- 著者インタビュー
- 道徳
子どもたちの社会性や豊かな人間性を育むために重要な体験活動が減少していると言われています。こうした現状を考えると、読み物資料のような活字の世界で考えるだけでは、生徒の多様な思いを引き出すことが難しい気がします。本書は、こうした点を踏まえて、子どもたちの心を揺さぶるために、多様な方法でアプローチしていくことができるような資料で編集されています。きっと生徒が、より実感をもって考えることができると思います。
意識をすれば、資料となる素材は身近に数多くあります。ただ、それを道徳授業で活かせる資料にするのは簡単ではなく、試行錯誤の積み重ねが必要になると思います。資料化や活用の注意点は数多くありますが、一番大切なのは「この素材で授業をしたい」という教師の思いかもしれません。こうした素材と出会った瞬間、教師は自分の学級の生徒を思い浮かべて、頭の中で無意識に授業を構想しているものです。授業者である教師自身の思いを大切に、ぜひ自分だけの道徳資料を作り出していってほしいと思います。
メールやプロフなど、ネットにおける様々な問題が生じています。そうした問題に共通しているのは「思いやり」の欠如のような気がします。ネットの匿名性により,自分勝手な振る舞いが生じやすい上に、生じた出来事は、その公開性により予想外に大きな結果を招いてしまいます。ただ勘違いしてはならないのは、道徳授業は情報モラルやスキルを身につける時間ではないということです。そうした力を支える「思いやり」などの道徳性を養える授業を構想できるかが、大きなポイントであると考えます。
道徳の授業で、黒板に生徒の発表が並びますが、発表が並んだあとに本当の道徳の授業が始まると考えています。同じ意見でも、生徒によって「すごく思っている」のか、「少し思っている」のか、必ず違いがあるはずです。その量的な違いや、質的な違いをたんねんに明らかにして、みんなで考えていくことが道徳授業で大切なこととなるでしょう。ぜひ、「発表を並べる授業」ではなく、「発表を考え合う授業」を展開してほしいと思います。
教師も生徒も、道徳の授業にやり慣れることが大切です。上手な授業でなくてもいいのです。道徳授業を数多く試みてください。ぜひ、力ある資料で生徒にメッセージを投げかけてください。必ず生徒の心が育まれます。本書は、各地で活躍する先生方に、力ある資料を紹介していただきました。多くの先生方に授業を実践していただき、さらに完成された資料にしてほしいと願っています。