著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
生き方に迫るここ一番の「決めゼリフ」
奈良県公立小学校土作 彰
2013/7/19 掲載

土作 彰つちさく あきら

1965年大阪府八尾市生まれ。1990年より奈良県の小学校教員となる。初任者の時に学級が上手くいかず、打開策を求めて全国のセミナー行脚を始める。10年目までとにかく授業ネタの収集に明け暮れるが、何かが足りないと気づく。2001年に群馬の元小学校教師深澤久氏の学級を参観し衝撃を受ける。以来、教師に必要な「哲学」論を研究。最近は授業を学級づくりに昇華させる方法論として「3D理論」を考案。日々その実証に明け暮れている。

―本書で先生には、「小さなことと感じられるかもしれないけれど、見逃せばそれがやがては学級崩壊にいたる!」ポイントを数多くあげていただきましたが、先生は学級崩壊分岐点ともなるような事柄をどのように見抜かれているのでしょうか。

 2つあります。1つは子どもたちの言動に「思いやり」が感じられないことです。普通のことをしているのだけど、何か冷たく白けた感じがする…そんな状況を感じたらまずは要注意ですね。もう1つは全力を出していないことです。怠けているなと感じることも見逃さないようにしています。
 いずれも子どもにはありがちなことと思います。けれどそれを「黄色信号」として感じることのできる教師の感性がキーポイントになります。それがないと毎日「黄色信号」がともり、気がついたら「赤信号」になっているということになります。

―友だちの悪口を言ってしまう子、靴隠しをしてしまう子など個々のトラブルもクラス全体を育てる機会にしよう、と先生は述べられていますが、先生が理想とされる「育ったクラス」とはどんなクラスなのでしょうか。

 一言でいうと教師の想像を超えて思い切り優しい言動がとれる子どもたちで溢れているクラス、でしょうか。例えば、給食準備でのスプーンの置き方ですが、左利きの子の場合は当然置く方向が右利きの子とは逆になりますね。それに気づき、全ての友だちの利き手を把握していて、「ここは○○君の席だからこっち向きね」などと配膳している子が出てきます。私が指導したわけでもないのに、子どもたちはそこまで考えられるようになるのです。「育ってきたなあ」と感じる瞬間です。
 また、子どもたちが育ってくれば、些細なトラブルは減りますが、やはりトラブルがないということはありません。けれど、その立ち直りが早い!そして、そのトラブルから多くのことを学んでくれます。トラブルを起こさないクラスが「育っている」のではなく、トラブルから多くのことを学べるクラスが「育っている」のだと思います。

―本書では73のケースをあげて子どもたちに聞かせたいお話について述べられていますが、どのケースを通しても語りたい、一番大切なことは何でしょうか?

 そうですね…自分と愛する人を幸せにする生き方というものがある!それを伝えたいです。そのためには自分を磨き、他を思いやること。これに尽きると思っています。

―クラスが育つ「深いいクラスづくり」の極意を教えてください。

 極意などという立派なものはありません。ただただ、日々子どもたちに対峙し、誠心誠意寄り添っていくこと、それに尽きますよ。
そうすれば、お互いに一生忘れられない思い出がたくさんできていきます。子どもたちが成人したときにそのころを思いだし一緒に美酒を楽しめたりも。教師の仕事って素敵だなあと思います。いろいろしんどいこともありますけどね。

―最後に、これからを担う若い先生方へエールとともに、「決めゼリフ」をお願いいたします。

イラスト天職は探して就くものではありません!
ひたむきに頑張る結果として、自ずから天職となるのです。

 教師に限らず、どんな職業も、はじめから天職と思えるほどの成果は出ないものだと思います。今、目の前にある仕事を、ひたむきに頑張れば、結果として自ずから天職になるのでしょう。折角、教職を選び先生になったのです。お互いにいろいろ大変だけれども、ひたむきに頑張りましょうね。「教師で良かったあ!」って思えるようになりますから!

(構成:佐藤)

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