著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
手軽に作れる「課題ボード」で6年間全5645時間の授業をガッチリ支える!
魚津市立本江小学校教諭能澤 英樹
2014/12/22 掲載

能澤 英樹のざわ ひでき

富山県魚津市で25年間小学校に勤務し、現在、魚津市立本江小学校に勤務。自著論文「教師の資質向上策が真に効果をあげるために」が富山県教育会120周年記念募集論文の優秀賞に選ばれる。また、朝日新聞「花まる先生 公開授業」に体験を重視した国語の実践が紹介され、『感動する授業』(朝日新聞社編、2012年)に掲載された。

―本書で紹介している「課題ボード」とはどのようなものですか。

 縦20cm×横100cmに切った白色マグネットシートの周囲を赤の油性マーカーで囲んだ物です。教師はこれを黒板に貼ってホワイトボードマーカーで学習課題を書きます。深緑色の黒板に対し、白地に赤の課題ボードは子どもたちの目を引き、ねらいに向かって学習する意識を高めます。また、教師にとっても1時間のねらいを明確にできるだけでなく、学習課題を書き忘れないようにするという効果もあります(笑)。

―全国学力・学習状況調査で、授業のはじめに目標が示されている児童の方が各教科の平均正答率が高いことが明らかになりました。どうして「課題ボード」は学力アップに効果があるのでしょうか。

 私の勤務している学校では、課題ボードを取り入れてから県の学力調査の平均点が徐々に向上し、最初は県平均を下回っていたのが3年間で6点近く上回るようになりました。「課題ボード=学力向上」と考えるのは早計と思いますが、授業のはじめに課題を確認すると、それに向かって落ち着いて学習に取り組む子どもたちの姿がどの教室でも見られます。その積み重ねが学力の向上に役立っていることは十分に考えられることだと思います。

―同じ調査で、学校は授業の冒頭で目標を示していると考えていても、児童はそう思っていない実態もあることがわかりました。児童にもわかりやすく「授業の最初に目標を示す」方法はありますか。

 板書の中でも目を引く存在である課題ボードが「授業の最初に目標を示す」お手伝いをすることは間違いありません。ただし、ここに「ごんぎつね」と教材名を書いても、「バスに5人乗っています。次の停留所で…」と文章問題を書いても子どもにとっての目標にはなりません。私の学校でも最初のうちは「何を書いていいかわからない」「どう書けばいいか悩む」という声が上がりました。私の場合は研究通信で使い方を説明したり、指導した子どものノートを見合う研修会を行ったりしました。「全校で課題ボードに取り組むんだ」という大きな流れができると、廊下を歩く若手がベテランの課題を目にしたその一瞬が研修になります。そうやって全校で課題の質を上げていくことで、子どもたちに目標が伝わる課題ができていくと思います。

―本書には課題を考えるワークのコーナーも設けられています。この効果的な活用方法について教えて下さい。

 本書の課題を考えるワークを、ぜひ校内研修で扱っていただければと思います。一人で考えるのもいいですが、ペアやグループで考えることによって、若手がベテランに課題づくりのポイントを学ぶ機会になりますし、逆にベテランが若手から刺激を受けることも期待できます。また、本書では国語の「スイミー」の見開き2ページで100問の課題づくりなども紹介していますので、ゲーム感覚で挑戦してみてはいかがでしょう。

―最後に全国で日々授業改善に取り組む先生方に、メッセージをお願いします!

 課題ボードは、日々の授業を「学習課題→学習活動→評価」とシンプルに展開させる効果がありますので、この基本の上にご自分のオリジナリティーを発揮して、子どもたちの目が輝く授業を工夫していただきたいと思います。今、学力向上が私たちの肩に重くのしかかりますが、子どもたちに負荷をかける方法は勉強嫌いを助長するなどの反作用もあります。まず、教師自身が授業の質を上げ、子どもたちの力を伸ばそうとすることが大切です! そのためのツールとして課題ボードを全校に取り入れていただければうれしいです!

(構成:木山)
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