著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
乳幼児期の支援は「急がば回れ」!
大垣女子短期大学幼児教育科教授松村 齋
2014/1/15 掲載

松村 齋まつむら ひとし

大垣女子短期大学幼児教育科教授。
〈主な著書〉『特別支援教育「かず(算数)」の授業ヒント集60』
『これならできる・使える授業ヒント集1 特別支援教育「かず(算数)」/計算編』
(何れも明治図書)]

―書名にもありますが、本書は「内面に寄り添った支援」を重要な柱としていますね。内面に寄り添った支援をするために、常に心がけるべきことはどのようなことでしょうか。

 「子どもが大好き」であること、その一言に尽きます。つまり、100人の子どもには、100通りの「思い」や「願い」が一人ひとりにあることを大事にできることです。このことは言葉で言うのは簡単なのですが、実践をする上では忍耐が必要であり、鋭い観察力をもっていることが必要になります。時には子どもの行動が許せない時もあるでしょう。そんな時、「子どもが大好きである」ことは、日々の子育てや実践上の困難を後押ししてくれます。そして、「子どもが大好きである」ことが、子どもの内面に寄り添い続けることにつながり、見えない子どもの「思い」や「願い」を探り続ける実践上の「視点」を磨くことができるのです。

―反対に、これは絶対ダメ、というようなNG対応がありましたら、ぜひ教えて頂けますか?

 巡回訪問における先生方との相談の場の出来事ですが、本来は一人ひとりの子どもの思いや願いに寄り添う実践を大切にしたいのですが、時折、クラスをうまく運営するためにどうしたらいいのかという、子ども不在の手だてに偏りすぎた質問があります。クラス集団というのは、子ども一人ひとりで構成されています。だからこそ、焦らず、丁寧な実践を継続すること、それが最終的には子どもの成長や素晴らしいクラス運営につながるのだと思います。急がば回れですね。

―先生は、巡回相談員としてたくさんの園をご覧になっていますが、その中で、保育者の方から受ける質問はどのような内容が多いでしょうか。それに対する先生の答えと一緒にご紹介頂けますか?

 圧倒的に多いのは、自分の実践が目の前に子どもにとって、有効なのか、そうでないのか不安に思っておられる先生方からの質問です。巡回相談は、相談員の専門性にもよりますが、私は、現場経験があったことも踏まえ、子どものニーズを探ることに加え、子どもと先生方との実践における関係性・有効性も同時にみています。例え、子どもが一見、落ち着けていないと感じる場面でも現行の支援を継続することを勧めることもありますし、目立たない子どもには、しっかり関係をもって下さいとお願いする場合もあります。つまり、子どもたちが安心して生活できる環境づくりを大切にしています。

―本書は、全てのエピソードに4コマまんがが付いているのも魅力ですね。本書の活用方法を教えて頂けますか?

 実践の面白さを多くの先生方に感じて頂けたらと思っています。逆風が吹く時もあるでしょうが、そんな時だからこそ、現状をしっかり分析することも大切だと思います。そのお手伝いを私たち巡回相談員ができればと強く願っています。本書の4コマ漫画は、時に実践に疲れた先生方が、少しだけホッとして頂けるように、漫画家の長江美央さんにお願いしました。本書を常に手元において、困った時に、気軽に開いてみて頂ければと思います。

―最後に、読者の保育者の方々へ向けメッセージをお願いします。

 全国の多くの保育者の皆さんにエールを送りたいと思っています。現場では、一人ひとりの子どもたちに対し、献身的な実践がおこなわれています。だからこそ、必要以上に焦らないことです。じっくりと今の実践を大切にすることだと思います。子どもの成長発達は年長で終わりではありません。子どもにとっては、長い人生のスタートラインについたばかりです。だからこそ、一人で悩まないで、多くの人たちの力を借り、目の前の子どもたちのために今できることを、自信をもって一歩ずつ歩まれることをお勧めいたします。

(構成:木村)
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