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本書の中でも紹介している、学級名簿を使った「ほめ日記」を試してみていただければと思います。それを使って、今日一日だれをどんなことでほめたのか、簡単なメモをとっていきます。すると、自分がよくほめる子どもとそうではない子どもに違いがあることがわかり、あまりほめていない子どもがだれなのかもみえてきます。そこから計画的・意識的に子どもをほめていくわけです。そして、自分がほめにくいと感じる子どもの「目に見えること」「ちょっとした変化」をどんどん言葉にして伝えていくとよいのです。それは、「存在承認」といって、存在そのものを認める行為で、子どもの自己肯定感を上げることにつながります。
あらかじめ、子どもをしからなくて済む工夫をすることが大切です。「ちゃんとしなさい」「きちんとしなさい」では子どもは何をしたらよいのかわかりません。具体的に子どもが「いつ」「何を」「どんなふうに」するとよいのかを、わかりやすい言葉で伝えてください。
例えば、学校の玄関そうじをサボる子どもに対してのステップは次の3つです。「@ここは学校の顔だからね。大事な掃除場所なんだよね」(掃除をする意味を伝える)→A「ここの砂はほうきを最後まで下にはわせるようにするとうまく集まるよ。ホームランみたいに振り上げると舞い上がるからね」(具体的な掃除の仕方を教える)→Bそして、先生の目の前でやらせてみて、そのやり方をほめます。このようなステップを踏むことでしからなくて済みます。
「行為をしかる」、つまり、どんな行為がよくないのかを子どもに伝えてみてください。例えば、「友だちをたたくことがダメなんだよ」とか、「チャイムを守らないことがダメなんだよ」と言うわけです。「あなたは…」というように、「あなた」を主語にしてしかると、子どもは先生から責められたと感じてしまい、しかられて損したとかイヤだという気持ちだけが残ってしまいます。それでは、次の望ましい行動へ結び付きません。人をしからず、その人がしたことをしかるわけです。
保護者は、自分の子どもが学校でどんなことをうまくやれているのかということを知りたいと思います。どんなに小さなことでも、「よいこと」を教えてほしいわけです。先生からみれば「できて当たり前のこと」でも、保護者はそれを知ってわが子の成長を喜ぶ、ということもあります。例えば、「給食当番のときに重い食器をしっかりと運んでくれています」「仲間とドッジボールを楽しくやっています」など、一見当たり前と思えることを伝えてほしいと思います。それは、確実に先生への好印象につながるはずです。
子どもは、先生からの「ちょっとしたひと言」で目をキラキラさせて、前向きに行動するようになります。それは、先生という職業の醍醐味でもあります。本書では、実際に私が小学校・中学校の現場で使ってきた子どもの「ほめ方・しかり方」の極意をお伝えしています。少しでも参考になれば幸いです。