- 著者インタビュー
- 授業全般
ロナルド・メイス氏が1985年に提唱した「ユニバーサルデザイン」は、それまでの「バリアフリー」の概念に代わって、「全ての人にとってメリットのあるデザイン」として世界中に広まりました。本書の「授業と学習のユニバーサルデザイン」は、最新のインストラクショナルデザインのコンセプトを参照し、全ての子どもにとって「やさしい」教育の実現をめざすという願いが込められています。
服を一人一人の体格に合わせて仕立てるような授業の創造の仕方は「テーラーリング」と言えます。それは「個への対応」デザインです。その上で「オーケストレーティング」(個と個の響き合わせ)をめざすことがポイントになります。あたかも、音色の違う楽器の特性を生かし、お互いに響き合わせ、美しいシンフォニーを奏でるように授業を展開していこうという基本デザインを提案しています。
一人一人が自分の個性とよさを自覚し、力を合わせる喜びを感じる学びの実現が、真の主体性を支える原動力と言えます。そういった学習を可能とする授業デザインは、先生が「何を教えたか」ではなく、子ども達が「何を学び取ったか」に授業評価の視点があるという考え、つまり、教える側のデザインの適切性は、どこまでも学ぶ側からの論理によって検証されるべきとの考え方に立って「授業と学習のユニバーサルデザイン」を構想することが必要です。
「ふきだし法」は、
- ノート指導
- 板書の仕方
- 指導と評価の一体化
- 学習材分析
- 学級経営法
の5つの観点からトータルに授業を構築していく指導システムとして開発しました。その全てが、実は「ユニバーサルデザイン」という観点からも実に理にかなった指導法となっています。筆者は、算数科の授業デザインのポイントは、「ふきだし法」に尽きると考えています。詳しくは『算数科:言語力・表現力を育てる「ふきだし法」の実践 算数的活動と思考過程記述のアイデア』を参照ください。
本書のタイトルでもある「授業と学習のユニバーサルデザイン」は、
- 学級の全ての子どもが
- 授業・学習に積極的、主体的に関わり
- お互いを尊重し合う互恵的な学び(reciprocal learning)をめざす
授業・学習デザインの探究によって具現化します。
本書との出会いをきっかけにあらゆる教科・領域で「ユニバーサルデザイン」の授業と学習が生き生きと実践・展開され、全ての教室に広まっていくことを切に望んでいます。