- 著者インタビュー
保健室コーチングは、脳の使用説明書と言われるNLP心理学や脳科学理論をベースにした教育的アプローチ法です。コーチングという名称がついていますが、カウンセリングもコーチングも、また看護的ケアも含んでいることが大きな特徴です。
「問題」を扱うのではなく「問題だととらえたプロセス」を扱い、伴走的支援によって、多角的視点や問題への対応力、柔軟な思考を育てていきます。
現場の声としてよく聴かれるのが、「難解な専門書では、現場とつながらないと感じたり、実用的な書籍では、同じようにやっているのに、効果が出せない」という内容です。たとえば、保健室経営案の書き方は書かれていても、どのように養護教諭としての方向性を導き出すのか、そこが分からないという話はよく聴きます。
本書では、抽象的な専門的概念を現場に落とし込み活用するためのヒントとなる原理原則、そして、現場で教育的成果を上げるための教育者、支援者としてのスタンスをお伝えしています。
保健室コーチングの講座では、大切な心構えとして、
・支援する側が自分自身の状態管理を心掛けること
・共感と同一化の違いを知り、常に自分をニュートラルに保つこと
・相手も自分も信頼して関わること(助けてあげたいという想いは、相手の力を奪う)
・「問題」そのものに目を向けるでのではなく「問題と認識したプロセス」に目を向けること
ということをお伝えしています。スキルを信じるのではなく、常に「相手の可能性を信じる」ことが大切です。
私は「頼めない 断れない 抱え込む」という養護教諭さんに最も多い悩みを「養護教諭のTKK」と呼んでいます。多くの養護教諭さんが、無意識に「頼むこと=相手に迷惑をかけること」「一人で頑張るべき」などの思い込みをもっていらっしゃるようです。また、周りに受け容れてもらうために、無意識に周囲の想いに合わせてしまう、という方もあります。
本書でも触れておりますが、自分は「養護教諭として何を成し遂げたいのか」「この職を通して、なに伝えたいのか」というビジョンを明確にしていくことで、目の前のことをチームとしてどう対応したらよいのかという視点で行動できるようになります。
教育現場で対応すべき子どもたちの課題が非常に複雑、深刻化しています。最近になって、文部科学省も「脳科学」「コーチング」という領域に対して、学校教育への導入を試みようとしています。
長年、カウンセリングに慣れ親しみ、同時に現場で教育的効果を上げてきた養護教諭の先生も多いと思います。大切なのは「コーチングがよいのか、カウンセリングがよいのか」という二元論レベルの視点ではありません。目の前の子どもの内面で何が起きているのか? この子が問題だと感じたことを、どのように「問題だ」と認識し「苦しみ」を生み出したのか、そのプロセスを扱い、プロセスの変更をすることで、問題を成長のチャンスに変えること。保健室コーチングは、人間理解の視点に立って、子どもへのアプローチだけでなく、養護教諭の先生方の潜在的能力の活性化そのものに寄与するものであると考えています。
ぜひ、皆様がこれまで気づき上げてこられた様々な学び、知識、スキルに、本書の視点を含めていただき、より大局的な視点で皆様の現場力の向上にお役立て頂ければと思います。