著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
学級づくり成功の計は学級開きを支える考え方にあり
上越教育大学教職大学院教授赤坂 真二
2015/2/5 掲載
 今回は赤坂真二先生に、新刊『一人残らず笑顔にする学級開き 小学校〜中学校の完全シナリオ』について伺いました。

赤坂 真二あかさか しんじ

1965年新潟県生まれ。上越教育大学教職大学院教授。学校心理士。「現場の教師を元気にしたい」と願い、年間約100回の講演を実施して全国行脚。19年間の小学校勤務では、アドラー心理学的アプローチの学級経営に取り組み、子どものやる気と自信を高める学級づくりについて実証的な研究を進めてきた。2008年4月から、より多くの子どもたちがやる気と元気を持てるようにと、情熱と意欲あふれる教員を育てるために現職に就任する。主な著書に『スペシャリスト直伝!学級を最高のチームにする極意』『スペシャリスト直伝!学級づくり成功の極意』『THE 協同学習』『THE チームビルディング』『赤坂真二―エピソードで語る教師力の極意』(以上、明治図書)などがある。

―本書はベストセラー『スペシャリスト直伝! 学級を最高のチームにする極意』のシリーズ化第1弾となります。まず、このシリーズのねらいについて教えて下さい。

 学級崩壊が報道された2000年前後から、学級づくりに悩む教師のニーズに応えて学級づくりの方法論に関する情報が世に出されるようになりました。先生方の選択肢が増えたのは結構なことですが、ネタや技術論や名人芸であることが多く、長期的な取り組みに不向きだったり、模倣が難しいものだったりすることがありました。
 集団づくりは、時間がかかります。それを成功させるためには、技術論ととともに、それを支える考え方が必要なのです。集団づくりの成功は、学級をチーム化することです。つまり、課題解決集団に育てることです。子どもたちは、学習や生活の課題の解決を通して、社会で生きる力を学びます。本シリーズは、学級づくりという営みを単に「学級をまとめる」というレベルに留めるのではなく、子どもたちが幸せに生きていくための力を育てていくための過程だと考えています。

―1巻目のテーマは「学級開き」です。「学級づくりは最初が勝負」「スタートで8割が決まる」とも言われますが、この貴重な時間に、最も大切にすべきことは何でしょうか?

 学級は、子どもたちが学習をしたり仲間をつくったりするチャレンジの場です。そのチャレンジのエネルギーとなるのが、学校生活への意欲です。その意欲はどこからわき上がるのかというと、安心感です。学級開きで最も大切にしなくてはならないことは、子どもたちに教室が安心できる場であることを実感させることです。

―学級開きでは愛情を伝えるなど子ども達に安心感をもってもらうことが大切ですが、同時にルールなど厳しさも伝えていかねばなりません。どちらかに偏りがちになるこのバランスは、どのようにとっていくのがよいのでしょうか?

 安心感とルールというと、優しさと厳しさのように二律背反のものとして捉えられるかもしれませんが、そららは表裏一体のものです。スポーツを考えてみて下さい。ルールという枠がきちんと設定されているからこそ、選手は共通の基準の下に安心して、競技をすることができるのです。ルールをしっかり設定することで、安心感が創出されます。しかし、ルールの設定と定着までには、技術が必要です。詳しくは本書をお読み下さい。

―学級開きは教師の主導による部分がありますが、その後の学級は、子ども達が進めていくものとも言えます。子ども達に自分達で考えるといった成長の機会を与えていくには、どのような考え方・取り組みが大切でしょうか?

 教師がずっと表舞台に出ていては、子どもたちは自分で考えて行動するようにはなりません。教師は、時期を見て意図的にリーダーシップを変換していくことが求められます。しかし、いきなり子どもたちに「考えてごらん」と言っても、何をどのように考えればいいのか、そしてそもそもどうして自分たちで考えなくてはならないのかもわからない場合があります。まずは、子どもたちに、自分で考えることが大事だということの意味を知らせることが大事です。
 

―学級開きで最高のスタートをきったはずが、途中で失速し…夏休み明けには学級が荒れて〜というようなケースも少なからず耳にします。このような失速は何が原因と考えられますでしょうか。また、その予防にはどういったことが大切でしょうか。

 一年間に何度かは、「学級の危機」とも呼べるような不安定な時期はどの学級にもあります。その危機をうまく乗り越える学級は飛躍し、それに失敗する学級の何割かが崩壊します。危機を乗り越える学級は、やはり、一学期に大事なことを伝えられているのです。学級集団がうまく機能するために必要なことを学んでいるのです。危機に瀕した折に、担任はそれをあの手この手で想起させているのです。やはり、集団づくりは一学期の在り方が大事であり、そして、そのスタートが学級開きなのです。

―最後に、読者の先生方にメッセージをお願いします。

 本書は、学級開きに特化した画期的な書籍です。学級集団をまとめることだけに満足せず、子どもたちが幸せに社会で生きる力を本気で身に付けさせたいと願い、試行錯誤をしてきた集団づくりのスペシャリストたちと書きました。学級開きのシナリオという極めて技術的な部分から、一年間の指針となるような考え方まで示してあります。
 学級開きに成功すれば、学級がうまくいく、などということはありません。しかし、学級開きをどう展開するかという担任の考え方に、学級づくり成功のためのエッセンスが凝縮されていると言えます。みなさんの学級のスタートダッシュを強力にサポートするはずです。

(構成:及川)

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