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決められていることや決まったことを改善していくことを管理といいます。つまり、管理は過去をみています。それに対して、マネジメントでは過去と未来をみます。そもそも物事が「なぜ必要なのか」からはじめるのです。
当番活動を例にします。管理であれば、当番活動が忘れず行われるように当番表をつくったり、班や日直がチェックしたりするシステムをつくります。一方で、マネジメントでは、そもそもの当番活動の意義について考えます。当番ありきではなく、当番の価値、成果などについて考えることから始めるのです。その結果、当番がなくなるということもありますし、管理として考える内容と同じになることもあります。
P.F.ドラッカーはマネジメントの役割を、@使命を考え、A人を生き生きさせ、B成果をあげること(『マネジメント 基本と原則』ダイヤモンド社)としています。これらは、学級経営や生徒指導にもあてはまります。
遠足を例にします。管理的な進め方であれば、事前指導は「『自然にたくさんふれましょう』『バスではおしゃべりをしません』『2列に並んで歩きます』『時間は守りましょう』…いいですか?」となります。一方、マネジメントの進め方では、「明日、児童公園にいきます。大切にしたいことは何ですか?」となります。
この2つを比べると、同じ「遠足」という活動を行うにしても、意欲、学べること、達成感などに違いがでてきます。
すぐに活用できるという意味でのおすすめは、学習用具です。学習用具を「パフォーマンスに集中させる道具」という視点で捉えなおすことにより、学習効果を高めることができます。
「意欲を高める導入」ということが言われますが、1年間、毎日、すべての時間で導入を考えるというのは現実的には難しいと思います。ここで学習用具を活用します。タイマー・ホワイトボード・アナログカウンターを私は「教室三種の神器」と呼んでいます。これらを活用することにより学習意欲が高まります。
例えば、授業開始すぐに「よい音読とは何か?(江戸時代で思いつくこと/電気を使った製品)できるだけ多くだしましょう」と声掛けをします。この発問にアナログカウンターとタイマーが加わると、集中力が一気に増します。
ICT機器が学習意欲を高めるものとして注目されていますが、それだけでなく辞書、辞典、学級文庫、地球儀、忘れた人用の筆記用具なども、パフォーマンスに集中させるものだと考えることで、準備の必要感や活用法のアイデアが生まれていきます。
「教育は人なり」と昔から言われています。これは、教える教師の力が一番大切だということです。教師自身をマネジメントすること、そのことが延いては、子どもたちや学級のマネジメントにつながっていきます。
現在、多様化・多忙化により、限られた時間の中で成果を上げることが難しくなっています。時間を増やし頑張ることで、成果を上げることができますが、そのしわ寄せは、教師の体や心、プライベートや家族に及んでしまいます。教師自身が、身体、心、時間をマネジメントすることにより、よりよい教師生活を送ることができればと考えています。
教師の仕事は多岐にわたります。朝の会、掃除、教材研究、テスト、遠足、水泳指導、運動会、卒業式などたくさんあります。これらの中から興味をもてるところを、マネジメントの視点から捉えなおしてみませんか。何のためにそれを行うのか、そして成果は何か。現状を把握し、あるべき姿を一緒に考えてみましょう。新たな可能性が広がっていくことと思います。
本書が、子どもたち、そして教師自身が、今よりももっと楽しく充実した毎日を送る契機になれば幸いです。