- 著者インタビュー
- 幼児教育
一人ひとりの子どもとの個別的なかかわりに意を注ぐことです。保育所のように集団保育を基礎にすすめている環境では、0歳児保育もその流れですすめがちになります。つまり、日々通ってくる乳児を集団的な構成のもとでかかわることを重視しがちです。しかし、この時期のいのちの育みと健康や安全を配慮することの計り知れない重要さ、心と体のきわめて著しい変化と発達、そして何よりも欠かせない心豊かなヒューマンな相互作用、これらは、むしろ保育者と一人ひとりの乳児との個別的なかかわりを必要としています。集団保育の意義も、まさにこのことをしっかりと心がけることによって、次第に深まっていくでしょう。
保育者の専門性の原点は、保育というケアワークの知識、技術、マインドです。この点は、古くから最も重視されてきたことです。近年の社会環境の大きな変化は、保育者がケアワークとともに、保育ソーシャルワークの知識、技術、マインドを深く備えた専門職としても、その役割を果たすことが求められています。とくに0歳児の保育にあたっては、初めての子育てに向かっている保護者も多く、保護者支援は非常に重要な役割です。保護者をサポートし、保護者とともに子育てにかかわる姿勢、子育てパートナーシップを実践することが重要であると思います。
まずは、目次をご覧下さい。0歳児の保育にかかわる実に多様な内容を網羅しています。どの分野も、精読して参考にしていただくことが望ましいのですが、たびたび読み返すことが必要です。読む段階としては、基礎知識習得・確認段階、知識・技術応用段階があり、とくに後者では、文章に加え様々な資料、写真、イラストがご自身の保育実践と生き生きと結びつくようになり、自らの保育を活写できるようなところまで活用できるとよいと思います。最初の質問へのお答えでも触れましたように、集団保育とともに、一人ひとりの子どもの個性、特徴、可能性を確かに把(とら)えつつ保育がなされるように本書を活用されることを期待します。
保育といっても、その専門性は共通の内容とともに、年齢やニーズの異なる子どもたちのそれぞれの保育の特徴があります。年齢別にみますと、乳児保育、幼児保育、学童以上の保育のそれぞれの特性を踏まえる必要があります。個人的見解としては、新任保育者がまず0歳児の保育を担当することは、あまり推奨できません。養護と教育の一体的な営みを経験した上で、上述したことと関連する乳児保育経験を重ねることがよいと思っています。子育て経験がないこと自体がストレートに保育者のプロとしての適否を判断するものではないといえますが、乳児期のお子さんを育てておられる保護者のニーズにより適切に応えるためには、上記のような保育経験を踏まえることは望ましいと思います。
この世に誕生して間もなくの子どもたちの、光り輝く瞳の奥にある個性や可能性を思うだけでも、保育の醍醐味を味わえる喜びを広げることができるでしょう。愛らしく、いとおしく思いつつ保育の営みを続けることに意を注ぐだけではなく、これほどまだ小さいと思われる子どもでも、一人の価値ある人間として、尊厳を持った人間として生を育んでいるということにも常に思いを致してください。