- 著者インタビュー
- 算数・数学
第1に、本書で取り上げた題材は、新学習指導要領の重点事項で、研究授業でよく取り上げられる内容です。第5学年で言えば、4/5÷3の計算の仕方(面積)、平行四辺形の面積の求め方(面積)、形も大きさも同じ三角形(合同)などです。研究授業の際にも活用できると思います。
第2に、授業の展開は基本的に問題解決型のモデルとして活用できます。特に、「主眼」と「めあて」と「まとめ」の一貫性に配慮したものとなっています。
また、指導観、展開、授業づくりのポイントが具体的に示されています。この点が本書の特長となっています。
板書は、授業における「主眼」を達成するために、問題提示からまとめにいたるまでの指導の流れや子どもの思考の流れをコンパクトに詰め込まれたものです。したがって、本時で考えるべき基となる「問題」、学習の目標である「めあて」、「めあて」を達成した学びの総括としての「まとめ」が書かれていることが大切です。
私は年間400人の先生の授業を参観しますが、「問題」そのものが板書にない授業に出会い、驚くことがあります。板書された「問題」からすべての思考が発生し、見通しの場面でも話し合いの場面でも困ったときに振り返る足場となるものです。本書からは、このような算数授業の基本も学ぶことができます。
基本的な流れは問題解決型の授業ですが、志水メソッドはさらに一歩踏み込んで、どの子も「見通し」をもつことができるヒント包含法、自力解決を保証する机間指導における○付け法、解決後の話し合いで子どもの考えを広げ深めるための意味付け復唱法、知識と技能の定着を図る適用問題定着法、基礎的な計算技能を伸ばす音声計算練習があります。これらによって、確かな学力を身に付けることができます。
本書の冒頭で、算数の授業で「考える」とはどういうことか、また「考える」ことを育てるとはどういうことかを初めて書き下ろしました。いくつかの場面を取り上げて具体的に示しました。例えば、問題把握のときに生じる命題の置き換えは、「考える」ことの1つです。したがって、算数の授業では、何に基づいて、何を考えさせたいのか、そして、どのような考えを定着させたいのかを常に問うようにしたいものです。
本書の著者である北九州市の算数部のこだわりは、普段の授業の中で数学的な思考力・表現力をつけることにあります。ぜひとも、読者の皆さんにも本書で体得してほしいものです。