著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
魅力的な学級目標がクラスをチームに育てる
上越教育大学教職大学院教授赤坂 真二
2015/2/9 掲載
 今回は赤坂真二先生に、新刊『最高のチームを育てる学級目標 作成マニュアル&活用アイデア』について伺いました。

赤坂 真二あかさか しんじ

1965年新潟県生まれ。上越教育大学教職大学院教授。学校心理士。「現場の教師を元気にしたい」と願い、年間約100回の講演を実施して全国行脚。19年間の小学校勤務では、アドラー心理学的アプローチの学級経営に取り組み、子どものやる気と自信を高める学級づくりについて実証的な研究を進めてきた。2008年4月から、より多くの子どもたちがやる気と元気を持てるようにと、情熱と意欲あふれる教員を育てるために現職に就任する。主な著書に『スペシャリスト直伝!学級を最高のチームにする極意』『スペシャリスト直伝!学級づくり成功の極意』『THE 協同学習』『THE チームビルディング』『赤坂真二―エピソードで語る教師力の極意』『一人残らず笑顔にする学級開き 小学校〜中学校の完全シナリオ』(以上、明治図書)などがある。

―本書は「学級を最高のチームにする極意」シリーズの第2弾として、テーマは「学級目標」です。まず、本書のねらいと読み方について、教えて下さい。

 多くの学級で学級目標がつくられることと思います。しかし、一方で、つくったはいいけれども、そのまま豪華な飾りになってしまっているという話もよく聞きます。
 学級目標については次のような問題が指摘できます。
@学級目標のつくり方そのものがよくわからない。
A学級目標をどう活用していいのかがわからない。
 こうした問題に対する答えが本書です。本書では、学級目標のつくり方そのものを示すと共に、それを学級づくりにどう活用したら良いかを示す活動例も示しました。
 本書の実践例を参考にして学級目標をつくり、そこに連動する活動を仕組むことで学級づくりに活きて働く学級目標づくりを実現することができます。

―まず、学級の集団づくりにおいて「学級目標」はどのような意味を持つものでしょうか。

 学級が機能するためには学級をチーム化しようというのが本書の主張ですが、集団をチーム化するときに目標は不可欠です。一人で動かせない物があったら、協力して持ち上げますよね。一人では達成できない課題があることによって、協力の必要性が生まれます。協力の必要性が生まれれば、次によりよい協力の在り方が問われます。それがルールや人間関係です。つまり、集団に共有された目標があることによって、それをクリアするためのよりよいルールや人間関係がつくられ、その集団はチームとして成長します。学級目標を設定することは、学級の成長をグッと現実的なものにしてくれるのです。

―学級目標の作り方は、先生によって様々です。本書でもバラエティに富んだ実践が数多く紹介されていますが、一見多様に見える実践のなかに共有できる、よい作り方、秘訣のようなものがあれば教えて下さい。

 学級目標は教師がつくるべきか、子どもたちが設定すべきかどちらがよいのでしょうか。一般的に後者だと言われています。しかし、それには絶対的な手続きはありません。要は、そこに子どもたちの納得があるかどうかということです。例え、教師発のアイデアであろうと、子どもたちが納得しているのであればそれはよい目標です。また、子どもたち発であろうとも、子どもたちの合意が無い状態で強引に決められたものであれば、よい目標とは言えないでしょう。よい学級目標とは、子どもたちの納得の上で決められたものを言います。

―学級目標を生きたものにするためには、作って終わりというのではなく、目標とリンクした具体的な活動で、子ども達の成長に結びつけていくことが大切です。この活動づくりで重要なことは何でしょうか?

 先ほども述べたように、子どもたちは一人では達成できない課題が設定されたときに、協力をしなくてはならないことを学びます。そこには当然、葛藤も起こりますが、その分、子どもたちは学びます。だから、学級目標に向かって個人的ながんばりを積み重ねるような活動よりも、複数で、できたら全員で取り組むような活動が望ましいです。42.195qをみんなで分担して走るリレーマラソンや、お化け屋敷などダイナミックな活動は子どもたちが協力する可能性を高めます。
 

―マラソン大会や運動会などの学校行事において、学級目標は有効に機能すると言われます。活用のポイントについて教えて下さい。

 マラソン大会や運動会などの学校行事は、一人では達成できない課題になります。だから、学級目標とリンクした活動としてとても適していると言えます。しかし、ただ実施するだけでは子どもたちはチームになりません。その行事を通して、どんなクラスになりたいのか(目標設定)を立て、それを実現するためになにをすればいいのか(行動プランの立案)を決め、実際に取り組んで(試行)みて、何ができたのか、次はどうするかを確認(ふり返り)するというサイクルを体験させることが効果的です。そして、忘れてはならないことがあります。それは、子どもたちの活動をしっかりと見守り、達成した場合は思いきり喜ぶことです。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願いします。

 魅力的な学級目標を設定し、それを達成するために様々な活動を仕組むことで子どもたちがチームとして育ちます。その成長の過程を共にできることは教師としてのこの上ない喜びではないでしょうか。本書が、みなさんと子どもたちの感動の時間を演出する一助となることを願ってやみません。どうぞ本書を活用して、すてきな学級目標を設定し、子どもたちの笑顔と活気ある一年のスタートを切って下さい。

(構成:及川)

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