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近年、全国で数多くの単元を貫く言語活動を位置付けた国語科の授業づくりが行われるようになりました。単元を貫く言語活動とは何か、という概念理解の段階を経て、実践の段階に入ってきたのです。この段階になると、「本時の展開の仕方は?」「発問や指示の在り方は?」といった具体的な手立てが開発課題としてクローズアップされてきます。そうした声にお応えしたいという思いから、この本を編集しました。
特殊な研究をしている学校や教師だけが実践できる事例ではなく、子どもに付けたい力を常に見極め、学習指導要領の趣旨に基づいて着実に努力を重ねれば、どの学校でも実践可能な事例を集積したものです。
本書に掲載した事例は、すべて公開研究会等で実践提案されたものです。従来刊行してきた書籍より、一層学習指導案に近い形で掲載することができました。どの事例にも、付けたい力とその力を育むのにふさわしい言語活動やその特徴を詳しく書いています。
授業のイメージをつかむためには、まず各学年の事例の中から、取り組んでみたいものを選んで、それに倣って実践してみることをお勧めします。ただしこれは一律のマニュアルではありません。ある程度イメージがつかめたら、今度は付けたい力や目の前の子どもの実態に応じて、ご自身で言語活動を設定して授業づくりを進める際の参考として活用いただければと思います。
教育における不易とは何でしょうか。それは、従来の指導をやみくもに踏襲することを意味するものではないでしょう。我々の先達は、目の前の子どもたちに言葉の力を育むために、常に前進を続けてこられたはずです。そうした授業改善を進めることこそ、不易の教育行為だと言えるのではないでしょうか。
かつて子どもたちが手にとって読める本がいくらもない状況下で、何とか読む力を育もうと願った先達の方々は、教科書を精読することに重点を置かれた。それはそうした状況下では、妥当な指導方法だったと考えます。一方、現在はむしろ、大量の情報の中から自分にとって必要な情報を自ら判断して手に入れ、自他の考えを交流しながら発信していくような能力こそが重要性を増しています。先達が営々と行ってこられたように、我々もまた、今の社会状況を踏まえて、子どもたちにとって必要な言葉の力を見極めて、指導方法を創り出していくことが大切なのではないでしょうか。
せっかく単元に言語活動を位置付けても、教科書教材を読むことが中心となる、いわゆる「第二次」においては、やはり場面ごと、段落ごとに読み取らせるだけになりがちです。ここをどのように改革するかが、目下の最大の課題であるといえるでしょう。しかし、既に数多くのチャレンジによって、その解明が進んできました。基本的には、単元を貫く言語活動と、「第二次」の各単位時間、そして各学習活動がしっかりとリンクするように学習活動を展開することがポイントとなります。その具体的な手立ては本書に満載です。是非お読みいただければ幸いです。
単元を貫く言語活動の授業づくりは、日々進展しています。その最大の原動力は、子どもたちの学びの姿の変容です。与えられた作品の与えられた場面を読み取らされるにとどまらず、主体的に本や文章を手に取って読み、自分の心に響く叙述を紹介したり推薦したりする。そうした単元を貫く言語活動を位置付けた授業改善によって、一層主体的な言葉の学びが、子どもたちの姿として数多く見られるようになってきました。
そうした授業づくりをさらに進めるため、是非本書を手にしていただければと願っています。