著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
その子にピッタリの授業づくりのヒントがきっと見つかる!
大阪人間科学大学特任教授須田 正信
2014/8/6 掲載
 今回は須田正信先生に、新刊『合理的配慮の視点でつくる!特別支援教育の授業づくり&指導案作成ガイド』について伺いました。

須田 正信すだ まさのぶ

現:大阪人間科学大学特任教授
1952年 北海道生まれ、現在、大阪人間学大学人間科学部特任教授、大阪府教育センター特別支援教育研究室長を経て、大阪府立交野支援学校長、大阪府立寝屋川支援学校長、大阪府立堺支援学校長を歴任。平成24年3月に退職。一貫して知的障害・肢体不自由のある子どもの教育に従事。
著書『基礎からはじめるインクルーシブ教育の実践―ともに学び ともに育つ』 『はじめてつくる「個別の教育支援計画」―連携のための支援ツールをつくる』 『基礎からわかる特別支援教育とアセスメント』いずれも明治図書 他

―「ユニバーサルデザイン」と「合理的配慮」に関して、それぞれ簡単に教えて頂けますか。

 ユニバーサルデザイン(UD)は、文化・言語・国籍の違いや、老若男女といった差異、また、障害・能力の如何を問わずに利用することができる施設・製品・情報の設計のことです。今では、誰しもが快適に利用できるとする考え方が浸透してきています。例えば教育分野では、パソコンの操作において、キーボードやマウスだけでなく他の入力手段に対応させる、あるいはパソコンの画面表示を見やすく工夫する、また、細かい字が読めなくなった人のために触ることで識別できるよう工夫する、などがあります。
 一方、合理的配慮は、障害者の権利条約に定められた新しい概念で、障害のある子どもが、他の子どもと平等に「教育を受ける権利」を享有・行使することを確保するために、学校の設置者及び学校が必要かつ適当な変更・調整を行うことであり、障害のある子どもに対し、その状況に応じて、学校教育を受ける場合に個別に必要とされるものと定義されています。「第二十四条 教育」では、教育についての障害者の権利を認め、この権利を差別なしに、かつ、機会の均等を基礎として実現するため、障害者を包容する教育制度(inclusive education system)等を確保することとし、その権利の実現に当たり確保するものの一つとして、「個人に必要とされる合理的配慮が提供されること。」を位置付けています。従って、障害者一人ひとりに対しては、学校や設置者が行う合理的配慮と、国や都道府県等が行う基礎的環境整備が求められました。

―合理的配慮の視点でつくる授業は、これまでの授業とどのような点が違うのでしょうか。

 学校では一般的に一斉授業が行われますが、通常学級では、LD等発達障害のある子どもたちも含めて様々な子どもたちが一緒に学んでいます。そうすると、学級集団の中では、何らかの配慮を必要とする子どもを含め、誰しもが分かる授業の工夫などが求められます。そのため、教室環境の整備を行うと共に、授業においては、言語指示に加えて視覚的な教材の提供や工夫が必要になってくるのです。
 障害のある子どもへの合理的配慮を意図した授業の展開として、今後様々な授業改善が行われるものと期待しています。

―本書に収録の指導案は、「赤ペン解説」として作成ポイントが明記されているのが魅力ですね。合理的配慮の視点で指導案を作成する際に、常に意識しておくべきことなどありますでしょうか。

 今回、学習指導案の例示と共に、若い先生方やはじめて特別支援教育に携わる先生方にも分かりやすいよう、「赤ペン解説」を設けました。その意図は、授業の「シナリオ」である学習指導案を作る際、授業全体の流れと共に、個に対しての合理的配慮の指導を意識してもらうためことです。「赤ペン解説」で振り返りながら、障害の程度や状態に応じた授業の工夫をし、授業の流れを踏まえた「授業展開」が行われように意識する必要があります。

―本書巻末には、用語・略語の解説も収録されており、はじめて特別支援教育に携わる先生を意識した工夫が随所にみられますね。若手や新任の先生に向けて、本書の活用方法を教えて頂けますでしょうか。

 近年、学校ではベテラン教員の大量退職と初任者の大量採用時代が続いています。教育においては、経験とスキルも重要な要素の一つとなっております。それを補うには、教員から教員への継続的な伝達と伝承が求められるところですが、本書ではその部分を少しでも書物で補いたいと考え、現場で活躍している多くの先生方に実践を提供していただきました。若手や新任の先生方には、本書で収録している先生方の授業実践やその工夫、教材の活用などをぜひ参考にしていただき、さらに自分が授業を行う際には、第3章の「学習指導案」と共に「赤ペン解説」を参考にして、よりよい授業を目指してほしいと願っています。

―最後に、全国の先生方へ向け、メッセージをお願いします。

 「教師は授業が命」とは大げさかもしれませんが、そのくらい、1コマの授業にかける意気込みが求められています。子どもたちは、先生の授業によって成長・発達し、次へとつながる人間形成への一助となるのです。そのためには、集団と個に応じた授業の工夫をし、障害に応じた合理的配慮のある授業展開をお願いしたいと思います。本書が皆さんのニーズに沿うことができれば幸いです。

(構成:木村)
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