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私が課題を設定する際に最も留意していることは、課題の“適切さ”です。具体的には、「授業のねらい(学習目標)と整合しているか」「生徒が取り組める(解決できる)内容になっているか」「生徒にとって難易度が適切か」「表現(用語や言い回しなど)が生徒にとってわかりやすいか」「生徒がゴールをイメージして学習に取り組むことができ、学習成果を自己評価できるか」といったことです。
本書では、単元を通して追究する課題を「単元を貫く課題」と呼んでいます。課題(問題)解決的な学習や作業的・体験的な学習は、1時間の中で工夫することもあります。しかし、単元の指導計画に着目して「単元を貫く課題」を設定することで、並列的だった各時間の学習内容や学習活動を有機的に結び付けてとらえたり、一連の追究の過程を押さえた学習展開へと再構成したりすることもできると思います。そうすることで、生徒に単元を通した学習の見通しをもたせることができます。
本書では、発問を「初発の発問」「中心発問」「主発問」「補助発問」に整理しました。これらの発問は、生徒を学習目標の到達へと導く「舵」として、授業展開の中で有機的に位置付けていくことが肝要だと思います。例えば、生徒の思考の筋道を示しながら概念の理解をうながすよう主発問と補助発問を意図的につなぎ合わせていきます。このような教師のしかけ(工夫)を、「構造的な発問」としています。
授業設計に際して私が一番に悩むことは「課題の設定」です。また、実際の授業を展開するうえで悩むことは「発問」です。課題設定や発問の良し悪しが授業を左右することになるからです。この点を問題意識として、課題提示と発問の工夫に焦点を当て、授業の工夫改善について検討できればと考えました。本書で取り上げた実践事例は、いずれも試行錯誤する中でまとめたものであり、まだまだ改善すべき点が多いと思います。ぜひ、多くの先生方と授業改善の方策について考えていければと思います。