どもの身体的な技能や豊かな心情を育むとともに、科学的な思考・表現力の育成を図ることを目指しています。学習シートを活用する際には、まず自然の事物・現象から問題を見いだし、観察や実験などの活動の中で身体を使い予想や仮説を確かめることを優先して、その中で、自分の考えなどを整理していくことが大切です。
科学的な言葉や概念などを使用しながら考えたり、説明したりできるように学習活動を工夫し、充実することです。こうした学習活動においては、自らの観察記録や実験データを整理し、それに基づいて考えたり、それを根拠にして説明したりすることが重要となります。このような展開が、学級のグループや学級全体の話し合いの中で行われ、繰り返されることにより、考察が深まっていくように指導することがポイントとなるでしょう。
児童の科学的な見方や考え方が一層深まるように、観察、実験の結果を整理し考察し表現する学習活動を重視する。特に、観察、実験において結果を表やグラフに整理し、予想や仮説と関係付けながら考察を言語化し、表現することがより一層求められています。
そのため、児童が自らの考えを表現する際に、文字や記号として表現するばかりでなく、イメージ図や立体的なモデルを用いて表現すること、特に、体感を通して得られた認識を表現したり、目に見えない自然の事物・現象について説明したりする際に、モデルを活用することにより子どもの考えを顕在化させていくことが大切です。
子どもは、理科が好きです。教師も理科が好きです。その理由として、理科の教科特性が関与していることが考えられます。理科では、自然に親しんだり観察、実験などの体験をしたりしながら、問題解決の過程を通して、子どもが最終的に科学的な見方や考え方を養うことをねらいとしています。その教科特性は、自然という具体的な事物・現象から抽象的な考え方をつくることにあります。
本書は、こうした理科という教科の特性を十分に踏まえながら、各先生方が意欲的に授業づくりに取り組む際に、参考となることを願い作成しました。本書が、多くの先生方の理科の学習指導の工夫改善につながることを願ってやみません。