- 著者インタビュー
- 道徳
三つあります。一つは「授業が見え、振り返りができる」ということです。子どもにとって、授業がどう展開し自分はどう考えてきたか、友達はどう考えたかが見えるということです。二つには「より心に響く資料提示の工夫が可能だ」ということです。サイドボードやスクリーンにまで範囲を拡大すれば資料を提示する手立てが様々に工夫できます。さらに「子ども参加型の授業が工夫できる」ということです。自分の考えをボードに貼ることや、貼ったカード等を貼り替えることなど、子どもたちが積極的に授業に参加することも板書の工夫で可能になるということです。
道徳授業だからこそ気をつけたい板書のポイントですが、道徳授業では、子どもたちの考えや感じ方を中心にして授業が展開していきます。また、ねらいとする道徳的価値の自覚に向かって板書も整理されていきます。したがって、発問の1から順に発問と児童の反応を時系列的に板書するという活用の仕方だけでなく、対立する意見等を左右に分けて視覚的にもわかりやすく展開していくといった工夫も大切です。
子どもたちの反応を一つひとつ板書していくことは、一人ひとりを大切にするという視点からとても大切なことだと思います。気持ちとしてすべて板書するという意識を忘れないことは重要です。しかしながら、授業では時間的にも空間的にも、すべてを取り上げることは不可能です。反応を整理しながら板書することが必要だと思います。
道徳授業は、多様なものの考えや感じ方と出会うところです。資料の中の登場人物に共感したり反論したり、友達の考えや感じ方を受け止めたりしながら、自分なりの考えや感じ方を深めたり広めたりすることが大切です。そのためには、まず自分の考え等の意思表示を明確にすることが必要です。そこにネームプレート活用の利点があります。留意したい点は、考え等が変わったときには、変わった理由や背景を子ども自身にも明確にさせるということです。
今、表現力を高めることが求められています。子どもたちの表現力を高めることはもちろんですが、先生方の表現力を高めることも必要です。板書は先生方の表現力の表れでもあります。子どもたちとつくる板書、授業がよく見える板書、ボードだけにこだわらず広く空間を活用する工夫等々、道徳の時間の特質を踏まえた上で、大胆に、そしてダイナミックに板書を創造してほしいと期待しています。