著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
「音楽授業ってなぜあるの?」究極の問いに向き合おう!
島根大学教育学部附属中学校教諭小村 聡
2015/1/21 掲載
 今回は小村聡先生に、新刊『スペシャリスト直伝!中学校音楽科成功の極意』について伺いました。

小村 聡おむら さとし

島根県出雲市生まれ。島根大学教育学部特別教科(音楽)教員養成課程声楽専攻卒業。1989年から島根県公立中学校、2006年から島根大学教育学部附属中学校に勤務。DVD「心が動けば、身体が動く!生徒のやる気を高める合唱指導」(ジャパンライム)全3巻発売。2011年6月から2年間、『教育音楽 中学・高校版』(音楽之友社)にて「おむさんの歌唱指導」を連載。その他、同誌及び『授業力&学級統率力』(明治図書)の特集記事などを執筆。

―「音楽の授業ってなぜあるの?」。本書でも真向正面からお答えくださっていますが、ここで少しだけ教えていただけますか?

 単刀直入に、音楽は人が生きていくうえで大切なものだからです。人は、音楽を聴いたり奏でたりすることで、気持ちが落ち着いたり、慰められたり、ウキウキしたり、やる気が湧いたり、逆に落ち込みが深くなったり、涙があふれたり……と音楽によって感情が揺さぶられます。音楽にはそのような不思議な力があり、音楽を感受する種を誰もがもっています。その種に水をまき、肥料を与え、心を耕していくために音楽の授業があるのです。

―生徒をやる気にするために、日々心がけていることがありましたらぜひ教えてください。

 気持ちのテンションを高く保つよう心がけています。もちろん落ち込んだり、体調を崩したりすることがありますが、そんなときでもピエロになってテンションを高めようとがんばります。教師自身のやる気の度合いは、教材研究、授業準備につながっています。そして、教師のやる気は、生徒のやる気に直結します。生徒の生き生きとした姿を頭に描きながら授業準備をしています。

―先生は、合唱部の顧問として、NHKなどの合唱コンクールでも度々全国大会出場に導いておられますが、指導の初日に生徒に伝えることは何でしょうか?

 出会いは縁です。何かの縁でこのタイミングで出会ったメンバーにこう言います。「この出会いにはきっと意味があるはず。だからこの出会いを無駄にしないよう、一人一人精一杯の活動をしよう」と。
 そして、コンクールは勝負の世界です。しかし、私は「勝つ」とか「金賞をとろう」とは一言も言いません。上位大会へ進むということは、自ずと私たちの演奏を聴いていただける機会が増えることになります。ですから生徒たちには「今年も私たちの演奏をたくさんの人に聴いてもらいたい。そして、私たちが奏でる合唱のファンを増やそうじゃないか」と投げかけます。

―「音楽は心のスタミナ定食!」「音楽は感情の増幅剤!」「音楽は人生の演出補佐!」…… 本書で紹介されている先生にとっての音楽、とても興味深く拝見しました。たくさん挙げてくださった中から、先生にとって一番「音楽」を言い得ている言葉として一つだけ選ぶとしたら、どれになるでしょうか?

 「音楽はそっと寄り添う心のパートナー!」ですね。パートナーという言葉は、共同で仕事や競技などをするときに組む相手や相棒、また配偶者という意味に使われます。お互いを理解し合い信頼を深めていく中で、支え合い高め合っていく大切な存在です。音楽はそれと同等に心を支え高めてくれるとても大切なものだと私は確信しています。現に、音楽は、私の公私(仕事&私生活)で私を支え高めてくれる相棒です。

―最後に、全国の読者の先生方へ向け、メッセージをお願いします。

 音楽教師は、学校行事や部活動と直結していることが多く、一人で悩んだり、抱え込んだりしてしまうことも少なくないはずです。そんな孤独な戦いをしている音楽教師の一人として、何かのお役に立てればとの思いで書きました。
 「音楽の授業ってなぜあるの?」。本書の冒頭に私なりの答えを私なりの表現で書きました。この究極の問いに真正面から向き合うことで、音楽教師としての姿勢や授業の中身が決まるのではないでしょうか。先生方お一人お一人が、この問いに対するご自身の答えをご自身の言葉でもつことが、音楽教師としての強みになるはずです。
 音楽を愛好する者として、音楽の素晴らしさを一緒に伝えていきましょう。

(構成:木村)
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