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ここ数年で、PISA型読解力や自由に記述する力の不足が初めて世界に共通する資料として公開されました。日本の子どもの読解力が低いとは、国語科の教師の多くは考えてもいませんでした。「ごんぎつね」「走れメロス」「舞姫」等の作品を丁寧に指導してきたからです。しかし、国際社会が求める読解力と、日本が長年必要だと信じ込んでいた文学の読みの力とは、性質が異なります。新学習指導要領では、「言葉を通して的確に理解し、論理的に思考し表現する能力」が重視されました。中学生には帰納論理と演繹論理の両者を組み合わせて思考する力を身につけてほしいです。
論理的文章の教材を選ぶ観点は次の三点です。
- 文章構成が明確である。(複数の具体的事例が書かれており、それらに基づいた考察・結論が明確に述べられいてる。)
- 一段落一事項の原則が守られている。(一つの意味段落が一つの事柄で書かれている。)
- それぞれの意味段落に明確なキーワード(重要な語句)がある。
リライト教材をつくるときは、上の条件に合う文章を探すところから始まります。作成は時間を要し、高度な学習であるため、生徒に作成させず、教師自身が作成します。
「これだけは気をつけたいポイント」は、発問を「セリフ」として文章にすることです。「走れメロス」であれば、「疲労しきったメロスが、起き上がるきっかけとなった出来事は何ですか。ノートに二つ、書きなさい。(解答 睡眠・水分補給)」というように、文章にし、その「セリフ」のまま、授業で話します。この「セリフ」は、教師自身の教材研究ノートや、教科書に書いておき、「セリフ」を見ながら授業を進めます。その場の思いつきを話したり、逸話や教師の体験談を付け加えたりしません。
私が出会った若手教師の論理的思考力&表現力の弱点は次の二点でした。
- 論理的文章の書き方の原則を知らない。
- 公の場での話し方が不十分である。
これらの弱点は若手教師の責任ではなく、小中高大学での指導に原因があります。教師が書く文章の九十九%は論理的文章(板書、週ごとの指導計画、年間指導計画・評価計画、日直日誌、研修報告など)です。弱点を改善するには、論理的文章を書いては管理職や先輩教員に指導を受け、修正するという練習を繰り返し行うことです。
文学的文章の指導は長い歴史と多くの実践、先行研究があります。それに対し、論理的文章を読み、表現する指導の必要性が強く求められたのはここ数年です。国語の先生の多くは、自分たちの仕事ではないと考えていました。若手の先生方へ、これからの国語科の授業を変革していくのは皆さんです。論理的思考力&表現力の育成は国語科の責務と考え、新しい国語科の授業をつくり出してください。